助成金を活用して社員の英語力を上げる方法~海外展開企業編
中小企業庁が、海外展開している企業に実施した「グローバル人材の充足度」調査によれば、およそ半数の企業が「グローバル人材が不足している」と回答しています。その一方で、人材育成のための取り組みを行っている企業はわずか34%で、人材不足が深刻化していることがわかります。
人材育成には時間やコストなど企業には大きな負担がかかりますが、厚生労働省の「キャリア形成促進助成金」制度を利用して成長分野等・グローバル人材育成訓練を実施すれば金銭的な負担を軽減することができます。
成長分野等・グローバル人材育成訓練とは
「成長分野等・グローバル人材育成訓練」とは、成長分野や海外関連業務に従事する人材育成のために実施する訓練で、企業が導入、実施することによってキャリア形成促進助成金制度の助成対象になります。助成額はOFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業の場合。中小企業以外は400円)、OFF-JT経費助成として経費の2分の1(中小企業の場合。中小企業以外は3分の1)の助成を受けることができます。ちなみにOJTでの助成はありません。
成長分野等・グローバル人材育成訓練の要件は次の通りです。
- OFF-JTにより実施される訓練であること
例えば、事業主自ら企画・実施する訓練、または教育訓練機関が実施する訓練など。 - 実訓練時間が20時間以上であること
海外の大学院、大学、教育訓練施設などで実施する訓練は30時間以上。なお、海外の大学院、大学、教育訓練施設に対しては経費助成のみで、賃金助成はありません。 - 海外関連の業務を行っている(計画を含む)事業主が、労働者に対して実施する海外関連の業務に関連する訓練であること
例えば、英会話スクールの利用などが上記要件に該当します。講師が一方的に喋っているような、映像が配信されるだけの講座は該当しません。この他、国際法務、国際契約、海外マーケティング、地域事情に関する講座な どの受講も要件に該当します。なお、訓練を海外で実施する場合には、入学料や受講料、教科書代、住居費、宿泊費、往復交通費などの経費が支給対象になります。
キャリア形成促進助成金制度の利用に必要な書類
キャリア形成促進助成金制度の利用にあたっては、以下の書類を添えて管轄の労働局へ申請します。申請様式は、厚生労働省のWebサイト「キャリア形成促進助成金 申請様式のダウンロード」からダウンロードできます。申請期間は、訓練実施の1か月前です。
- キャリア形成促進助成金(一般企業型訓練・重点訓練コース・雇用型訓練コース)訓練実施計画届
※「成長分野等・グローバル人材育成訓練」は重点訓練コースに含まれます。 - 企業の資本の額、出資の総額、企業全体の常時雇用する労働者数が分かる書類(登記簿謄本、会社案内・パンフレットなど)
- 年間職業能力開発計画
- 訓練別の対象者一覧
- OFF-JTの実施内容などを確認するための書類(訓練カリキュラムなど)
- 海外に拠点などを設けていることが分かる書類、海外企業との取引が分かる書類、海外関連の業務を行っていることについて公的機関が証明した書類など(実施を計画している場合は事業計画書など)
キャリア形成促進助成金を受けるには
キャリア形成促進助成金を受けるには、訓練終了日の翌日から2か月以内に、管轄の労働局へ以下の書類を提出します。書類は「キャリア形成促進助成金 申請様式のダウンロード」からダウンロードできます。
- 「支給要件確認申立書」
- 支払方法・受取人住所届
- キャリア形成促進助成金(一般企業型訓練・重点訓練コース・雇用型訓練コース)支給申請書
- 賃金助成・OJT実施助成の内訳
- 経費助成の内訳
- OFF-JT実施状況報告書
- 申請事業主が訓練にかかる経費を全て負担していることを確認するための書類(領収書、振込通知書など)
- 賃金台帳または給与明細書など(海外での訓練の場合は不要)
- 就業規則(賃金規定を含む)、雇用契約書、休日カレンダーなどの所定労働日、所定労働時間が分かる書類(海外での訓練の場合は不要)
- 訓練期間中の出勤状況の確認書類(出勤簿またはタイムカード)(海外での訓練の場合は不要)
事業内訓練を実施した場合に必要となる書類
- 部外講師に対する謝金・手当を支払ったことを確認するための書類(領収書、振込通知書など)
- 部外講師に対する旅費を支払ったことを確認するための書類(領収書、振込通知書、旅費規程、旅程計算表など)
- 訓練を実施するための施設・設備借上費を支払ったことを確認するための書類(領収書、振込通知書など)
- 訓練に使用した教科書代・教材費を支払ったことを確認するための書類(領収書、振込通知書など)
事業外訓練を実施した場合に必要となる書類
- 入学料・受講料・教科書代などを支払ったことを確認するための書類(領収書等及び受講料の案内など)
海外で訓練を実施した場合に必要となる書類
- 入学料・受講料・教科書代など・住居費・宿泊費・交通費を支払ったことを確認するための書類(領収書、振込通知書など)、受講料の案内
- 住居費・宿泊費を支払ったことを確認するための書類 (住居費の場合は賃貸借契約書など、宿泊費の場合は宿泊申込書)
- 海外の大学院、大学、教育訓練施設などが発行する訓練の修了証
- 対象労働者のパスポート
なお、提出する書類が日本語以外で書かれている場合には、翻訳したものを併せて提出します。
参考サイト
海外展開している企業の人材確保の取り組み状況 – 中小企業庁
キャリア形成促進助成金 – 厚生労働省
キャリア形成促進助成金のご案内 – 厚生労働省
中小企業施策利用ガイドブック – 中小企業庁
海外展開投資における人材の在り方 – 中小企業庁