今どき高校生の英語力の最大の「弱点」は「書くのが苦手」
文部科学省が2015年度に実施した「英語教育改善のための英語力調査事業(高等学校)」によれば、高校生の英語力はCEFRでA1レベル程度(英検の3級から5級程度に相当)という調査結果が出ています。文部科学省が高校生に求める英語力は英検準2級程度とされていますから、そのレベルまでには達していないことになります。特に、英語の4技能(Listening、Reading、Speaking、Writing)の中ではWriting(書くこと)の技能が他の技能よりも大きく劣っていることが判明しました。
目次
Writing(書くこと)は4技能の中で最低点
Writingの平均点は、4技能の中で最も低い18.3点でした。CEFRではA1レベル、TOEIC S&Wでは80点から159点程度の英語力に相当します。高校生の8割以上がCEFR A1レベルの英語力で、A2レベルの英語力を持つ高校生は18.5%、B1レベルに至っては1.0%しかいないという結果でした。
CEFR-JにおけるA1レベルのCAN-DOリスト(書くこと)は次の通りです。
- 住所・氏名・職業などの項目がある表を埋めることができる。
- 自分について基本的な情報(名前、住所、家族など)を辞書を使えば短い句または文で書くことができる。
- 簡単な語や基礎的な表現を用いて、身近なこと(好き嫌い、家族、学校生活など)について短い文章を書くことができる。
- 簡単な語や基礎的な表現を用いて、メッセージカード(誕生日カードなど)や身近な事柄についての短いメモなどを書ける。
- 自分の経験について、辞書を用いて、短い文章を書くことができる。
- 趣味や好き嫌いについて複数の文を用いて、簡単な語や基礎的な表現を使って書くことができる。
※CEFR-Jとは、日本の英語教育において、CEFR(欧州共通言語参照枠)をもとに作られた新しい英語能力の到達度指標のことです。
出典:平成27年度「英語教育改善のための英語力調査事業(高等学校)」報告書(文部科学省)
Reading(読むこと)は4技能の中で最高点
4技能の中でReadingが最も平均点の高い結果となりました。とは言え、正答率は4割に満たない39.0点で、英語力はCEFRではA1レベルに相当します。また、英検では3級程度、TOEIC L&Rでは120点から224点程度の英語力に相当します。
なお、CEFR-JにおけるA1レベルのCAN-DOリスト(読むこと)は次の通りです。
- 「駐車禁止」、「飲食禁止」等の日常生活で使われる非常に短い簡単な指示を読み、理解ることができる。
- ファーストフード・レストランの、絵や写真がついたメニューを理解し、選ぶことができる。
- 簡単なポスターや招待状等の日常生活で使われる非常に短い簡単な文章を読み、理解することができる。
- 身近な人からの携帯メールなどによる、旅の思い出などが書かれた非常に短い簡単な近況報告を理解することができる。
- 簡単な語を用いて書かれた、スポーツ・音楽・旅行など個人的な興味のあるトピックに関する文章を、イラストや写真も参考にしながら理解することができる。
- 簡単な語を用いて書かれた、挿絵のある短い物語を理解することができる。
出典:平成27年度「英語教育改善のための英語力調査事業(高等学校)」報告書(文部科学省)
Listening(聞くこと)の能力はReadingよりもやや劣る
Listeningの平均点は100点満点中の36.2点という結果でした。Readingの成績よりもやや低い得点で、CEFRではA1レベル、英検では3級程度、TOEIC L&Rでは120点から224点程度の英語力に相当します。
CEFR-JのA1レベルのCAN-DOリスト(聞くこと)は次の通りです。
- 当人に向かって、ゆっくりはっきりと話されれば、「立て」「座れ」「止まれ」といった短い簡単な指示を理解することができる。
- 日常生活に必要な重要な情報(数字、品物の値段、日付、曜日など)を、ゆっくりはっきりと話されれば、聞きとることができる。
- 趣味やスポーツ、部活動などの身近なトピックに関する短い話を、ゆっくりはっきりと話されれば、理解することができる。
- 日常生活の身近なトピックについての話を、ゆっくりはっきりと話されれば、場所や時間等の具体的な情報を聞きとることができる。
- ゆっくりはっきりと話されれば、自分自身や自分の家族・学校・地域などの身の回りの事柄に関連した句や表現を理解することができる。
- (買い物や外食などで)簡単な用をたすのに必要な指示や説明を、ゆっくりはっきりと話されれば、理解することができる。
出典:平成27年度「英語教育改善のための英語力調査事業(高等学校)」報告書(文部科学省)
Speaking(話すこと)の平均点は31.8点と低い一方で90点以上取得者も
Speakingの平均点は31.8点で、4技能の中では3番目に高い点数でした。CEFRではA1レベル、TOEIC S&Wでは80点から159点程度の英語力に相当します。他の3技能と比較すると、80点台や90点台を取得している人が多いという特徴が見られます。
CEFR-JにおけるA1レベルのCAN-DOリスト(話すこと)は次の通りです。
やりとりについて
- なじみのある定型表現を使って、時間・日にち・場所について質問したり、質問に答えたりすることができる。
- 家族、日課、趣味などの個人的なトピックについて、(必ずしも正確ではないが)なじみのある表現や基礎的な文を使って、質問したり、質問に答えたりすることができる。
- 基本的な語や言い回しを使って日常のやりとり(何ができるかできないかや色についてのやりとりなど),において単純に応答することができる。
- スポーツや食べ物などの好き嫌いなどのとてもなじみのあるトピックに関して,はっきり話されれば,限られたレパートリーを使って,簡単な意見交換をすることができる。
- 趣味、部活動などのなじみのあるトピックに関して、はっきりと話されれば、簡単な質疑応答をすることができる。
- 基本的な語や言い回しを使って,人を誘ったり,誘いを受けたり,断ったりすることができる。
発音について
- 基礎的な語句、定型表現を用いて、限られた個人情報(家族や趣味など)を伝えることができる。
- 基礎的な語句、定型表現を用いて、簡単な情報(時間や日時、場所など)を伝えることができる。
- 前もって発話することを用意した上で、限られた身近なトピックについて、簡単な語や基礎的な句を限られた構文を用い、簡単な意見を言うことができる。
- 前もって発話することを用意した上で、日常生活の物事を、簡単な語や基礎的な句を限られた構文を用い、簡単に描写することができる。
- 前もって発話することを用意した上で、限られた身近なトピックについて、簡単な語や基礎的な句を限られた構文に用い、複数の文で意見を言うことができる。
- 前もって発話することを用意した上で、日常生活に関する簡単な事実を、簡単な語や基礎的な句を限られた構文を用い、複数の文で描写できる。
出典:平成27年度「英語教育改善のための英語力調査事業(高等学校)」報告書(文部科学省)
関連サイト
生徒の英語力向上推進プラン – 文部科学省
平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告 – 文部科学省
4技能統合型授業の実践とともに生徒のスピーキング力の向上を目指す – 文部科学省
CEFR-Jとは – 東京外国語大学 投野由紀夫研究室
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