海外進出した企業が抱えるリスク「ベスト5」
第一位は「人件費の高騰」
すでに海外進出を果たしている企業が直面しているリスクとは一体どのようなものでしょうか。中小企業庁の「広がる海外展開とそれに伴う課題」の調査によれば、1位は「人件費の高騰」で、 生産機能の直接投資先を持つ企業の半数以上がリスクとして認識しています。2位は「為替変動のリスク」で、特に輸出企業の半数近くがリスクとして挙げています。3位は「経済情勢の変化のリスク」、4位は「政情不安・自然災害のリスク」、5位「知的財産・技術流出のリスク」という結果でした。
近年、日本の企業は世界進出のために海外へ事業を展開するケースが増えています。企業は、海外進出によって優秀な人材や安価な労働力が確保でき、収益力のアップが図れるといったメリットがある一方で、現地人材の確保や育成、外国語の習得など新たな課題が出てきます。国際情勢の変化などによって起こるリスク分析や、しっかりしたリスクマネジメントを築き上げておくといった準備が海外進出のカギといえるでしょう。
出典:
直接投資企業が直面している課題・リスク – 中小企業庁
輸出企業が直面している課題・リスク – 中小企業庁
人件費の高騰
企業は、日本よりも物価が安く、安価で労働力を確保できる中国やタイ、ベトナムなどに拠点を置くケースが多く見られます。
下の図は、日本と中国、タイ、ベトナムの1人あたり国民総所得(1人あたりGNI)の推移をドルベースで表したものです。2015年の段階で日本は3万6680ドル、中国は7820ドル、タイは5620ドル、ベトナムは1980ドルで、日本が他国を大きく引き離していることがわかります。企業は、日本で人材を確保するよりもこれらの国々の人材を確保したほうが人件費を安く抑えられることになります。
出典:世界銀行
一方、これらの国々は経済成長が著しく、年々物価や地価が大きく上昇する傾向にあります。下の図は、2006年を100%とした場合の1人あたり国民総所得の推移です。これを見ると、10年間で中国は約3.8倍、タイは1.8倍、ベトナムは2.6倍に増えています。このような傾向は、企業の人件費に対する負担増大につながり、収益にも影響が及びます。
出典:世界銀行
企業は、人件費高騰の対策として、「売上高の増加や新製品の開発」、「諸経費等コストの削減」、「職能給や職務給、能率給を採用・拡大した賃金制度の改正」、「パートタイム労働者への切替えや下請、派遣労働者等の活用」、「人員配置や作業方法の改善」などによって負担の軽減を図っています。
参考サイト
- 中小企業庁
- 海外展開成功のためのリスク事例集 – (PDF)
- アジア各国の消費者物価指数に見る物価の変動要因の比較 – 総務省統計局