中学校の新学習指導要領に対応した、英語のCAN-DOリストの作り方
文部科学省は2013年に、中学校、高等学校の外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定のための手引きを作成しました。文部科学省の調査によると、2017年度の時点で中学校のおよそ86%がCAN-DOリスト形式による学習目標の設定をしていることがわかりました。
2017年3月に中学校の新しい学習指導要領が公布されました。中学校では、新学習指導要領に基づく授業が2021年度から全面実施されます。新学習指導要領に対応したCAN-DOリストを作成する場合に留意したい点を、新学習指導要領の要点を踏まえながら解説します。
目次
中学校新学習指導要領の英語教育の新たな目標と内容
中学校新学習指導要領で示された新たな「目標」
新学習指導要領では、外国語教育の目標として現行の学習指導要領にはなかった3つの点を掲げています。
- 外国語の知識を実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けさせる。
- 日常的、社会的な話題について外国語で理解し表現できる力を養う。
- 外国語の背景にある文化を理解し、聞き手、読み手、話し手、書き手に配慮しながら、主体的に外国語でコミュニケーションしようとする態度を養う。
英語教育の目標として、「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の4技能5領域に分け、それぞれの到達目標を定めています。4技能5領域のそれぞれの到達目標については、「関心のある事柄について~できる」「日常的な話題について~できる」「社会的な話題について~できる」などとし、段階的な目標設定をしています。その中で特筆する点は、「話すこと(やり取り)」と、「話すこと(発表)」の2つの領域において、「簡単な語句や文について即興で伝え合うことができるようにする」として、即興でのコミュニケーションが示されたことです。
中学校新学習指導要領で示される新たな「内容」
新学習指導要領の「聞くこと」「話すこと」「書くこと」では、新たに次のような活動が示されました。
- 「聞くこと」については「日常的な話題」「店や公共交通機関のアナウンス」「友達からのメッセージ」「友達や家族、学校生活などの日常的、社会的話題」を聞き取る活動
- 「読むこと」については「簡単な表現が用いられている広告、パンフレット、予定表、手紙、電子メール」「日常的な話題に関する説明、エッセイ、物語」を読み取る活動
- 「書くことに」については「自分の近況を伝える手紙、電子メール」「日常的活動について説明する文章」「社会的な話題についての自分の考え」を書く活動
新学習指導要領の「話すこと」では、次の活動が新たに示されて、英語授業ではこれらの活動を取り入れることが求められています。
話すこと(やり取り)
- 互いに会話を継続する活動
- 自分で作成したメモを活用しながら相手と口頭で伝え合う活動
- 相手からの質問に対して適切に応答したり自ら質問し返したりする活動
話すこと(発表)
- その場で考えを整理して口頭で説明する活動
- 自分で作成したメモを活用しながら口頭で要約したり、自分の考えや気持ちなどを話したりする活動
新学習指導要領に対応したCAN-DOリスト
中学校は、学習到達目標をCAN-DOリストとして提示する
CAN-DOリストとは、学習指導要領に基づき各中学校が生徒に求められる英語力を達成できる目標(学習到達目標)を「言語を用いて何ができるか」という観点から、そのリストを「〜できる」という表現で具体的に提示するものです。CAN-DOリストは学習指導要領に基づき、各中学校が生徒が達成できる目標として設定します。新学習指導要領に対応したCAN-DOリストは、どのように作成すればよいでしょうか。
英語教育の学習到達目標を定める
「卒業時の学習到達目標」は、新学習指導要領の外国語の目標で示した内容(「1.」~「3.」)とします。「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」の4技能5領域については、学年ごとの到達目標を記します。学年ごとの目標は、「関心のある事柄について~できる」「日常的な話題について~できる」「社会的な話題について~できる」などの形式とし、「~できる」の内容が学年を追ってレベルアップするようにします。
「聞くこと」「読むこと」「書くこと」についての目標を定める
新学習指導要領で新たに示された活動(「4.」~「6.」)について、いかに英語教育の授業計画に取り入れるかを検討の上、CAN-DOリストへの記載の判断をし、記載する場合はどの学年にどのような表現で記載するか決定します。
