発達障がいを抱える児童生徒のICT教材活用のメリットとデメリット
文部科学省が2013年に策定した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では、児童・生徒のグローバル化に対応した教育環境づくりを進めるために英語教育の抜本的充実を図る旨を提言しています。その計画の1つに、「ICT教材の開発、および整備」が挙げられています。ICT教材とは、コンピュータやネットワークなどの情報処理や情報通信に関連する技術や設備、サービスを用いた、紙媒体にかわる教材のことです。例えば、パソコンやタブレットをインターネットに接続して利用するオンライン英会話サービスなどが挙げられます。
発達障がいを抱える児童、生徒にとっても学校生活においてICT教材を利用することになります。彼らにとってICT教材はどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
目次
ICT教材のメリット
パソコンやタブレットを用いた英語学習は人目を気にすることなく学習できるというメリットがあります。発達障がいのうち、自閉症やアスペルガー症候群を抱える児童、生徒の場合は「話すこと」が苦手なケースが多いためパソコンやタブレットは適しているといえるでしょう。ADHDを抱える児童、生徒は集中力維持の困難なケースが多いため、パソコンやタブレット、書画カメラ(プロジェクター)、デジタルビデオカメラなどを多用することで「飽きない療育」が期待できます。
ICT教材のデメリット
発達障がいを抱える児童、生徒の中には、パソコンやタブレットといった、使い慣れない物を用いた英語学習に違和感や拒否感を抱く場合もあります。特に、LD(学習障がい)を抱える児童、生徒にとっては、パソコンや電子黒板、書画カメラに映し出された文字を読むこと、また、タブレット上で文字を書いたりすることの遅いケースが見られます。彼らにとってはICT教材が英語学習の障壁になる場合もあります。学校以外の放課後等デイサービスや家庭などでパソコンやタブレット(スマートフォンも含む)と触れ合う機会を増やすことで改善を図るとよいでしょう。
ICT機器の活用は小学校が進んでいる
下のグラフは、小学校、中学校、高等学校における外国語活動(英語の授業)におけるICT機器の活用率を表したものです。グラフを見ると、小学校での活用率が最も高いことがわかります。また、上の学校に進むほど活用率が下がっていく傾向にあります。2013年度と2014年度の活用率を比較すると、いずれの学校についても前年度よりも増えていることが分かります。
出典:平成27年度「英語教育実施状況調査」の結果について(文部科学省)
ICT機器の活用頻度を表したものが下のグラフです。小学校では、英語授業の多くの時間でICT機器を活用していることがわかります。中学校でも3割程度が主教材として毎時間ICT機器を活用していると回答しています。高等学校では、ICT機器の活用頻度が落ち、主教材、あるいは補助教材として毎時間活用している割合は全体の4分の1程度に留まった結果となっています。しかし、7割の高等学校が何らかの形でICT機器を活用しています。
出典:平成27年度「英語教育実施状況調査」の結果について(文部科学省)
下のグラフは、小学校や中学校、高等学校で活用しているICT機器の内容を示したものです。最も多く活用しているのがパソコンです。パソコンがあれば、英語4技能である「聞く」「読む」「話す」「書く」のすべての教育が可能です。続いて、電子黒板、書画カメラ、指導者用タブレットなどが活用されています。児童、生徒用のタブレットはあまり普及していませんが、今後、増えることが予想されます。
出典:平成27年度「英語教育実施状況調査」の結果について(文部科学省)
関連サイト
教育振興基本計画 – 文部科学省
グローバル化に対応した英語教育改革実施計画 – 文部科学省
英語教育の在り方に関する有識者会議 – 文部科学省
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