発達障がい児の生活の質を改善する方法まとめ
発達障がいは改善できるのでしょうか。発達障がいの根本原因自体は改善することはできませんが、それ自体を発達障がいを持つ子の不適応行動や困り勘を減らし、社会適応度や心の安定度を改善していくことはできます。発達障がいの特性ごとの生活の質(QOL)改善の方法について解説します。
発達障がいは改善できるのか?
発達障がいは、脳の機能やその発達の生まれつきのアンバランスを根本として起こるものであり、発達障がいを構成している生まれつきの要素は変えることができません。発達障がい児の脳を、発達障がいを持たない人と同じような脳に変えることはできない、ということです。
ただし、丁寧な支援や環境調整、訓練により、発達障がい児者の社会適応度を上げたり、二次障がいを発症するリスクを下げたりして、ある程度まで発達障がい児の生活の質(QOL)を改善していくことは可能です。
発達障がいの特性ごとの生活の質改善方法とは?
感覚過敏と感覚鈍麻
感覚過敏や感覚鈍麻は、基本的には、環境調整と支援により改善を目指します。感覚過敏の場合は、苦手な刺激の多い場所や環境を避ける生活を心がける他に、イヤーマフやサングラスなど、本人が身につけることで刺激をある程度回避できる方策を用意しましょう。
感覚鈍麻による感覚探求(感覚刺激を追い求めてやたらといろいろなものに触るなど)が気になる場合は、「これは触っていい」というものを用意したり、課題や遊びの中に感覚を刺激できる要素を組み込んだりするのがよいでしょう。
コミュニケーション障がい・発語の困難さ
本人にどういった背景があって苦手や困難が起きているかを理解したうえで、本人に合った支援と訓練を行っていくことで改善を目指します。詳細は、「発達障がいを持つ小学生のコミュニケーションの基本的な支援と訓練」を参照してください。
こだわりの強さ
こだわりの強さを示す発達障がい児には、一度本人の中で固まったルールや予定を変えることに不安を覚えることが多くあります。ルールや予定の変更はあらかじめ伝えてあげることで、不安感の改善が見込めます。
ルールや予定の変更を伝えるときには、簡潔に、わかりやすく、具体的に話します。目で見て把握できるように、ホワイトボードや絵カードなどを使うと改善につながりやすいでしょう。
多動、衝動性、注意散漫、過集中
多動や衝動性、注意散漫や過集中の傾向は、脳の機能のアンバランスから起こります。服薬によってある程度の改善が見込める子も多くいますが、環境調整などの支援も有効です。身体の多動は、本人の成長に伴って自然に改善していくこともよくみられます。
身体や手先の不器用さ
身体や手先の不器用さには、脳神経系で感覚刺激の処理が改善するように訓練する「感覚統合療法」を試してみるのがよいでしょう。詳細は、「家庭でできる、発達障がい児の不器用さを改善する方法」参照してください。
読字障がい
読字障がいには、学習支援ツールの導入がすすめられます。厚紙で枠を作り、教科書の文章を数文字ずつ区切って読み進められるようにしたり、タブレット端末などで現在読んでいる部分をハイライト表示するようにしたりすると、適応度の改善が見込めるでしょう。
書字障がい
書字障がいには、パソコンやタブレット端末で入力しても良いように、環境調整を行うことがすすめられます。家庭ではできれば早めにパソコンを与えると、適応度改善の近道となるでしょう。
発達障がい児の生活の質の改善につながりやすい対処法
早期発見、早期療育
発達障がいを早期に発見し、その子に合った療育を開始することは、本人の生活の質の改善につながりやすいと言えます。ただし、良かれと思って本人にプレッシャーを与えたり、強制的に療育に連れていったりすることは避けましょう。
薬での治療
発達障がいの特性のうちで、薬物療法の効果の根拠がはっきりしているものは限られています。コミュニケーション障がいや感覚過敏などに対する薬物治療については、臨床での十分な根拠は蓄積されていません。
家庭生活での支援
家庭生活での支援も、発達障がい児の生活の質の改善のために重要な位置を占めています。本人の意志と本人との信頼関係を大事にしつつ、できるだけ困りごとを取り除いてあげられるようにしましょう。
放課後等デイサービスなどの施設利用
放課後等デイサービスなどの専門の支援施設には、専門家が多く在籍しています。保護者や学校の先生、旧友とはまた違った距離感で支援や訓練を行ってくれるので、積極的に利用することがすすめられます。
心理セラピー、スポーツ、塾、規則正しい生活、食事など
発達障がい児には、精神的ストレスがかかると不適応行動が増える場合があると言われています。本人を見ていて、精神的な不安が状態の悪化に影響していると感じたら、心理セラピーを受けさせるのもひとつの手です。
スポーツは、本人が苦手意識を感じないもののうち、筋力や感覚処理能力の改善に役立ちそうなものを中心に少しずつチャレンジさせるとよいでしょう。規則正しい生活、特に十分な質の高い睡眠と決まったサイクルでの食事は発達障がい児の心身の状態を整えてくれます。睡眠相が後退してしまう場合、日中の刺激が過多な場合や、就寝時の脳のクールダウンが上手でない場合などがあるので、環境調整や服薬でサポートしてあげましょう。2018年8月時点では、特定の食事や栄養成分と発達障がいの改善の間の関係性には十分な根拠がありません。
関連サイト
発達障がい児に対する視覚支援ツールとしての 「コミック会話」の教育効果の実践事例 -問題行動のある A 児への支援- 佐竹和美 – 佛教大学
発達障害児支援ツールの例 – 厚生労働省
発達障害、知的障害、精神障害のある方とのコミュニケーションハンドブック – 国土交通省
発達障がいの子ども専用のオンライン英会話をお薦めします