英語をちゃんと教えられる小学校教員は1%もいない
文部科学省が2013年に発表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」によれば、英語教育は、中学校、高等学校はもとより、小学校においても指導体制を強化していくことが明言されています。その一方で、小学校の英語教育では相応の英語力を有する小学校教員の割合が全体の1%にも達していないことがわかりました。
小学校の英語授業は、学習指導要領によれば「話す」「聞く」技能を中心に進められることになっています。このような状況を踏まえて、最近では安価で簡単に利用できるオンライン英会話サービスを導入して対応を図る小学校も出てきています。
目次
相応の英語力を有する小学校教員の割合、トップは群馬県
下のグラフは、各都道府県の教育委員会が作成する英語教育改善プランに掲載されている、相応の英語力を有する小学校教員の割合を都道府県別に示したものです。グラフに掲載されていない都道府県は未調査で、調査が行われたのは12県にとどまっています。
この中で、最も相応の英語力を有する小学校教員の割合が多かったのは群馬県の1.7%で、神奈川県1.4%、岐阜県1.1%と続きます。「相応の英語力」の基準は文部科学省が設定しているものではなく、各都道府県が独自に設定しています。そのため、都道府県間の英語力を比較することは困難ですが、「相応の英語力」を有する小学校教員の割合は低いということがわかりました。なお、小学校教員の英語力を調査している都道府県の少なさには疑問が残るところで、都道府県の教育委員会は、英語教育改善プランに従った小学校教員の英語力アップが急がれます。
出典:英語教育改善プラン(文部科学省)
中学校英語免許を所有している小学校教員の割合は4.7%
下のグラフは、小学校教員のうち、中学校の英語の免許を持っている教員の割合、および男女割合を示したものです。免許を持っている教員は、2004年は3.7%だったのが、2013年には4.7%と1.0%増えています。男女別で見ると、女性教員のほうが男性教員よりも免許を持っている割合が高いことがわかります。
中学校の英語免許を所有している小学校教員が増えれば児童の英語力アップが期待できます。しかし、中学校の英語教員の一部には比較的英語力の低い教員もいるため、小学校教員には、英検やTOEICといった外部英語資格試験の一定以上の取得が望まれます。(参照:「TOEIC280点、中学校英語教師の英語力の低さが浮き彫りに」)
出典:学校教員統計調査(文部科学省)
下のグラフは、国立小学校、公立小学校、私立小学校の区分別に中学校の英語の免許を持っている小学校教員の割合を示したものです。国立、公立、私立とも年々増えていることがわかります。また、区分別では私立小学校の教員が最も割合が高い結果となっています。
出典:学校教員統計調査(文部科学省)
静岡県が小学校英語指導資格を独自導入
静岡県では、2017年度から小学校教員のための「静岡県小学校英語指導資格:LETS(レッツ)」の導入を予定しています。LETSは、License for Elementary English Teaching in Shizuokaの略で、LETSの要件を満たした教員を計画的に配置して県内小学生児童の英語力アップを図ります。また、教員養成課程を持つ静岡県内の大学へ英語指導力のある学生の養成を要請したり、教員採用選考試験において、中学校教諭免許状(英語)取得者や一定の英語資格を取得している場合は加点したりするなど、小学校英語教育の推進を図っています。
小学校英語教育推進体制整備事業(通称:LETS事業)
教員養成 | 教員養成課程を持つ県内大学へ、英語指導力のある学生の養成を要請 |
教員採用 | 教員採用選考試験の工夫 ●小学校教員受験者 小学校教諭免許状取得(取得見込み)の者が、中学校教諭免許状(英語)取得(取得見込み)または、一定度以上の英語資格等を取得している場合、加点する。 ●中学校教員受験者 中学校教諭免許状取得(取得見込み)の者が、一定度以上の英語資格等を取得している場合、加点する。 |
現職研修 | ●中学校英語免許取得者の増員計画 ●外国語活動に関する研修の充実 |
教員配置 | 「静岡県小学校英語指導資格(LETS)」の要件を満たした教員を計画的に配置 |
出典:Eジャーナルしずおか(静岡県教育委員会)
関連サイト
グローバル化に対応した英語教育改革実施計画 – 文部科学省
生徒の英語力向上推進プラン – 文部科学省
小学校外国語活動における評価方法等の工夫のための参考資料 – 国立教育政策研究所
小学校外国語活動の充実のために~指導力の向上を目指す校内研修の実施~ – 北海道教育委員会
静岡県教育委員会
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