英語への理解度が深まる「受動態構文」まとめ
英語学習における受動態構文の指導でよく見られるのが、受動態と能動態との違いを形式的に説明することです。そして能動態の文章を受動態に書き換えるという、機械的なワークなどを行うという方法です。受動態構文の指導では、「形が違えば、意味も違う」ことを理解させることが大切です。能動態との違いを形式的に説明するのではなく、「なぜ受動態を選択するのか」「そういった状況で選択するのか」ということを説明することが大切です。
→受動態構文をどう指導するか
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受動態構文の理解を深めるためには、どのようなポイントを押さえるべきでしょうか。「PEN英語教師塾」の動画レッスン講義シリーズより、「受動態構文をどう指導するか」を紹介します。
目次
受動態は「作用や影響を受ける側を主語とする」英文法
受動態を指導する上では、まず「態」についての理解が必要です。生徒にとって、聞き慣れない文法用語を用いることは、学習負荷を高めます。態は英語でvoiceを意味します。受動態という言葉を授業で使う時は、まず「態」が話し手の状況や捉え方、語り口であることを説明します。
英語で文章を作る際は、話し手の語り口や状況によって、大きく能動態と受動態に分けられます。
能動態の場合は、「主語が対象に何かをする、影響を及ぼす」という発想から来る文法です。「馬は少年を蹴った」という文では、主語である馬が対象である少年に「蹴る」という作用、影響を及ぼしたことを表しています。
受動態の場合は反対で、作用や影響を受ける側を主語にして表現する方法です。「少年は馬によって蹴られた」というように、影響を受けた側を主語にして文を作ります。
「be動詞+過去分詞」の性質を押さえて受動態の特徴をつかむ
受動態構文は、「be+過去分詞」を使うことで表現されます。過去分詞とは動詞の変化形で、時制を持たない語です。過去分詞は、そのままの状態では、動詞と同じ役割を果たすことができません。そのため過去分詞は、半ば動詞的で半ば形容詞的な二面性を備えた語と言えます。例えば、折れ線を英語でbroken linesと表現します。ここでbrokenは「折った(状態)」を表し、形容詞的な役割を果たします。またhaveを用いた完了形のように、I have broken the computer.といった文では、brokenは動詞的な意味を持ちます。英語の授業では「break-broke-broken」のように、現在形・過去形・過去分詞でまとめて覚えることがあります。しかしこれでは、過去分詞がどういったものなのか、生徒が理解することは困難です。とくに過去分詞を用いる受動態の指導では、過去分詞が持つ半ば動詞的で半ば形容詞的な意味合いを持つことを意識した説明が大切です。
受動態がbe動詞+過去分詞で表現されるのは、過去分詞単体では言葉として成立しないためです。分詞とは言葉の通り、何かから分かれた詞を指し、「be動詞と分かれた詞」として文法上の働きを持ちます。is breakingという文があれば、breakingは現在分詞といいます。そしてis brokenという文でbrokenは過去分詞を指します。
受動態を学ぶ上では、be+過去分詞の形で表現することに加え、その意味や特徴を抑えることが大切です。受動態は「主語が何かをされた状態にある」という文であり、影響を受ける側に視点を置いています。
This computer is broken.
このコンピュータは壊れている
「壊れた状態に在る」という言葉を、broken(壊れた・壊された状態)とis(在る)考えることができます。be動詞は「(何かがどこか(ある状態)に)在る」という意味を持つ言葉です。be動詞を過去形にすると、次のような文になります。
This computer was broken.
このコンピュータは壊れていた
この文には、誰かがコンピュータを壊したということを暗示していますが、壊した人については関心が及んでいません。壊した人に関心がある場合は、次の文のように、行為者を明らかにした表現を使います。
John broke this computer.
ジョンはコンピュータを壊した
This computer was broken by John.
コンピュータはジョンによって壊された
受動態表現では、This computer was broken.のように、コンピュータが壊れた状態にあると表現することがデフォルトとなっています。
My computer was stolen.
コンピュータが(誰かによって)盗まれた
He was offered a bribe.
