都道府県の教育費と、生徒と教師の英語力との意外な関係
文部科学省では、中学校と高等学校の生徒、教師の英語力向上のために具体的な目標を掲げており、「英語教育実施状況調査」において都道府県ごとの達成度が公表されています。結果を見ると、都道府県によって英語力に差のあることがわかります。各都道府県の教育費と英語力には意外な関係があることがわかりました。
目次
教育費をかけすぎても英語力が高くなるとは限らない
本稿では、「各都道府県の一般会計のうち教育費にかける比率」と、「中学校、高等学校の生徒、および教師の英語力目標達成率の平均値」の2つの値の相関を調査しました。
教育費にかける比率は一般会計(歳出)の総額に対する教育費の割合で算出したもので、平均値は20.9%でした。
中学校、高等学校の生徒、および教師の英語力目標の基準は次の通りです。
中学校の生徒は、中学校卒業段階で英検3級程度以上を達成した割合を50%にする
中学校の教師は、英検準1級以上等を達成した割合を50%にする
高等学校の生徒は、高等学校卒業段階で英検準2級程度以上を達成した割合を50%にする
高等学校の教師は、英検準1級以上等を達成した割合を75%にする
これらの達成度の平均値を各都道府県ごとに算出しています。平均値は39.7%でした。
下の図は、英語力と教育費の割合の相関図です。縦軸は英語力で、横軸は教育費です。これを見ると、英語力は都道府県によって大きな差が出ていることが分かります。一方、教育費は20%から25%までの間に集中していることがわかります。
出典:文部科学省「英語教育実施状況調査」および各都道府県のWebサイト
英語力の高い福井県や石川県、富山県、東京都では、教育費の割合はほぼ全国平均であることがわかります。神奈川県や埼玉県では、教育費の割合が他の都道府県よりも高いにもかかわらず英語力は平均値に収まっています。一方で、教育費の割合の低い高知県や新潟県、福島県、岩手県などは英語力は平均以下という結果でした。新潟県や福島県、岩手県は災害復興にかかる予算を計上しているため、教育費の割合が相対的に低くなっています。また、高知県も、南海トラフ地震対策への予算計上のため、同様に教育費の割合が低くなっています。なお、教育費には中学校、高等学校の英語教育以外にも割り当てられていますので、教育費にかける比率の高さが英語力向上につながると一概にはいえない所も多々あります。
英語力ランキング1位は福井県
中学校、高等学校の生徒、および教師の英語力目標達成率の平均値を都道府県別で見ると、1位は福井県、2位は石川県、3位は富山県とトップ3を北陸圏勢で占めていることがわかります。
出典:文部科学省「英語教育実施状況調査」および各都道府県のWebサイト
教育費トップは神奈川県
教育費にかける割合の多い都道府県です。1位は神奈川県の30.1%で唯一30%を超えており、平均値の20.9%を大きく上回っています。英語力の順位は23位で、ほぼ中間の順位です。トップ10を見ると、7位の広島県と10位の群馬県を除けば、教育費の割合が高ければ英語力の順位も高いという結果は見られませんでした。
出典:文部科学省「英語教育実施状況調査」および各都道府県のWebサイト
参考サイト
地方財政白書 – 総務省
義務教育費に係る経費負担の在り方について – 文部科学省
外国語教育 – 文部科学省
備考
※本稿で列記した生徒、および教師の英語力、また、各都道府県の教育費のデータは2016年9月に調査したものです。なお、教育費の計上方法は都道府県により異なります。詳しくは各自治体のWebサイトをご参照ください。
下記番号に送付してください。