中学生の英語力、書くことと話すことが弱点
文部科学省が、中学校3年生およそ5万7,000人に対して行った英語のテストによれば、「読む」「聞く」「話す」「書く」のそれぞれの平均点は「話す」が100点中53.0点で最も高く、「聞く」が50.9点、「読む」が46.3点と続き、「書く」が26.8点と最も低い結果になりました。
中学校の英語教育にあたっては、文部科学省が4技能をバランスよく育成することを目標として掲げていますが、この結果では「書く」のバランスが崩れているように見えます。英語担当教員には、「書く」技能アップのための対策が求められているといってもよいでしょう。また、4技能の得点分布からは、最も点数の高かった「話す」にも大きな課題のあることがわかりました。
目次
「話す」は、得意な生徒とそうでない生徒がはっきりしている
下のグラフは、「話す」(Speaking)のテストの得点を10点刻みにして表したものです。「話す」の平均点は53.0点で、他の「読む」「聞く」「書く」よりも高く、一見問題なさそうに見えますが、グラフを見ると他の技能と異なる形であることがわかります。実はここに大きな課題が隠されています。
一般的に、英語をはじめとするさまざまなテストにおける得点分布グラフは、平均点付近を頂点とした山型になることが多く、下の「話す」のような型(高原型とも呼ばれています)になることはあまりありません。これは、話すことが得意な生徒とそうでない生徒がはっきりしていることを示しています。つまり、中学生の「話す」技能の現状は、「話せる生徒は話せるけども、話せない生徒はまったく話せない」ということがわかります。英語担当教員は、オンライン英会話サービスを利用するなどして生徒の話す力のアップを図るとよいでしょう。
出典:平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告(文部科学省)
「書く」は4技能の中で最低点
「書く」の平均得点は26.8点と、他の3技能に比べて大きく差がついています。最も多く占めている得点の範囲が10点未満で、2人に1人は30点未満という結果でした。
学習指導要領では「書く」ことについて次のように明記されています。
- 文字や符号を識別し、語と語の区切りなどに注意して正しく書くこと。
- 語と語のつながりなどに注意して正しく文を書くこと。
- 聞いたり読んだりしたことについてメモをとったり、感想、賛否やその理由を書いたりなどすること。
- 身近な場面における出来事や体験したことなどについて、自分の考えや気持ちなどを書くこと。
- 自分の考えや気持ちなどが読み手に正しく伝わるように、文と文のつながりなどに注意して文章を書くこと。
「書く」ことの力をアップさせるには、学習指導要領に基づいたCAN-DOリストを作成して、生徒一人ひとりの学力を把握して指導にあたることが効率的です。
出典:平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告(文部科学省)
「読む」の得点は50点以下
「読む」の平均得点は46.3点で、半分以下の得点という結果が出ています。得点分布では40点~49点が25.7%と最も多く、20点~29点が17.7%、50点~59点が17.3%と続いています。また、80点以上を獲得した生徒は1クラスに2人程度いることがわかりました。「読む」技能については、全体的な底上げが望まれます。
出典:平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告(文部科学省)
「聞く」は半分程度の理解に留まっている
「聞く」技能については、40点~49点の得点者が34.3%を占め、50点~59点が25.0%を占めた結果となっています。多くの生徒は、「聞く」ことについて半分程度理解しているということがわかります。
「聞く」や「話す」といった会話力については、「そこそこ聞き取れることはできるが、なかなか話すことができない」というのが現状です。
「聞く」ことについて学習指導要領では次のように明記されています。
- 強勢、イントネーション、区切りなど基本的な英語の音声の特徴をとらえ、正しく聞き取ること。
- 自然な口調で話されたり読まれたりする英語を聞いて、情報を正確に聞き取ること。
- 質問や依頼などを聞いて適切に応じること。
- 話し手に聞き返すなどして内容を確認しながら理解すること。
- まとまりのある英語を聞いて、概要や要点を適切に聞き取ること。
出典:平成27年度英語教育改善のための英語力調査事業報告(文部科学省)
関連サイト
現行学習指導要領・生きる力 外国語 – 文部科学省
生徒の英語力向上推進プラン – 文部科学省
英語4技能試験情報サイト – 英語4技能 資格・検定試験懇談会
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