発達障がいの子どもにはワーキングメモリのトレーニングがお薦め
ワーキングメモリ(working memory)とは、情報を一時的に蓄える記憶のことです。ADHDや自閉症スペクトラム、学習障がいなど発達障がいを抱える子どもの中には、ワーキングメモリが上手く機能できないケースが見受けられます。例えば、連絡帳を渡そうと思ってランドセルを開いた瞬間に何をしたらよいのか忘れてしまったり、「今日は暑いね」と声を掛けても全く違う話題をしゃべってしまったりします。
ワーキングメモリが改善されれば、コミュニケーション能力や学習能力の向上も期待できます。ご家庭でも手軽にできるワーキングメモリのトレーニング方法をいくつかご紹介しましょう。
話しかけ方、伝え方を工夫してワーキングメモリの改善を図る
話し掛ける時には、余計な物が視界に入らない所、静かな所など集中できる場所を選びます。「○○くん、これからママが話をするよ」と注意を促して、聞く準備ができているかどうかを確認してから話し掛けましょう。
話が長くならないようにすることも大切です。話す内容は1つに絞って伝えることが望ましいのですが、「着替えたら宿題をする」のように複数のことを伝える時にはメモに書いて渡すなどの工夫が必要です。やることを子どもに書かせて、メモする習慣を身に付けさせるのもよいでしょう。
発達障がいの子どもは、聴覚的な処理よりも視覚的な処理のほうが得意です。言葉で伝わりづらいことでもイラストや図で示せば理解度が高くなります。道順を説明する時は、「交差点を右に曲がって」のように説明するよりも紙に書いて説明した方が理解しやすいでしょう。
指示しても一度で理解できない場合もあります。そのような時は、繰り返して指示を出すようにします。「言うことを聞かない子だな」で済ませてはいけません。
勉強をする時には、余計な物を子どもの視界に入れないようにするとよいでしょう。机の上には子どもが興味を持ちそうなマンガ本やTVゲームなどは置かないようにしましょう。飲み物や時計、勉強で使わない本や文具などもなるべく置かないようにします。シールやポスター類なども視界に入らない所へ移動しましょう。
日常生活では、例えば着替えをさせる時には、あらかじめ着替える物を並べておき、順番に着ていく習慣を身に付けさせます。上着を着たら「次はズボンだよ」と声を掛けます。着替えが終わったら「上手に着ることができたね」と褒めてあげましょう。
ワーキングメモリを苦手とする子どもの特徴
ワーキングメモリを苦手とする子どもは、言葉など耳から入ってくる情報を記憶することが苦手です。聞いたことをすぐに忘れてしまったり、聞き間違えたりすることが多く見受けられます。また、ちょっとした物音に敏感に反応してしまい、集中できないことがあります。
小学校低学年では、ひらがなやカタカナの一部が書けなかったり、九九が覚えられなかったりします。小学校高学年から中学校では、アルファベットの大文字と小文字の区別ができないこともあります。算数(数学)では暗算が苦手です。先生の話を最後まで集中して聞いていられない、友だちとの約束を忘れてしまうといったこともワーキングメモリを苦手とする子どもの特徴です。
関連サイト
理解する ~発達障害って何だろう?~ – 政府広報オンライン
脳科学と障害のある子どもの教育に関する研究 – 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所
クラスでワーキングメモリの相対的に小さい児童の授業態度と学習支援 – J-STAGE