人材育成はOJTよりもOFF-JTのほうが良いワケ
企業が従業員の技能向上を図る取り組みは、社内外どちらで行うかによってOJTとOFF-JTに区分できます。英語や英会話のスキルを育成する場合、どちらが効率的といえるのでしょうか。
7割以上の企業が人材育成に問題があると認識している
厚生労働省によれば、「人材育成に問題がある」と認識している企業の割合は75.9%にも上ります。問題の内訳は、「指導する人材が不足している」(52.2%)と最も多く、「人材育成を行う時間がない」(48.8%)と続いています。また、「金銭的余裕がない」(19.9%)、「人材育成の方法がわからない」(9.2%)なども挙げられています。
インバウンドビジネスを展開する企業や海外進出する企業では、人材育成の1つに「英語力のアップ」を挙げることができます。企業は、下のグラフのようにOFF-JTよりもOJTを重視する傾向にありますが、「英語力のアップ」にはOFF-JTが効率的です。例えば、Skypeなどを使った英会話スクールを利用すれば、上記のような人材育成に関する問題点はほとんど解決できます。ちなみにOJTとは、on-the-job trainingの略で、職場で日常の業務を通じて教育研修を行うことです。一方、OFF-JTとは、off-the-job trainingの略で、職場から離れた場所で業務に必要な教育研修を行うことです。
出典:厚生労働省「能力開発基本調査」
大企業ほどOJT、OFF-JTの実施率が高い
下のグラフは、企業規模別のOJT、およびOFF-JTの実施事業所の割合を示したものです。OJTを実施している事業所は企業全体の62.2%、OFF-JTを実施している事業所は企業全体の72.4%という結果でした。企業規模が大きくなるほど実施割合が増加しています。また、正社員以外への実施状況は正社員の半数程度にとどまっています。
出典:厚生労働省「能力開発基本調査」
業種別では複合サービス、電気・ガスなどの業種の実施率が高い
下のグラフは、業種別のOJT、およびOFF-JTの実施事業所の割合を示したものです。複合サービス事業や電気・ガス・熱供給・水道業、金融業、保険業などでOJTやOFF-JTの実施率が高くなっています。正社員以外の実施率についてはいずれも正社員の実施率よりも低く、特に情報通信業ではより低い割合になっています。
出典:厚生労働省「能力開発基本調査」
社員1人1か月当たりの教育訓練費はおよそ1000円程度
厚生労働省の調査によれば、企業が社員1人1か月に計上した教育訓練費は1,038円(2011年)でした。1973年から1991年にかけては右肩上がりで推移していましたが、その後は横ばい、あるいはやや減少して推移しています。教育訓練費の労働費用全体に占める割合(右軸)は、1973年から0.3%前後で推移しています。
出典:厚生労働省「就労条件総合調査」
下のグラフは、教育訓練費の労働費用全体に占める割合とGDP成長率を折れ線で表したものです。GDP成長率が上昇すると教育訓練費の労働費用全体に占める割合も上昇する傾向にあることがグラフから見て取ることができます。
出典:厚生労働省「就労条件総合調査」
日本の職業訓練への公的支出は世界各国と比較すると低水準
OECDによれば、日本の職業訓練プログラムへの公的支出は対GDPで0.03%という結果が出ています。この数値は、デンマーク(0.5%)、フランス(0.36%)、ドイツ(0.26%)などの国々よりも大きくかい離しており、OECD平均値0.15%の5分の1でしかありません。
出典:OECD 「Employment Outlook」
なお、日本政府では2015年に閣議決定された「日本再興戦略」において、企業の人材育成への助成支援策を打ち出しています。
参考サイト
職業能力開発関係資料集 – 厚生労働省
人的資本等の充実、力の発揮 – 内閣府
教育訓練制度の国際比較調査、研究 – 独立行政法人労働政策研究・研修機構
日本経済再生本部 – 首相官邸