アスペルガー症候群の子供を持つ親の、勉強の支援や対応方法
アスペルガー症候群とは、コミュニケーションがうまくできなかったり、社会生活になじめなかったり、強いこだわりを持ったりするといった傾向が著しく見られる障がいのことです。
アスペルガー症候群を抱える子どもは、学校で友だちとすれ違っても「おはよう」の挨拶を言わなかったり、相手の制止を無視して話し続けたりすることがあるため、変な人と見られてしまうこともあります。ちょっとした物音に反応してしまうため、勉強に集中できなくなり成績が低下してしまうこともあります。家庭では、なるべく子どもの勉強しやすい環境を整えたいものです。実際にどのようなサポート、療育ができるのでしょうか?
鉛筆や消しゴムは使いやすいものを選ぶ
アスペルガー症候群を抱える子どもは、手指を使う細かい動きが苦手です。例えば、ノートに書き写したり消しゴムで消したりすることが苦手です。手が疲れないような書きやすい鉛筆や、小さい部分でも楽に消せるような消しゴムを用意するとよいでしょう。
勉強のスケジュールを立てる
食事や排泄といった見通しの立っている状況への対応は得意です。家に帰ってきてからやることをあらかじめ決めておけば、その通りに物事を進めていくことができます。例えば、勉強の時間帯になったら「宿題を30分してから読書を30分する」というように決めておきます。
アスペルガー症候群を抱える子どもの特徴の1つに、見通しの立っていない状況への対応が困難な点が挙げられます。例えば、宿題をする時間なのに今日は宿題がない、という場合です。そのためには、あらかじめ替わりのスケジュールを用意しておくことです。「宿題のない日はドリルを30分する」「本がなかったら漢字の練習をする」というようにしておくとよいでしょう。
塾は個人指導塾を選ぶ
アスペルガー症候群を抱える子供は、人との付き合いが苦手です。塾を選ぶ場合には、人数の少ない塾、あるいは1対1の個人指導塾、一人ひとりの席がつい立てで仕切られているような塾などの中から選ぶようにします。また、発達障がいの子ども向け塾の利用もよいでしょう。英語の学習は、マンツーマンレッスンのできるオンライン英会話サービスがお薦めです。
勉強する環境は静かな場所を選ぶ
視覚や聴覚、触覚、嗅覚、味覚のいわゆる五感が過剰に反応します。勉強をする場所はなるべく静かな所を選ぶ、匂いの強い花や芳香剤を置かないなどの配慮も療育の1つです。
勉強中は勉強に集中させる
アスペルガー症候群を抱える子どもは、同時に複数の作業を行うことが苦手です。勉強をしている時に他の用事が発生すると何をしてよいのかわからなくなりパニックに陥ることもあります。急ぎでない限り、勉強が終わってから用事を伝えるとよいでしょう。
アスペルガー症候群を抱える子どもの特徴
アスペルガー症候群を抱える子どもの特徴を踏まえておくことも、適切な支援方法を選択する指針として大切でしょう。
下のグラフは、アスペルガー症候群を抱える10歳の子どもの、各能力の精神年齢を表したものです。青色のラインがアスペルガー症候群、ピンク色のラインが発達障がいの見られない子どもです。併せてADHDやLD、知的障がい、低機能自閉症を抱える子どもたちの精神年齢もグラフで表しています。
グラフ全体を見ると、発達障がいを抱える子どもの精神年齢は、多くの能力で10歳未満であることがわかります。アスペルガー症候群を抱える子どもの精神年齢も同様ですが、中には10歳以上の精神年齢を持つ能力もあります。それでは、アスペルガー症候群を抱える子どもの能力を見ていきましょう。
「全身の粗大運動」は、かけっこやサッカーのような運動能力を表したものです。アスペルガー症候群を抱える子どもの運動能力はやや低い結果となっています。「手指の微細運動」は、折り紙やボタンとめなどの指先の器用さのことで、全身の粗大運動と同様にやや低くなっています。他にも「対人関係」や「聴覚認知能力」がやや低い結果となっています。また、「聴覚認知能力」と「行動・感情のコントロール」を苦手とするケースが多いようです。
一方、「食事・排泄などの日常生活」や「視覚認知能力」は、発達障がいのない子どもよりも優れていることがわかります。「言語表現能力」もほぼ適齢に近い結果となっています。
出典:ひきこもりと発達障害(内閣府)
関連サイト
発達障害者支援施策報告会資料 – 国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター
平成28年度(2016年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査 – 独立行政法人日本学生支援機構
おもな発達障害の定義について – 内閣府
理解する ~発達障害って何だろう?~ – 内閣府大臣官房政府広報室