英語比較構文講座第2回・比較級の世界を掘り下げる
英語の比較構文には、「同等比較」や「比較級比較」など、複数のタイプがあります。それぞれの構文の用例や使い方をよく知っておくことが大事です。
→比較構文2
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今回は、「PEN英語教師塾」の比較構文講義の2回目として、英語の「比較級の比較構文」の動画を紹介します。動画講師は、慶應義塾大学名誉教授・ココネ言語教育研究所所長の田中茂範先生です。動画の視聴時間は30分弱です。
目次
比較級の比較構文は優劣・大小・強弱を表す
比較級構文は、英語の比較構文の中でも「優劣」「大小」「強弱」を表す表現です。比較級構文では主に2つのものを比較し、比較した両者の優劣、大小、強弱などにおける違いを表します。A is more 〜 than B、A is 〜er than B は、比較する両者のうち、優位である方、大きい方、強い方に焦点を置いた表現です。
Skiing is more difficult/easier than skating.
スキーはスケートよりも難しい/簡単だ
A is less 〜 than B は、劣位である方、小さい方、弱い方に焦点を置いた表現です。
This one is less expensive than that one.
これはあれよりも高くない
形容詞・副詞の原級・比較級・最上級の活用の基本
比較級構文では、形容詞や副詞の比較級を良く使います(比較構文講義第1回で扱った同等比較では、原級を使いました)。形容詞や副詞の比較級は、badやgoodなど非定型的な活用をするものを除けば、原級の末尾にerが付くか、原級の前にmoreを置きます。
fast – faster – fastest
early – earlier – earliest
2音節以上でできている形容詞や副詞は、通常はmoreが付く活用です。
elegant – more elegant – most elegant
beautifully – more beautifully – most beautifully
その他、少し非定型的な活用をする形容詞や副詞には以下のようなものがあります。unhappyには複数の活用があります。
unhappy – unhappier – unhappiest
unhappy – more unhappy – most unhappy
good-looking など、もともと非定型的な活用をする単語を含むものでは、もとの単語の活用法を踏襲して、以下のように活用します。
good-looking – better-looking – best-looking
often やcommonは1音節ですが、er の形で活用するだけでなく、more を付ける活用をすることも可能です。
often – more often (oftener) – most often
common – more common (commoner) – most common
比較級の比較構文の使い方・用法
優勢比較(AはBよりもさらに〜だ)
「AはBよりもさらに〜だ」を表現する比較級の比較構文を優勢比較といいます。優勢比較は、A is/does more〜/〜er than Bで表現します。
Jack is more careful while driving than Mary.
ジャックは運転中、メアリより慎重だ
You should drive more carefully than usual.
日頃よりも慎重に運転しなきゃね
Mary is younger than Jack.
メアリーはジャックよりも若い
Mary works harder than Jack.
メアリーはジャックよりも一生懸命働く
人だけでなく、ものごとを比較することもできます。
Flying is a lot quicker than going by train.
飛行機で行くのは電車で行くのよりずっと速い
That hotel looks more comfortable than this one.
そのホテルはこのホテルより快適そうだ
劣勢比較(AはBよりも〜でない)
少ない方、小さい方、劣った方に関心を置き、それを主語にして表現する比較構文が「劣勢比較」の構文です。
劣勢比較構文の基本的用例
劣勢比較構文は、常に A is/does less〜 than Bという構文になります。2音節以上からなる形容詞を含む文章に使われる傾向があります。
This test is less difficult than the last one.
この試験はこの前のより難しくない(このテストは前の試験より難しさが劣っている)
上の例文と同じ意味を、第1回で扱った同等比較構文で表現する場合、以下のようになります。
This test is not as difficult as the last one.
この試験はこの前ほどは難しくない
優勢比較構文を劣勢比較構文で言い換えてみる
以下では優勢比較構文を劣勢比較構文で言い換えてみます。実際の場面で頻繁に求められる作業ではないですが、劣勢比較構文の is/does less〜 than の形に馴染むためにいくつかやってみましょう。「ジェーンはビルより背が高い(Jane is taller than Bill.)」を劣勢比較で表すと以下のようになります。
Bill is less tall than Jane.
ビルはジェーンよりも背が高くない
「アメリカの労働者はイギリスの労働者より恵まれている(American workers are happier than British workers.)」を劣勢比較で表すと以下のようになります。
British workers are less happy than American workers.
イギリスの労働者はアメリカの労働者よりも恵まれていない
「このドレスはあのドレスよりもエレガントだ(This dress is more elegant than that one.)」を劣勢比較で表すと以下のようになります。
That dress is less elegant than this one.