例えば、「公共交通機関のアナウンスを聞き取る活動」においては、実際に駅に出向いたり電車に乗ったりしてアナウンスを聞き取る活動を社会科授業や学校行事との連携で検討します。「電子メールを読む活動及び書く活動」では、パソコンの用意、メールをやり取する対象の選定等の準備が必要です。生徒のパソコンの基本的な操作が必要なため、技術科授業と関連させることも必要です。授業計画を見通した上で、それぞれの活動について目標を設定しCAN-DOリストへの記載の判断をします。
「話すこと」についての目標を定める
「話すこと」については、上記で示した「7.」~「11.」の内容を、CAN-DOリストの該当領域の各学年の欄に取り込みますが、その前提として「話すこと」の活動を中学校の英語授業のどの段階でどのように行うのか、十分に計画を立てることが大切です。先生1人で活動するのが難しい場合には、ALT(外国語指導助手)と連携を図って進めていくとよいでしょう。
「話すこと(やり取り)」の活動では、英語を使う環境を求めて校外に出る必要があるかもしれません。新学習指導要領では、「言語活動で扱う題材は、生徒の興味・関心に合ったものとし、他の教科で学習したことを活用したり、学校行事で扱う内容と関連付けたりするなどの工夫をすること」とあります。例えば、近隣に外国人観光客が多い環境にいる場合は、社会科の学習を兼ねて見学に行き、英語話者に積極的に話しかけ、何往復かの会話をさせるという経験を持たせることも大切です。
新学習指導要領で示された新たな活動(「4.」~「11.」)をいかに授業に取り入れるかについては、ALTの手配や他教科との協力、学校行事との調整等の十分な準備と計画が必要になるでしょう。特に「話すこと(やり取り)」と「話すこと(発表)」については、どのように進めていくか、十分な計画を立てることが大切です。
数値目標設定に対する考え方
各中学校において、先生側が英語教育の学習到達目標について統一した基準を認識し共通理解を深めるため、「聞くこと」、「読むこと」、「書くこと」については、それぞれ「~語程度の話題について~できる」「~語程度の文章の要点を捉えることができる」「~語程度で書くことができる」というように具体的な数値目標を立てると良いでしょう。「話すこと」についても「会話を~往復程度で述べ合うことができる」「会話の際に~文程度で話すことができる」のように具体的な数値目標を立てます。数値目標を設定する場合は、目標値が学年を追ってレベルアップするようにします。
数値目標の設定は、教育委員会の示す標準値や、従来のCAN-DOリストに記載されている数値を参考に設定します。また、各学年で使用している教科書等の教材で、該当の領域を扱っている文章が何語程度で構成されているかを確認したり、公立高等学校入学試験問題にどの程度の語彙の英文が出題されているかを確認したりして設定するのもよいでしょう。新学習指導要領で示された新たな活動(「4.」~「11.」)が、それぞれ「何語程度」「何往復程度」「何文字程度」になるのか想定することで現実的な目標値が判明し、教科書以外の教材を選ぶ際も、どの程度の英語文を含むものが適切か判断できるようになります。
CAN-DOリストに数値目標を設定するか否かにかかわらず、「聞くこと」「読むこと」「書くこと」についての教材や高等学校入学試験問題がそれぞれ何語程度で構成されているのか、また「話すこと」の教材では「やり取り」が何往復程度か、「発表」が何文程度となるのかを意識することが大切です。
英語教育指導計画作成上の留意点
新学習指導要領には、「生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること」という記載があります。「生徒の主体的・対話的で深い学び」とは、2012年8月の中央教育審議会で提言された、アクティブラーニングのことを指しています。中学校3年生のCAN-DOリストを作成する時は、アクティブラーニングを取り入れてみましょう。
また、新学習指導要領には、「小学校や高等学校における指導との接続に留意しながら」と記載があります。CAN-DOリストの作成においては、近隣の小学校と英語教育について十分に情報交換をして、スムーズな中学校の英語教育への導入を図りたいものです。
関連サイト
中学校英語のCAN-DOリスト、新・学習指導要領でどう変わる – weblio英会話(学校向け)
各中・高等学校の外国語教育における「CAN-DOリスト」の形での学習到達目標設定のための手引き – 文部科学省
平成29年度英語教育実施調査の結果について – 文部科学省
中学校学習指導要領解説外国語編 – 文部科学省
「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の実現に向けた授業評価シート – 千葉県教育委員会
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