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高校生の英語力を伸ばすエビングハウスの忘却曲線とは?

英語力を伸ばすための基礎となるのが記憶力です。暗記が苦手な高校生でも効率的に記憶できる学習法として、心理学者ヘルマン・エビングハウスの提唱した忘却曲線の活用がお薦めです。忘却曲線とは、意味を持たないアルファベットの文字列をいくつか暗記した時に、どれくらいの期間でどれだけ忘れてしまうかをグラフに表したものです。忘れてしまいそうな時期に復習を繰り返すことで、暗記力の向上が期待できます。

 

高校生は、英単語や英文法、英語構文など、英語習得のために覚えるべきことはたくさんあります。効率的に暗記できれば、英語の基礎力を最低限の労力で身につけられます。高校生に求められる英語力は英文読解やリスニングなどがありますが、暗記力も必要です。脳には短期的に情報を保存しておく機能と長期的に保存をしておく機能があります。短期記憶は一時的なもので、1時間後には忘れてしまうような記憶です。学習力を向上するには、暗記してから1週間、1か月と経過しても引き出せる、長期記憶としての定着が大切です。エビングハウスの理論を使うことで、英単語や英文法を長期間にわたって記憶することが期待できます。

 

エビングハウスが提唱する忘却曲線理論を活用することで、暗記力を鍛えられます。高校生が効率的に英語力を伸ばせる学習環境を作る参考にしてみましょう。

エビングハウスの忘却曲線を理解して実践すれば効率よく暗記できる

近年の脳科学の研究では、人間の記憶には長期記憶短期記憶があるとされています。短期記憶とは、一時的に記録される情報のことです。短期記憶を理解するには、試験前日の一夜漬けを考えてみると良いでしょう。一夜漬けをする生徒は、定期試験の範囲に指定されている英文法や英単語を前日の夜、繰り返し学習して試験に臨みます。試験中に思い出して良い点数が取れることもあり、場合によっては定期試験の点数も悪くはありません。テストの後に復習をしなければ、脳は「長期的に保存する必要がない」と判断して、記憶が消えていきます。短期記憶として消去されてしまいます。

 

長期記憶とは、脳が長い期間保存しておくべきと判断した情報のことです。高校生が英語力を伸ばすためには、たくさんの英語に関する知識を長期記憶として保存していくことが大切です。脳科学や心理学で研究されている長期記憶は、宣言記憶や手続き記憶、エピソード記憶・意味記憶など細分化して説明されることもありますが、ここでは「長い期間にわたって情報の取り出しができる記憶」と理解しておきましょう。

 

短期記憶として覚えている情報は、記憶が消える前に復習することで、脳に長期記憶として定着する可能性が高くなります。生徒の英語力向上は、効率的に長期記憶を増やすための復習タイミングで決まると考えても良いかもしれません。

 

エビングハウスが行った実験によって、人が記憶を忘れてしまうタイミングがわかっています。脳が情報を忘れるタイミングを記録したデータが忘却曲線です。

 

 

エビングハウスの忘却曲線によると、覚えた語句は1か月後にはほとんど忘れてしまうという実験結果が出ています。語句を記憶した20分後には42%が忘却します。1時間後には56%忘れ、1日後には74%が短期記憶として消去されます。1週間後には77%、1か月後には79%の覚えた語句が記憶から消えています。

 

忘却は、復習をしなかった場合の比率なので、適切なタイミングで復習さえすれば、情報を脳に定着することができます。忘却曲線を参考にした、適切な復習のタイミングは3日後、7日後、1か月後3か月後とされているので、参考にしてみましょう。

忘却曲線は高等学校や予備校でも活用されている

教育現場でもエビングハウスの忘却曲線は活用されており、最小限の復習量で、情報の定着率を最大化するための取り組みが増えています。エビングハウスの忘却曲線を活用した塾や予備校、高等学校の事例を紹介します。

 

駿台教育センター株式会社の運営する駿台高等部では、エビングハウスの忘却曲線にそって復習を行っています。カナダのウォータールー大学が行った実験結果も踏まえており、研究データに基づいた復習プランが特徴です。

 

高等学校でもエビングハウスの忘却曲線が導入されています。大阪の追手門学院中学校・高等学校では、リフレクション学習という教育方法を導入しています。学習した日の翌日には70%が忘却されることから、翌日に学習内容を復習します。1週間後、1か月後、2か月後と定期的に復習して、知識の定着のための工夫をしています。

忘却曲線を活用した学習アプリもある

スマートフォンやタブレット端末にインストールして学習できるソフトウェア、いわゆる学習アプリでも忘却曲線は活用されています。reminDOやスタディプラス、Ankiといったタイトルの学習アプリが人気です。reminDOは、学習した日付を登録することで、忘却曲線にあわせて復習する日を通知してくれます。スタディプラスは、学習機能と復習が必要なタイミングに通知する機能を備えたアプリです。Ankiは、エビングハウスの忘却曲線に加えて、ライトナーシステムや反復学習などの機能を搭載しています。

記憶定着には睡眠も大切

脳科学の研究により、睡眠によって記憶が定着することが判明しつつあります。心理学の記憶に関する研究で、レミニセンス(追記憶)という現象が注目されていた時期がありました。レミニセンスとは、学習した内容が日を追うごとに深まっていくという、脳の情報処理に関する研究で明らかになった現象です。年齢によって変化はありますが、学習した20分後より1週間後の方が、理解が深まっている場合があると、植草学園大学発達教育学部の長谷川修治教授、安藤則夫教授は「レミニセンスと学習効果」で言及しています。しかし、最初の学習後に被験者が自発的に復習をしている可能性があることから、精密な検証が難しく、近年ではあまり注目されなくなりました。

 

脳科学では、睡眠と記憶定着の関係が注目されています。甲南大学の前田多章准教授によると、睡眠と記憶には深い関係があると述べています。睡眠中、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に入れ替わり、異なる役割を果たしているのです。嫌な記憶を消したり、重要な情報を記憶に固定したりする作業は、睡眠中に行われていると、前田准教授は言及しています。レム睡眠とノンレム睡眠は、適切な睡眠時間を確保することで行われます。レム睡眠は、脳の活動している浅い眠りとされており、夢をみたり記憶を定着したりすると考えられています。ノンレム睡眠は大脳が休み、脳と身体の回復を行う時間とされています。

 

杏林大学医学部付属病院精神神経科の古賀良彦教授の著書「睡眠と脳の科学」には、レム睡眠とノンレム睡眠は一晩の眠りで3回から5回ほど繰り返すと紹介されています。睡眠時間を削ると、それだけレム睡眠が少なくなり、記憶に定着しづらくなると考えられるとカナダ・マギル大学のシルベイン・ウィリアムズ博士は発表しています。

 

エビングハウスの忘却曲線を参考にして復習をしつつ、適切な睡眠をとることで、情報が記憶に定着しやすくなります。

関連サイト

レミニセンスと学習効果 – 植草学園大学研究紀要

睡眠と記憶について/基本的な睡眠とは – 甲南大学

「復習4回」で脳をダマすことができる – PRESIDENT Online

眠りの種類 ~レムとノンレム~ – エスエス製薬

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