発達障がいの子どもが中学校に入学するときに準備しておきたいことまとめ
4月の進学・入学シーズンに向けて、中学校へ進学する子どもたちは、期待と不安でいっぱいです。中でも、発達障がいの子どもは、新しい環境の変化に敏感です。中学生は人生でもっとも多感な年ごろで、クラスメートも精神的に不安定な時期を迎えます。小学校で許されていたことが、中学校では許されないようなことも出てくることでしょう。
勉強面で不安を抱かれている保護者の方も多いかと思います。新しい教科が増え教科ごとに違う先生に教わるので、授業で戸惑うこともあるかもしれません。授業時間は長くノートを書く量が増えるため、集中力が求められます。学習内容は難しくなり、定期テストでは基本と応用力が問われるようになります。授業・テスト・評価内容も、小学校とは大きく変わります。
親御さんにとってもこの時期は、やらなければならないことがたくさん出てきます。中学校へ進学する子どもたちが、ストレスを感じることなく楽しい学校生活を送るには、入学に合わせてどのような準備をしておけばよいでしょうか。
発達障がいのお子さんが中学校へ入学するときに準備しておきたいこと
小学校から中学校に申し送りされているか確認する
小学校においての、発達障がいのある子どもへの支援は、さまざまな機関の支援を受けながら、障がいの特性や実情に基づいて適切に行われています。小学校で行われてきた支援内容を中学校へ繋いでいくことで、途切れのない適切な支援が実現できます。そのためには、小学校から中学校への申し送りが大切です。普通級・支援級に関わらず中学校には、小学校から申し送りされているかどうか確認を取っておきましょう。
校長先生や教頭先生、担任教師と面談してサポートシートを渡す
校長先生や教頭先生、担任教師との面談は、子どもの特性を知ってもらえるよい機会です。同行者は、お母さん1人よりも父親や祖父母など、子どものことをよく知る親族も同行するとよいでしょう。また、放課後等デイサービスの相談員に同行してもらい、第三者による客観的な意見を伝えてもらうことも大切です。
伝えたい内容や共有したい情報などは、サポートシートに記入して渡します。サポートシートとは、発達障がいの状況や特性、乳幼児健診などの結果を書いた紙のことです。サポートシートは、担任の先生や関りのある先生たちで情報共有されます。
中学校へ行ったついでに、校内を見学しておくとよいでしょう。教室や体育館、音楽室、トイレ、教員室など、子どもが行きそうな場所を確認します。また、保健室など、子どもがパニックになった時にクールダウンする場所も確認しておきましょう。
発達障がいのお子さんが中学校へ入学するときに確認しておきたいこと
座席の配慮や声かけを確認する
子どもが中学校に入学する時には、改めて校長先生や教頭先生、担任教師に対して、子どもへの配慮をお願いしましょう。教務担当教師や保健室の先生、スクールカウンセラーなど、子どもと関りのある人にも一通り挨拶しておきます。
子どもの座席は配慮してもらえることが多いので、必ず担任教師と相談しましょう。話したり聞いたりすることが困難な子どもや、視力の弱い子どもには一番前の席がお勧めです。一方で、落ち着きがない子どもや、授業中に大声を出してしまうような子どもは、廊下側か窓側の席がよいでしょう。対人関係が苦手な子どもは廊下側の後ろの席、書くことが苦手な子どもは中央の前のほうの席、行動の遅い子どもは後ろの席がよいでしょう。小学校の時の座席も参考に、子どもの特性に合う席を見つけましょう。
一斉指示を周知する
一斉指示が通りにくい場合は、子どもに直接指示を出してもらうよう先生にお願いしておきましょう。先生が忙しい時には、周りの友だちに協力してもらうとよいでしょう。座席の周辺に面倒見のよい友達がいると、子どもも安心して授業が受けられます。
一斉指示は、例えば「集合してください」「体育館へ行きましょう」のように、指示が1つの場合もあれば、「体操着に着替えてから校庭に集合してください」のように、指示が2つ以上出される場合があります。発達障がいの子どもたちは、2つ以上の指示がうまく理解できないことがあります。「体操着に着替えて席に座ってしまう」「着替えないまま校庭に出ていってしまう」といった行動をしてしまうことも。特にお子さんが通常学級に所属する場合は、予め先生に特性を伝えておき支援をお願いしておきましょう。
