2017年の英語教育関連のニュースまとめ
2017年は、大学入試センター試験に替わる大学入試共通テストの実施方針の発表や、小学校、中学校の新しい学習指導要領が公示されるなど、英語教育に関連するさまざまなニュースがありました。2017年は英語教育の分野でどのようなことが起きたのか振り返ってみます。
目次
大学入学共通テストの概要が発表される
文部科学省は7月13日、2020年度から大学入試センター試験に取って代わる「大学入学共通テスト」の実施方針を発表しました。大学入学共通テストは、大学入学希望者を対象に、高等学校段階における基礎的な学習の達成度合いを判定する目的で実施され、知識や技能に加えて思考力や判断力、表現力なども評価されます。2017年時点の中学3年生が大学入学共通テストを受験することになります。
大学入学共通テストの英語試験では、民間の試験を活用して、読む、聞く、書く、話すの4技能を評価します。2017年12月現在、どの民間試験が採用されるかは決まっていませんが、試験内容や実施体制が入試に活用する上で必要な水準や要件を満たす民間試験が採用される予定です。文部科学省では、英検やTOEFLなどを民間試験としての採用候補に挙げています。
英語の試験は、2023年度までは民間試験への移行期間として、各大学の判断で民間試験と大学入学共通テストのいずれか、または双方を選択できるようになっています。2024年度以降は、民間試験に統一されます。民間試験を選択した大学を受験する場合、高校3年生の4月から12月の間に2回まで民間試験を受検して、試験結果を志望大学に通知します。
出典:「大学入学共通テスト」について(文部科学省)
小学校、中学校の新学習指導要領が公示される
3月31日に、小学校、中学校の新学習指導要領が公示されました。小学校は2019年までを移行期間として、2020年から全面実施されます。中学校は小学校よりも移行期間を1年長く取り、2021年から全面実施されます。
学習指導要領の改訂により、小学校では外国語教育の充実が図られました。小学校中学年(3~4年生)で「外国語活動」、小学校高学年(5~6年生)で「外国語科」が導入されます。文部科学省では、外国語能力の向上を目標とするだけでなく、国語教育との連携を図り、日本語の特徴や言語の豊かさに気づく指導も行っていくとしています。
出典:学習指導要領「生きる力」(文部科学省)
児童、生徒の英語力
小学校6年生の約3割が英語嫌いという結果に
小学校での英語教育は、2011年度から小学校5年生と6年生を対象に行われてきました。国立教育政策研究所が、小学生、および中学生を対象に英語授業への意識調査を行ったところ、小学生は、外国語に慣れ親しみ、コミュニケーションに積極的になってきていることが分かりました。一方で、小学校6年生のうち約3割が、英語は嫌いだと回答し、小学校全体では約1割程度の児童が英語や外国語活動の授業に苦手意識を持っているという結果も出ています。
中学生については、小学校で学んだ英語が中学校でうまく活かしきれていないとの調査報告が出されています。中学生へのアンケート調査では、英語の「読む」「書く」を小学生の英語の授業でもっと学習しておきたかったと回答する生徒が多く見受けられました。小学校では、主に「話す」「聞く」を中心に授業が進められますが、中学校からは「読む」「書く」に重きを置いた授業になるため、小学校でも「読む」と「書く」を勉強しておきたかったと感じたのかもしれません。
出典:「小学校英語教育に関する調査研究報告書」の概要(国立教育政策研究所)
中学校3年生の36%が英検3級程度以上の英語力
文部科学省は4月に全国の中学3年生を対象にした英語力調査の結果を公表しました。文部科学省は、中学校卒業時に英検3級程度以上(CEFR A1上位レベルに相当)の英語力がある生徒の割合を50%とする目標を掲げています。結果は36.1%と目標には達しませんでしたが、前年度よりもよい結果で、文部科学省では「聞いたり読んだりしたことの内容や、それについての考えを書く体験を多くしてきた子供たちが力を付けている」と分析しています。ちなみに、技能ごとの達成度は、「読む」は25.3%、「話す」は31.2%、「聞く」は24.8%、「書く」は50.8%という結果でした。
出典:平成28年度「英語教育改善のための英語力調査事業(中学校)」報告書(文部科学省)
高等学校3年生の35%が英検準2級以上を達成
文部科学省は4月、全国の高校3年生を対象とした英語力調査の結果を公表しました。結果として、高校3年生の約35%が英検準2級以上を取得しているまたは英検準2級以上相当の英語力を有していることが分かりました。加えて、普通科に属している生徒は約50%、英語科に属している生徒は約90%が英検準2級程度相当の英語力を有していることが判明しました。
授業における生徒の言語活動時間の調査によると、47.2%の高等学校が英語授業の半分以上の時間を、言語活動の時間にあてているようです。言語活動時間の割合は、2015年度と比べて全ての英語科目で増加していました。最も上昇したのはコミュニケーション英語Ⅰで、5.9ポイント増加しました。
出典:平成28年度 英語教育実施状況調査(高等学校)の結果 (文部科学省)
2017年英語教員に関する動向
英語力「英検準1級程度」の中学校教員は全国平均32%に
中学校の英語教員に求める英語力について、文部科学省は英検準1級程度以上(TOEIC730点以上相当)と設定しており、今年度までに5割以上の教員の資格取得を目標にしています。2016年度の調査では、教員の英検準1級位程度以上の資格取得率は、全国平均で32%という結果になりました。
都道府県の自治体は、教員の英語力向上につながる取り組みに力を入れています。国内研修を実施している都道府県・指定都市教育委員会は67教育委員会中61教育委員会で、延べ6700人が参加しました。国内研修に比べれば少ないですが、海外研修を実施している都道府県もあります。海外研修を実施している都道府県・指定都市教育委員会は67教育委員会中12教育委員会で、延べ100人が参加しました。一方で、多忙のためになかなか研修が受けられないといった声も上がっています。
出典:平成28年度 英語教育実施状況調査(中学校)の結果(文部科学省)
英語力「英検準1級程度」の高等学校教員は全国平均62%に
文部科学省は、高校教員の英検準1級レベルの取得率75%を目標にしています。2016年度は62.2%が英検準1級レベルであり、前年度比8.6%増加しました。この調子で伸びていけば、数年のうちに75%取得を達成できるかもしれません。
出典:平成28年度 英語教育実施状況調査(高等学校)の結果 (文部科学省)
2018年の展望
2018年春から小学3年生、4年生の英語授業がスタート
2018年度は、小学生の英語教育がさらに加速していくことが予想されます。小学3年生と4年生は「外国語活動」という名前で英語の授業が週に2コマ程度導入されます。外国語活動では、英語4技能のうち「聞く」「話す」を中心に授業が進められていきます。小学校5年生と小学校6年生は、英語が週3コマ程度の必修科目となり、成績も付きます。英語の必修化により、小学校3年生から小学校6年生の授業時間は年35コマ増えることになります。増加分は、土曜日や夏休みに授業をしたり、授業時間を短縮して朝の時間にできるようにしたりするという案も出ています。
英語の4技能重視の傾向から、今まで受験ではあまり問われなかった「英会話」が注目されています。特に小学校では「聞く」「話す」が中心のため、英会話教室やオンライン英会話などが注目を浴びることが予想されます。2017年には、発達障がいを持つ子ども向けのオンライン英会話サービスも出てきました。
関連サイトサイト
教育課程研究センター – 国立教育政策研究所
試験情報一覧 – 独立行政法人大学入試センター
英語4技能試験情報サイト – 英語4技能 資格・検定試験懇談会
大学入学共通テスト実施方針 – 文部科学省
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