発達障がいを抱える小学生への英語学習の支援方法
2020年度から、現行の学習指導要領に替わる新しい学習指導要領が実施されます。新・学習指導要領で大きく変わる点は、小学校3年生からの英語授業の開始です。小学校5年生からは英語の科目が「教科」として扱われ、国語や算数と同じように、学力の測定結果が成績表に記載されるようになります。内申書にも英語の成績が記載されます。
英語の学習では、「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4技能をバランスよく習得することが望ましいとされています。自閉症やADHD、学習障害、アスペルガー症候群などの発達障がいを抱える子どもに楽しく英語の勉強させるには、家庭でのサポートが必要です。
具体的な支援方法を英語4技能ごとに見ていきましょう。
聞くこと
新・学習指導要領では聞くことについて、「Hello」や「Nice to meet you」のような比較的短い表現を聞き取って理解できるような技量を身に付けるとしています。聞くことをやや苦手とするADHDを抱える子どもには、雑音の少ない静かな場所を選び、ゆっくりはっきりと話しかけるように心掛けます。あまり長い時間をかけないようにすることも大切です。
新・学習指導要領「聞くこと」の学習目標
- ゆっくりはっきりと話されれば、自分のことや身近で簡単な事柄について、簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。
- ゆっくりはっきりと話されれば、日常生活に関する身近で簡単な事柄について、具体的な情報を聞き取ることができるようにする。
- ゆっくりはっきりと話されれば、日常生活に関する身近で簡単な事柄について、短い話の概要を捉えることができるようにする。
出典:小学校学習指導要領(平成29年3月31日公示) (文部科学省)
読むこと
読むことについて、新・学習指導要領では英語で書かれた文字を正しく発音したり意味を理解したりする力を求めています。
LD(学習障がい)を抱える子どもは読むことを苦手としています。子どもに英文を読ませる際には、家族の人がどこを読むかを指で押さえてサポートをしてあげましょう。正しく読めなかったら正しい読み方をその場で教えてあげます。また、単語の意味を理解していないようであれば、意味を教えてあげます。文字が小さくて読みづらい時には、虫眼鏡を併用したり拡大コピーしたものを使ったりして読みやすい環境を提供するとよいでしょう。
ADHDを抱える子どもに対しては、読む場所を指でなぞってあげたり、読み物以外が視界に入らないように配慮します。また、読む時間もあまり長くならないようにします。
新・学習指導要領「読むこと」の学習目標
- 活字体で書かれた文字を識別し、その読み方を発音することができるようにする。
- 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。
出典:小学校学習指導要領(平成29年3月31日公示) (文部科学省)
話すこと
これまでの英語教育では、「読むこと」と「聞くこと」に重きが置かれていました。高校入試や大学入試などの入学試験、英検やTOEICなどの英語検定試験においても、読むことと聞くことに関する問題が出題されていました。これからは「話すこと」と「書くこと」についても入学試験や検定試験で出題されるようになります。「話すこと」は、コミュニケーションに欠かすことのできない技能です。お子さんには手厚くサポートしてあげましょう。
話すことについては、簡単な語句や表現を用いて話のキャッチボールをしたり、自己紹介など身近な話題を英語で表現したりする力が求められます。
自閉症やアスペルガー症候群を抱える子どもは話すことを苦手としています。家族の人が話し相手になって、こちらから話しかけてあげましょう。会話がうまく進まなかったら「こうやって言うんだよ」と手本を見せてあげるとよいでしょう。また、親御さん2人で英会話の手本を見せてあげたり、2人の会話の間にお子さんを仲間に加えたりして、スムーズに英会話に参加しやすい環境を作ってあげるとよいでしょう。
新・学習指導要領「話すこと[やり取り]」の学習目標
- 基本的な表現を用いて指示、依頼をしたり、それらに応じたりすることができるようにする。
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄について、自分の考えや気持ちなどを、簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。
- 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして、伝え合うことができるようにする。
新・学習指導要領「話すこと[発表]」の学習目標
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
- 自分のことについて、伝えようとする内容を整理した上で、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
- 身近で簡単な事柄について、伝えようとする内容を整理した上で、自分の考えや気持ちなどを、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
出典:小学校学習指導要領(平成29年3月31日公示) (文部科学省)
書くこと
書くことについては、アルファベットの大文字と小文字をしっかり書けるようにすること。また、簡単な語句や表現を書き写す力が求められています。
LD(学習障がい)を抱える子どもは書くことを苦手としています。アルファベットを書く練習をする時には、鉛筆に補助具を取り付けて書きやすいようにしてあげるとよいでしょう。最初はアルファベットの文字をなぞる練習から始めるとよいでしょう。アルファベットが書けるようになったら、今度は大文字を見て小文字を書く練習をしたり、単語の穴埋め問題にチャレンジしたりするのもよいでしょう。
新・学習指導要領「書くこと」の学習目標
- 大文字、小文字を活字体で書くことができるようにする。また、語順を意識しながら音声で十分慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。
- 自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
出典:小学校学習指導要領(平成29年3月31日公示) (文部科学省)
関連サイト
小学校外国語活動サイト – 文部科学省
平成28年度公立小学校・義務教育学校(前期課程)における英語教育実施状況調査【集計結果】 – 文部科学省
今後の英語教育の改善・充実方策について 報告(概要)~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~ – 文部科学省
英語4技能試験情報サイト – 英語4技能資格・検定試験懇談会
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