提出物を出し忘れないような対策が必要
ADHDやアスペルガー症候群を抱えている子どもは、宿題を出し忘れたり、学校の手紙を家で出し忘れたりするなど、提出物を出し忘れることがよくあります。授業の提出物は成績に反映されます。連絡事項が行きわたらず学校の授業や活動に遅れてしまうこともあるので、学校と家庭が連携して支援する必要があります。例えば、提出物の内容を書くための専用のノートを作るとよいでしょう。先生は、提出物があるごとに、ノートに書き留めるよう子どもに促します。家庭では、子どもが学校から帰ってきたら必ずノートを見せるよう声掛けし、習慣づけしていきましょう。
子どもの自主性を重んじよう
中学生の年代は、心身ともに子どもから大人に変化する時期です。反抗期を迎えることもあるでしょう。親御さんは、「まだまだ子ども」と思っているかもしれませんが、子どもは大人への階段を一歩一歩駆け上がっているのです。何から何まで手を差し伸べるという考えから一歩引いて、子どもの自主性に任せてみるのもよいでしょう。
学校生活では、適切な場面・タイミングで質問をする、困っていることがあったら自分から言うといった目標を持たせましょう。
勉強は「できた」の積み重ねで自信をつけさせる
中学校では、新しい教科が増えたり、高度な学習にチャレンジしたりするなど、子どもの勉強への負担は大きくなります。高校入試に向けた受験勉強も控えています。小学校の時は勉強についていけたのに、中学校に入った途端についていけなくなった、ということもあり得ます。このような状況にならないためには、日々の勉強の積み重ねが大切です。
わからないところは飛ばさずに、着実に自分のものにしてから次の学習に進むような対応が求められます。特に英語と数学は積み上げ型の強化なので、理解できていないところまで戻って、しっかりと定着させていくことが大切です。長時間の勉強が困難な子どもには、短時間の学習を繰り返しながら勉強していくとよいでしょう。
最近では、勉強のスタイルが多様化しています。教科書と参考書、辞書で勉強するといったこれまでの勉強のスタイルは、今ではタブレット端末で勉強できたり、動画を見ながら勉強できたりします。子どもの特性に合った勉強スタイルを見つけてあげましょう。
放課後等デイサービスを活用しましょう
放課後等デイサービス(放デイ)とは、発達障がいの子どもが、放課後や日曜日、夏休みなどを利用して、療育を受ける施設のことです。自閉症をはじめ、ADHD(注意欠陥多動性障がい)、LD(学習障がい)、アスペルガー症候群などの子どものために、生活能力の向上や自立促進のための支援、学習支援などを行っています。
放課後等デイサービスは、小学生や中学生、高校生(6歳から18歳まで)が利用できます。学校の宿題を見てもらったり、勉強のアドバイスを受けたりすることができます。学校と異なる人間関係を築けることも魅力です。また指導員は多くの発達障がいの子どもと接してきた経験を活かして、心のケアや、親御さんの相談相手などにもなってくれます。
放課後等デイサービスが提供するサービスの例
▼学習面のサポート
・学校の宿題や予習、復習
・英会話の勉強
・読み書きの学習
・習字や絵画
・楽器演奏や合唱
▼運動面のサポート
・水泳
・ダンス
・サッカー、野球
▼生活面のサポート
・ソーシャルスキル
放課後等デイサービスを活用して、子どもの可能性を伸ばしていきましょう。
入学前の準備と入学してからのフォローは早めに動きましょう
卒業、入学シーズンは、新しい学校生活に向けて何かと忙しい時期です。中学校は、校長先生や教員の入れ替わる時期でもあります。面談や申し送りなどは、学校側の負担にならないよう余裕をもってスケジュールを組んでおきましょう。
入学してからも担任の先生と定期的に面談をし、コミュニケーションをしっかり取ることがおすすめです。家庭と学校で連携して、子どもたちが不安の少ない中学校生活を送れるよう、しっかり支援していきましょう。