社員の英語力アップには「教育訓練休暇等制度」導入がお薦め
インバウンドビジネスを展開する企業にとって、従業員の英語スキルのアップは大きな課題のひとつです。しかし多くの企業は社員の英語教育には二の足を踏んでいるのが実情です。社内には英語を教えられる人材もいないし、お金もかかるし、といった要因が実施を阻んでいます。
いわゆる「教育訓練休暇等制度」は、そうした悩みを解消する手がかりのひとつになるかもしれません。
教育訓練休暇等制度とは
「教育訓練休暇等制度」とは、社員が教育訓練を受けるために休暇取得を可能とする制度のことです。教育訓練休暇等制度の導入にはさまざまなメリットがあります。社員にとってはスキルアップの機会が増え、モチベーションの維持が期待できます。企業にとっては社員のスキルアップによる生産性の向上が期待できます。また、教育訓練休暇等制度の導入は「キャリア形成促進助成金」の対象となっており、助成が受けられます。
キャリア形成促進助成金とは
「キャリア形成促進助成金」とは、社員のキャリア形成促進のために、 職務に関連する専門的な知識や技能の習得をさせるための職業訓練などを実施した場合や、人材育成制度を導入した場合などに、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度のことで、雇用型訓練コースや重点訓練コースなどいくつかの助成メニューが用意されています。
- 雇用型訓練コース…特定分野認定実習併用職業訓練、認定実習併用職業訓練、中高年齢者雇用型訓練
- 重点訓練コース…若年人材育成訓練、熟練技能育成・承継訓練、成長分野等・グローバル人材育成訓練、中長期的キャリア形成訓練、育休中・復職後等人材育成訓練
- 一般型訓練コース…一般企業型訓練、一般団体型訓練
- 制度導入コース…教育訓練・職業能力評価制度、セルフ・キャリアドック制度、技能検定合格報奨金制度、教育訓練休暇等制度、社内検定制度、事業主団体助成制度
上記の中で社員の英語力アップのために適用できる助成メニューは、制度導入コースの「教育訓練休暇等制度」です。キャリア形成促進助成金制度の適用を受け、教育訓練休暇等制度を導入し実施すると、最大で50万円の助成を受けることができます。
ちなみに「技能検定合格報奨金制度」は、技能検定に合格した従業員に報奨金を支給する制度を導入し、適用した場合に助成されるもので、英語関連の検定は対象になっていません。また、検定合格が条件なので、TOEICのような合否結果のないものは対象外です。「成長分野等・グローバル人材育成訓練」は、医療・介護、情報通信業、建設業の一部、製造業の一部、あるいは、海外での事業展開を行っている企業に適用されるもので、それ以外の企業は該当しません。
キャリア形成促進助成金を受けるまでの流れ
教育訓練休暇等制度の作成
「教育訓練休暇等制度」を導入していることが大前提ですので、教育訓練休暇等制度を規定した就業規則、あるいは労働協約を作成します。なお、キャリア形成促進助成金の助成対象となる期間は次の通りです。
- 教育訓練休暇(有給の場合)
5年に5日以上、かつ、1年間に5日以上の取得が可能 - 教育訓練休暇(無給の場合)
5年に10日以上、かつ、1年間に10日以上の取得が可能 - 教育訓練短時間勤務制度(有給の場合)
5年に40時間以上、かつ、1年間に40時間以上の取得が可能 - 教育訓練短時間勤務制度(無給の場合)
5年に80時間以上、かつ、1年間に80時間以上の取得が可能
申請書の提出
キャリア形成促進助成金を受けるための書類をWebサイトからダウンロード、記入して申請します。必要な書類は、次の6点です。
- キャリア形成促進助成金(制度導入コース)制度導入・適用計画届(制度導入様式第1号)
- 中小企業事業主であることを確認できる書類(中小企業事業主の場合のみ)(登記事項証明書、資本の額又は出資の総額を記載した書類等の写し)
- 主たる事業所と従たる事業所を確認できる公的書類等(登記事項証明書などの写し)
- 事業所確認表(制度導入様式第3号)
- 就業規則又は労働協約(制度を規定する前のものの写し及び制度を規定した後の案)
- 教育訓練休暇等実施計画書(制度導入様式第10号)
- ※以上の書類の他に、労働局長が書類の提出を求める場合がありますので、各労働局へ問い合わせてください。
これらの申請書類は、厚生労働省の「キャリア形成促進助成金 申請様式のダウンロード」のWebサイトからダウンロードできます。申請期間は、制度導入・適用計画の初日の前日から起算して6か月前から1か月前までです。申請先は、主たる事業所の所在地を管轄する労働局(一部地域ではハローワークでも可能)です。
教育訓練休暇等制度の導入
教育訓練休暇等制度を規定した就業規則を労働基準監督署などへ届け出ます。また、労働協約の場合は、労働組合と使用者の双方による署名(または記名押印)が必要です。
以上で教育訓練休暇等制度が導入されましたので、社員には、「就業規則(労働協約)」、「事業内職業能力開発計画」、「教育訓練休暇等実施計画書」などを配布して周知します。
教育訓練休暇等制度の適用
労働局長が認定した制度導入・適用計画に基づいて、社員に教育訓練休暇等制度を適用します。社員はこの時点で英語の学習が可能になります。なお、教育訓練休暇等を取得した日が制度の適用日になります。
支給申請書の提出
最低適用人数を満たす人(最後に適用した人)の制度の適用日の翌日 から起算して6か月間経過した日から2か月以内に、支給申請書を労働局(またはハローワーク)に提出します。必要な書類は、次の9点です。
- キャリア形成促進助成金(個別企業助成コース)支給申請書(制度導入様式第12号)
- 就業規則または労働協約の写し
- 教育訓練休暇等実施状況報告書(制度導入様式第17号)
- 教育訓練休暇等取得者の労働条件通知書または雇用契約書の写し
- 教育訓練休暇等取得者の教育訓練休暇等取得状況を確認するための書類(出勤簿・休暇簿などの写し)。教育訓練休暇等の取得日が属する月のものを提出。
- 有給教育訓練休暇等取得者に賃金が支払われていることを確認するための書類 (賃金台帳などの写し)。教育訓練休暇等の取得日が属する月のものを提出。
- 支給要件確認申立書(共通要領 様式第1号)
- 支払方法・受取人住所届。※既に登録している場合は不要。
- 事業主以外が行う教育訓練、職業能力検定、及びキャリアコンサルティングの実施が確認できる書類(訓練カリキュラム、受講案内等)
- ※以上の書類の他に、労働局長が書類の提出を求める場合がありますので、各労働局へ問い合わせてください。
これらの申請書類は、厚生労働省の「キャリア形成促進助成金 申請様式のダウンロード」のWebサイトからダウンロードできます。申請書の提出が完了すると労働局で審査が行われ、問題がなければキャリア形成促進助成金が支給されます。
参考サイト
キャリア形成促進助成金 – 厚生労働省
事業主の方のための雇用関係助成金 – 厚生労働省
キャリア形成促進助成金活用マニュアル – 厚生労働省
経営サポート「経営強化法による支援」 – 中小企業庁