そのドレスはこのドレスよりもエレガントでない
劣勢比較はどのような場面で使うか
・2音節以上の形容詞
劣勢比較構文になりやすい傾向があるのは、elegant やdifficult のような、2音節以上からなる形容詞が入った文です。Bill is less tall than Jane. という用例よりも、Bill is less elegant than Jane. という用例の方が多いということです。
・lessが数量的な意味合いの時
劣勢比較構文は、Bill has less experience than Jane. のように、less が数量的な意味合いの場合に良く使われます。
・no less than〜(〜ほども多くの、少しも劣ることなく)の時
「〜ほども多くの」「少しも劣ることなく〜」という意味を表す no less than〜 という慣用句は、劣勢比較構文で構成されています。この慣用句は構文としては劣勢比較でありながら、多くの場合肯定的な意味を強調するために使われます。
Bill gave Jane no less than 10,000 dollars.
ビルはジェーンに1万ドルもあげた
We remain the most prosperous, powerful nation on Earth. Our workers are no less productive than when this crisis began. Our minds are no less inventive, our goods and services no less needed than they were last week or last month or last year. Our capacity remains undiminished.
私たちは、地球上で最も繁栄し、強大な国家であり続けています。わが国の勤労者たちは、この(経済)危機が始まった時に比べて、少しも劣ることなく生産的であります。私たちの精神はこれまでに少しも劣ることなく創意に富んでいます。私たちが提供する商品やサービスは、1週間前、1カ月前、あるいは1年前と比べても、少しも劣ることなく必要とされているのです。つまり、私たちの底力は衰えていないのだといえます。― Obama Inaugural Address (2009)
劣勢比較のlessとfewerは「量」か「数」かで使い分ける
数量に関心がある場合の劣勢比較構文では、lessを使う場合とfewerを使う場合があります。lessは「量」に関心がある場合、fewは「数えられる数」に関心がある場合に使われます。
Bob left less than 30 minutes ago.
ボブが出て行って30分も経っていない
Fewer than 20 students participated in the conference.
会議に参加した生徒は20人より少なかった
会議に参加すべき最低人数が20名だとして、それに届かなかった場合はless than で表現することができます。(20名という「基準」は抽象概念であり、数えられないため)
Less than 20 students participated in the conference.
直接優勢(superior to, inferior to)
形容詞自体で直接に優劣を表す比較級の比較構文は、「直接優勢」といいます。superior to〜、inferior to〜 などがあります。
This product is superior to that one.
この商品はあれより優れている
That product is inferior to this one.
あの商品はこれより劣っている
2者の比較(AとBのうちでどちらがより〜だ)
AとBの2者のうちでどちらがより〜だ、という意味の比較構文では、of the twoを使います。
形容詞の場合
Jack is the taller of the two boys.
ジャックは2人のうち背の高い方だ
副詞の場合
Of the two girls, she sings (the) louder.
2人の少女のうち、彼女の歌声の方が大きい
ある基準との比較(年齢、身長などが基準より大きい/小さい)
AとBを比較するのではなく、「ある基準と比較する」比較級の構文もあります。
Jack is older than fifty.
ジャックは50歳より年をとっている
Jack is a little taller than six feet.
ジャックは6フィートよりちょっとだけ背が高い
フォーマル度による比較級の文体の違い
than の後の代名詞は、改まった文体では主格の代名詞を使い、カジュアルな文体では目的格の代名詞を使います。
改まった文体の用例
He is taller than I (am).
カジュアルな文体の用例
He is taller than me.
older thanとmore old thanのニュアンスの違い
older than〜 と more old than〜は、単純に訳せばどちらも「〜よりも年寄りだ」となり、同じ意味のように見えます。しかし、両者はそれぞれわずかに違ったニュアンスを持っています。ある高齢の女性のことを描写する場合に、以下のように比較級で複数の表現ができます。
1. She is more old than middle-aged.
2. She is older than middle-aged.
1は、「彼女は中年というよりもっと年寄りだ」というニュアンスです。「中年と呼ぶよりも年寄りと呼んだ方が適切であろう程度、彼女は年をとっている」といった感じだと言えます。2は、「彼女は中年という基準よりは年をとっている」というニュアンスになります。例えば、「中年」という基準の上限が60歳未満の人を指すとした場合、彼女は60歳以上の年齢だろうということになります。
違いの強弱を表す副詞の使い方
比較級構文には、比較対象との違いの程度の強弱(ずっと、少し、さらに など)を表現する副詞がいろいろあります。違いの程度を表す副詞にはmuch、a lot、far、a little、a bit、still、evenなどが挙げられます。
Jack is much more careful while driving than Mary.
ジャックは運転中、メアリーよりもずっと注意深い
違いの程度を表す数値・倍数の使い方
違いの程度を数値や倍数で表す場合の表現を押さえておきましょう。
数値を使う用例
Jack is taller than Mary by 10 centimeters.
ジャックは10センチ分メアリより背が高い
倍数を使う用例
This car is twice (two times) faster than that one.
