中学生の英語力が伸び悩んでいる理由は？

文部科学省が2017年4月に発表した英語教育実施状況調査によれば、英検3級相当の英語力を持つ中学3年生は、全体の36.1％でした。前年度と比較すると0.5ポイントの低下で、中学生の英語力が伸び悩んでいることがわかります。中学生の英語に対する意識調査から、英語力の低下した背景を探ってみました。

英語力の伸び悩みは積極的意欲の低下が原因かもしれない

下のグラフは、どの程度まで英語を身に付けたいかという質問に対する回答を示したものです。最も多かった回答は、「高校入試に対応できる力を付けたい」（38.1％）でした。中学生は、高校に入学するために英語の勉強をするという意識が高いと考えられます。その意識は、前年度よりも高くなっています。「とりあえず高校入試に合格すればよい」という考え方なのでしょうか。自らが英語学習に積極的にアプローチするといった意識が低下している傾向にあり、それが英語力の低下にもつながっているのかもしれません。

その次に多かったのは「海外旅行などをするときに、英語で日常的な会話をし、コミュニケーションを楽しめるようになりたい」（30.4％）でした。

出典：平成28年度英語教育改善のための英語力調査報告書（文部科学省）

ちなみに、高校生に同様の質問をしたところ、最も多かった回答は「海外旅行などをするときに、英語で日常的な会話をし、コミュニケーションを楽しめるようになりたい」（35.6％）で、次に「特に学校の儒号以外での利用を考えていない」（25.0％）、「大学入試に対応できる力を付けたい」（19.6％）と続いています。

半数以上が「英語は好き」と回答

下のグラフは、英語が好きかどうかの質問に対する回答を示したものです。半数以上の生徒がそう思う（好き）、どちらかといえばそう思う（どちらかといえば好き）と回答しています。前年との比較を見てみると、好きと回答した生徒の割合が56.1％から54.0％へ減少しています。英語学習への興味が薄れてきたのかどうかが懸念されます。

出典：平成28年度英語教育改善のための英語力調査報告書（文部科学省）

英語力の高い生徒は「英語が好き」と回答

英語は好き？という質問に対する回答を、英語の学力で分けて示したのが下のグラフです。A1上位は、CEFRのA1の上位で、英検3級～4級に相当します。A1下位は英検4級～5級に相当します。グラフを見ると、学力の高い生徒のほうが低い生徒よりも英語は好きと回答しています。A1下位の生徒は、約60％が好きとは思わない（どちらかといえばそう思わない）と回答しています。

出典：平成28年度英語教育改善のための英語力調査報告書（文部科学省）

スピーキングやライティングの活動を増やして英語力アップを図る

下のグラフは、英語の学習内容別に見た活動状況です。英語4技能に分けてみると、「聞くこと」（英語を聞いて概要や要点をとらえる活動をしていたと思う？）については4人に3人がそう思う（どちらかといえばそう思うを含む）と回答しています。「読むこと」（英語を読んで概要や要点をとらえる活動をしていたと思う？）についても4人に3人がそう思うと回答しています。

一方、「話すこと」の活動の「即興で話す」（52.0％）、「スピーチやプレゼンテーション」（61.0％）、「問答や意見を述べる」（68.7％）はリスニングやリーディングよりも低い結果となりました。また、「書くこと」（英語で書いてまとめたり自分の考えを英語で書いたりしていたと思う？）についても63.4％とやや低い結果となっています。スピーキングやライティングの活動を増やすなどして、生徒の英語力アップを図っていくとよいでしょう。