英語教師のための「PEN英語教師塾」が提唱する英語力とは?
文部科学省が2017年に発表した新・学習指導要領によれば、英語の授業では、「聞く」「読む」「話す[やり取り]」「話す[発表]」「書く」の5つの領域についてそれぞれ目標を設定し、英語力を育成していくとしています。
「PEN英語教師塾」は、よりよい英語教育を目指す先生方のためのサービスです。今回は、英語力について研究している学者たちの見解を深めながら、PEN英語教師塾の提唱する「英語力とは何か」について見ていきましょう。
→英語力とは何か
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目次
英語教育活動の3本の柱
英語教育の目標は、生徒に英語力を付けることです。目標を達成するために、「何(WHAT)」を「どう(HOW)」提示するのかが指導においてのカギになります。そして、提示(実践)したものを「評価(ASSESSMENT)」しなければなりません。
WHATとHOW、ASSESSMENTの3本柱が英語教育の根本原理です。英語教育全般において、英語教育の3本柱は「何をどう提示するのか」「どう提示すれば何がどうなるのか」「ASSESSMENTの結果によってWHATとHOWを変えていく」といったように、相互に作用し合うことが大切です。文法指導や発音指導、語彙指導においても同様です。
言語学者たちの提唱する英語力
・Noam Chomskyは、「Linguistic competence(言語能力)」と「Performance(役割)」を区別し、Competence(能力)を研究することが言語学の課題であるとしました。
・Dell Hymesは、Noam Chomskyの考えを背景に、文法能力は能力の一部であるとの考えを示し、コミュニケーションを取る際に人々が持ち込む知識をCommunicative Competenceと表現しました。
・Noam Chomskyは、言語運用における偶発的なミステイクなどのリスクから独立する形で、理想的かつ完全に同一の発話者と聞き手が持っている言語について研究する考えを示しました。
・Dell Hymesは、Noam Chomskyの考えに対して疑問を提示します。
1)理想的な話者・聴者は存在するか?
2)完全に同一の言語共同体は存在するか?
3)機能を持たない言語とはどういうものか?
4)言語使用と結びつかない言語構造はあるか?
・Dell Hymesが、言語使用における要素を反映し、言語運用の詳細な分析を行うためのモデル「THE SPEAKING MODEL」を提案しました。
・Sandra Savignonが、Communicative Competenceを外国語学習に導入する考えを示しました。
・James Cummingsは、Communicative Competence を、会話を行う際のコミュニケーション能力を指す「BICS( basic interpersonal communicative skills)」と、アカデミックな言語使用を指す「CALP(cognitive/academic language proficiency)」に分けました。
・Michael CanaleとMerrill Swainは、「文法能力」「社会言語的能力」「方略的能力」の3つの要素からなるCommunicative Competenceを提唱し、さらに「談話構成能力」の要素を追加しています。
・Henry Widdowsonが、「CAN-SAY」「CAN-DO」「CAN-ME」からなる言語理論を提唱しました。
・1990年代に入って、英語力の共通概念の形成が始まります。Lyle F. Bachmanは、研究者の考えを整理しました。その後、Lyle F. Bachmanは、Adrian S. Palmerと共に修正案を発表しています。
・2001年、欧州評議会が外国語の学習者の習得状況を示すガイドライン「CEFR」を発表しました。
PEN英語教師塾が提唱する英語力
PEN英語教師塾では、Task handling(タスク処理)とLanguage resources(言語リソース)の相互関係が重要であると説いています。Language resourcesはm「語彙」「文法」「慣用表現」といった言語知識の総称です。外国語学習により身に付けた言語知識を単なる知識として蓄えておくだけではなく、アウトプットができる知識、すなわち、使える知識に昇華することが重要であると言っています。Task handlingとLanguage resourcesは、それぞれ、Can doとCan sayに置き換えて解釈することができます。
PEN英語教師塾は、英語の知識を使い、タスクをこなす能力が英語力であると提唱しています。
1.幼児から成人まで一貫した英語教育カリキュラム編成する際の視点を与える
2.「4技能」の考え方の転換を促す
3.タスクハンドリング力と言語リソース力を高めることが英語教育の目標であることを明示化
PEN英語教師塾では、英語力を説明するにあたり、言語運用の構造を「タスク」「表現モード」「スキル」に分ける独自の考え方をしています。PEN英語教師塾の3つの意義の他、PEN英語教師塾の考え方を見ていきます。
第2言語の発達的観点
使用する言葉とシチュエーションは、発話者と聞き手の年代によって区分けすることができます。
例1)自立した大人は家賃の交渉をすることがあるが、子供は交渉をしない。
例2)一般的に子供が「やぶさかではない」は使わない。
PEN英語教師塾は、各年代における典型的に起こりうるタスクと、「語彙」「文法」「慣用表現」から形成される言語世界が、どのようなものなのかをデータ化することで、コミュニケーションの可能性を広く捉えることができるとしています。
4技能主義を巡る現代の議題
英語における4技能は、「話す」「聞く」「書く」「読む」で構成されています。近年、領域という新たな考えが出てきたことから、4技能主義の考えに変化が生じています。PEN英語教師塾では、4技能と領域を「表現モード」と表現しています。
外国語学習では、これまで「話す」「聞く」「読む」「書く」の4技能のうち、どれかの技能に先行して1つの技能を学ぶスタイルを取っていました。しかし、4技能統合の考えのもと、4技能を同時に学んでいくスタイルが主流になってきています。Sandra Savignonは、現代の外国語学習において、4技能主義は不十分との考えを示した上で、3つの取り組むべき課題を提唱しました。Sandra Savignonは、「言語の機能と形式をどのように統合すればよいのか」「学習者にとって適切な規範をとは何か」「現代に合わせたCommunicative Competenceをどのように測定するのか」を定めることが、英語教育の今後の取り組むべき課題であるとしています。
SPEAKINGは技能なのか
PEN英語教師塾は、「Speaking」を技能にするか否かを議題として挙げています。Speakingを技能と捉える場合、その評価のポイントは「流暢さ」「正確さ」「話す速度」「発音」になります。Speakingは、「Reading」や「writing」と同列のものなのか。そして何のために話すのかを明確にしなければなりません。
4技能5領域の変化をさらに拡大することが望ましい
文部科学省が2017年に公表した新・学習指導要領には、英語の「話す」技能を「話す[発表]」と「話す[やり取り]」に分けて記載しています。PEN英語教師塾では、CEFRに準拠するならば、「話す」「聞く」「読む」「書く」の技能を、「Reception」「Production」「Interaction」の概念を導入することが望ましいとしています。
技能と領域を表現モードと捉える
表現モードには、言語を使うバーバル・モードと言語を使わないノンバーバル・モードに分かれます。バーバル・モードには、表現する「産出モード」と表現を受け取る「理解モード」に分けて考えます。言語活動は、マルチモーダルに行われます。
例
「大学の講義を受講し、ノートを取る。」→ Listeningとwritingが使われている。
「友達と会話をする。」→ListeningとSpeakingが使われている。
1つの技能のみを使っているPrimary modeと複数の技能を使うMulti-modalityを区別することが、表現モードにおける1つのポイントとなります。
英語力とは英語知識と表現モードを使いタスクを回避する力
PEN英語教師塾では、スキルを英語の4技能として捉えるのではなく、タスクをこなすために必要な技法として捉えると説明しています。
例
コーチング・スキル、プレゼンテーション・スキル
「表現モード」「タスク」「スキル」はお互いに作用しあっており、表現モードとスキルを使いタスクをこなす能力、つまり、Task handlingとLanguage resourcesの相互関係が英語力であると提唱しています。
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