この車はあの車より2倍速く走る
主語や目的語が省略されたように見える比較級の例文について
比較級の文には、主語や目的語が省略されたかのように見えるものがあります。これらは実は、主語や目的語を補うことはできません。仕組みを文法的に説明するのは難しいので、ある種の決まり文句として覚えておきましょう。
More people came to our party than were invited.
招待されたより多くの人がパーティーに来た
The professor dealt with more issues than were described in his syllabus.
教授はシラバスに書かれている以上の論点を扱った
良く使う比較級の慣用句
比較級比較構文の慣用句はたくさんあり、多様な場面をカバーすることができます。肯定的なニュアンスであったり否定的なニュアンスであったりと、やや読み取りにくい用例もあるので一度押さえておきましょう。
no less than〜(少なくとも〜の)
no less than〜 で「少なくとも〜の、〜を下らない」という意味で、ものの数や量の多さを強調します。
She kissed no less than five different guys at the party last night.
彼女は昨夜のパーティで少なくとも5人もの別の男性にキスをした
The price of the car will be no less than 50,000 dollars.
その車の価格は5万ドルを下らない
no better than〜(〜と同様で)
no better than〜 は「〜と同様で、まるで〜だ」という意味を表し、否定的な文脈で使われます。
I’m no better than the next person.
他の人と比べて特に良いところなんてないよ
He is no better than any other husband.
彼は他の旦那と同じだよ
A is no more 〜 than B is …(AはBが…でないのと同様に〜でない)
A is no more 〜 than B の直訳は「AはBが…であるよりも〜であることはない」です。日本語らしく読むと「AはBが…でないのと同様に〜でない」という意味になります。ややわかりにくい用例なので注意が必要です。特に、than以降、肯定表現であるにも関わらず否定的な意味で読む必要がある、というところがつまずきやすいポイントです。
She is no more happy about the situation than I am.
彼女はその状況について私と同様に満足していない
He is no more a coward than you are a saint.
君が聖者ではないように、彼は臆病者ではない
A is little more than B(AはただのBにすぎない)
A is little more than B の直訳は「AはBよりもほんの少し上である」です。日本語らしく言えば「AはただのBにすぎない」「AはBぐらいでしかない」という意味で、否定的文脈で使われます。
I’m called an administrative assistant, but I’m actually little more than a secretary.
経営アシスタントなんて呼ばれているけど、実際はただの秘書にすぎないの
〜 more than any other A(他のどんなAよりも〜だ)
〜 more than any other A で「他のどんなAよりも〜だ」という意味となり、〜の部分の肯定的意味を強調します。
I like spring more than any other season.
他のどんな季節よりも春が好きだ
I love my boyfriend more than any other guy alive.
私はこの世のどんな男よりも自分の彼氏を愛しています
all the better(なおさら良い)
ある否定的な状態を指してall the better というと、「その方がなおさら良い」という意味になります。
You are all the better for your weakness.
君はその弱さゆえになおさら良い
I love her all the better for her stubbornness.
彼女の頑固なところがなおさら好きだ
A: There’s nothing good on TV tonight.
今夜は何も良いテレビ番組がないな
B: All the better. I need time to write some letters.
それはなおさら良い。ちょっと手紙を書くのに時間がいるんだ
not A much less B(Aでさえ無理なのに、ましてBなんて無理だ)
not A much less B で、「Aでさえ無理なのに、まして/なおさら Bなんて無理だ」という意味になります。
I can’t even afford to go to Hawaii, much less Madrid.
私はハワイにさえ行く余裕がない。ましてマドリッドなんて無理だ
I wouldn’t even talk to him, much less invite him to my house.
彼と話したことすらないのに、うちに招待するなんてとんでもない
Nothing is more 〜 than A(Aほど〜なものはない)
Nothing is more 〜 than A で、「Aほど〜なものはない」です。格言や人生訓のような内容の用例が良く見られます。
Nothing is more important than health.
健康ほど大事なものはない(ことわざ)
Nothing is more important when living in a foreign country than flexibility.
外国生活をする上では、柔軟性ほど大切なものはない
The more A, the more B(AすればするほどBする)
The more A, the more B で、「AすればするほどBする」という意味になります。Bの部分の意味を強調する文脈で使われます。
The more I see him, the more I realize how much I love him.
彼に会えば会うほど、私が彼のことをどんなに愛しているかが良くわかる
The younger, the better, as far as foreign language learning is concerned.
外国語学習となると若い方がそれだけ有利だ
非典型的な形の比較級の比較構文
典型的な比較級の比較構文の形ではないものの、比較級の比較構文に分類できる用例もあります。
I prefer green tea to coffee.
コーヒーよりお茶の方が好きです
上の例ではthanは使われていませんが、明らかにgreen tea と coffee の比較を行っています。
Rather than stay here, let’s go for a walk.
ここにこのままいるより、散歩しよう
この例でもmore や better などは使われていませんが、stay here と go for a walk を比較した文章となっています。
関連サイト
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