アルバイトの英会話スクール通いは助成金の対象外という事実
厚生労働省では、従業員のキャリアアップに取り組む事業主への支援策として、「キャリア形成促進助成金」や「キャリアアップ助成金」などの助成金制度を設けています。従業員の英語力アップのために活用することも可能で、インバウンドビジネスを展開する企業や海外展開を考えている企業などからも注目されている制度です。
キャリア形成促進助成金とキャリアアップ助成金の違い
「キャリア形成促進助成金」は、正規雇用労働者のキャリアアップを促進するために設けられた制度です。企業が教育訓練休暇等制度を導入して実施することで助成金が支給されます。(参照:社員の英語力アップには「教育訓練休暇等制度」導入がお薦め)
一方、「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するために、人材育成や正社員化、処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して助成する制度です。非正規雇用労働者は有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者などのいわゆるパートやアルバイトが対象です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金制度は、助成内容によって「人材育成コース」、「正社員化コース」、「処遇改善コース」の3つに分類されます。人材育成コースは、有期契約労働者等に一般職業訓練や有期実習型訓練、中⻑期的キャリア形成訓練などを実施した場合に助成されます。正社員化コースは、有期契約労働者等を正規雇用労働者・多様な正社員等に転換または直接雇用した場合に助成されます。処遇改善コースは、有期契約労働者等に基本給の賃⾦規定等を増額改定し、昇給した場合や、正規雇用労働者との共通の処遇制度を導⼊・適⽤した場合、短時間労働者の週所定労働時間を延⻑し、新たに社会保険を適⽤した場合などに助成されます。
助成金はコースごとに訓練の内容によって決められています。例えば、人材育成をOFF-JTで実施した場合には、1時間当たり800円の賃金助成と最大50万円の経費助成が支給されます。
人材育成コースの支給額
OFF-JTの場合 | ||
賃金助成 | 1人1時間当たり800円 (500円) | |
経費助成 | 一般職業訓練、有期実習型訓練 | 1人当たり最大30万円 (20万円) |
中⻑期的キャリア形成訓練 | 1人当たり最大50万円 (30万円) | |
OJTの場合 | ||
実施助成 | 1人1時間当たり800円 (700円) |
※金額は中小企業の場合。カッコ内は大企業の場合。
人材育成コースには、3種類の訓練があります。一般職業訓練は、訓練実施事業主以外が設置する施設に依頼して行われる訓練で、1コース当たりの実施期間が1年以内で、かつ、20時間以上実施した場合が助成対象になります。有期実習型訓練は、企業でのOJTと教育訓練機関などで行われるOFF-JTを組み合わせて実施する訓練です。中長期的キャリア形成訓練は、中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練として 厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を指します。
キャリアアップ助成金を受給するまでの流れ
キャリアアップ助成金を受給するには、各種段階を踏む必要があります。まず、キャリアアップ計画書を作成し、労働局(ハローワーク)へ提出します。労働局が計画書の内容を確認した後に、企業は訓練等を実施し、終了後に支給申請を行います。なお、人材育成コースの場合には、訓練を実施する前に訓練計画書を提出する必要があります。
キャリアアップ助成金はアルバイトの英会話スクール利用には適用されない
小売店のアルバイト店員を外国人観光客の接客のために英会話スクールへ通わせた場合、キャリアアップ助成金の支給対象にはなりません。キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換することを前提としている制度で、アルバイトの地位を維持した状態での助成は行われないからです。また、日常会話程度の語学の習得のみを目的とした講習は助成の対象にならないとも規定されています。どうしてもアルバイトに英語スキルを身に付けさせたいという場合には、アルバイトを正社員に転換させた上で(この時に正社員化コースを利用してもよい)、キャリア形成促進助成金の教育訓練休暇等制度を導入すれば助成金を受け取ることができます。
参考サイト
キャリアアップ助成⾦のご案内 – 厚生労働省
キャリアアップ助成金 – 厚生労働省
雇用・労働 – 厚生労働省
最近の正規・非正規雇用の特徴 – 総務省