彼は(誰かによって)賄賂を提供された
しかし、上の英文のように、過去分詞の部分が動作性を強く表すものもあります。過去分詞を用いる受動態表現では、状態的(形容詞的)な意味を持つものと、動作的(動詞的)な意味を持つ文があります。その意味合いの強さは、過去分詞の種類などによって濃淡が変わってきます。
話題の関心が「対象」にある場合は受動態を選択する
受動態表現を用いる場合は、行為者ではなく、影響を受ける対象を話題にして語る時です。受動態をあえて選択するのは、表現者である話し手が、行為者ではなく、対象に話題の関心があるからです。受動態表現は、行為者が表現されないことがほとんどです。具体的には次のようなパターンが、受動態を選択する条件となっています。
(1)行為者を表に出したくない場合
誰がやったかなどを明らかにしたくない状況です。
Bombs were dropped today on a village in a little-known part of the world.
爆弾が今日落とされた、世界でほとんど知られていない地域の村に
(2)行為者に関する情報が不要な場合
行為者の情報を表示する必要がなく、言わなくてもわかる状況です。
English is spoken all over the world.
英語が世界中で話されている
(3)行為者に関する情報が不明な場合
誰がやったかがわからないことを説明する状況です。
My car was stolen last night.
車が昨夜盗まれた
文中の意味合いが変わる受動態表現での前置詞
受動態では、「by+名詞句」を使い、行為者を示す場合もあります。行為者を示した受動態表現を使うのは、動詞的意味合いを強くする場合です。
The computer was broken by John.
コンピュータはジョンによって壊された
行為者のby Johnを示すことで、brokenは、「壊れていた」という形容詞的な意味から、「壊された」という動詞的な意味を強調したものに変わります。by+名詞句を用いることは、話し手が表現したい意味や内容を充足しているか否かで変わります。
用いられる前置詞は、by以外のものもあります。at やwithといった前置詞です。この前置詞の違いは、意味づけの違いを表しています。例えば、「雪で覆われていた」という文を表す際は、withとbyを使って表現することができます。
The mountain was covered with snow.
山は雪で覆われていた
The mountain was covered by snow.
山は雪で覆われていた
be covered with snowは、「雪によって覆われていた」という状態を表す語です。山頂の一部だけ覆われた状態を表す場合も、こちらを使います。一方、be covered by snowは、「雪によってすっぽり覆われた」という、動詞的な意味合いが強くなります。山全体が雪で隠されたという場合に使う表現が当てはまります。また「費用を賄う」「報道する」といった意味を表現する場合は、be covered byのみが使用されることも押さえておきましょう。
例外を押さえて受動態の理解をさらに深める
受動態では対象への作用を表す他動詞を、主語として用います。しかし対象への作用や影響が感じられない他動詞は、受動態として表現することはできません。
She resembles a friend of mine.
彼女は私の友達に似ている
「似ている」を示すresembleは、状態や関係を表す動詞のため、対象であるa friend of mineへ影響や作用が与える動詞ではありません。同様に状態を表す語には、contain(含む)なども挙げられます。
一方、自動詞でも対象に作用や影響を受ける場合は、受動態に置き換えることができます。speak to(話しかける)のような「自動詞+前置詞句」や、look up to(尊敬する)のような「自動詞+福祉+前置詞句」といった形式上の自動詞は、対象に何らかの作用や影響を与える意味合いを持ちます。
A little girl spoke to me.
ある幼い少女が話しかけてきた
I was spoken to by a little girl.
私は幼い少女から話しかけられた
「話しかける」という語には、対象へ作用を感じることができるため、視点を変えて受動態で表現することが可能です。look up toには、「尊敬する」という意味と「~を見上げる」という意味を持ちます。
Leonardo da Vinci was looked up to by most Italians as a genius.
レオナルド・ダ・ヴィンチは天才として多くのイタリア人から尊敬されている
We looked up to the top of Mt. Fuji.
私たちは富士山の山頂を見上げた
「尊敬する」は対象へ影響を与える語のため、視点を変えてmost Italiansを主語に文を作ることもできます。しかし「~見上げる」というのは状況を指すため、Mt. Fujiに影響を与えるわけではありません。同じ自動詞でも、受動態にできるものとできないものがあるのです。
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