海外出張、海外赴任で困らないためにはTOEIC730点以上が必要
海外へ進出している企業にとって、現地社員の英語力不足は大きな課題です。TOEICを運営する一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会によれば、企業が社員に求めるTOEICスコアは、海外出張者に対しては570点~780点、海外赴任者に対しては605点~785点という結果が出ています。TOEICの日本人の平均スコアが512点なので、平均スコア以上の英語力を求めていることがわかります。また、日本企業の主な海外進出先となっている国の人々の英語力は、日本よりも高い傾向にあることがわかっています。
実用レベルの英語力習得には「最低3000時間~最大5000時間」の学習時間が必要という研究報告が出されるなど、習得まで長い年月を要します(参照:「英語能力を実用レベルで習得するには最低3000時間は必要」)。海外進出はまだ先、と考えている企業も早めに英語対策を講じておいたほうがよいでしょう。
TOEIC730点取れば「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる」
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会ではTOEICのスコアを5段階に分け、それぞれにCAN-DOリストを示しています。
- A.860点以上
Non-nativeとして十分なコミュニケーションができる。
自己の経験の範囲内では、専門外の分野の話題に対しても十分な理解とふさわしい表現ができる。Native speakerの域には一歩隔たりがあるとはいえ、語彙・文法・構文のいずれをも正確に把握し、流暢に駆使する力を持っている。 - B.730点~859点
どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。
通常会話は完全に理解でき、応答もはやい。話題が特定分野にわたっても、対応できる力を持っている。業務上も大きな支障はない。正確さと流暢さに個人差があり、文法・構文上の誤りも見受けられる場合もあるが、意思疎通を妨げるほどではない。 - C.470点~729点
日常生活の必要を充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。
通常会話であれば、要点を理解し、応答にも支障はない。複雑な場面における適格な対応や意思疎通になると、巧拙の差が見られる。基本的な文法・構文は身についており、表現力の不足はあっても、ともかく自己の意志を伝える語彙を備えている。 - D.220点~469点
通常会話で最低限のコミュニケーションができる。
ゆっくり話してもらうか、繰り返しや言い換えをしてもらえば、簡単な会話は理解できる。身近な話題であれば、応答も可能である。語彙・文法・構文とも不十分なところは多いが、相手がNon-nativeに特別な配慮をしてくれる場合には、意思疎通を図ることができる。 - E.220点未満
コミュニケーションができるまでに至っていない。
単純な会話で相手にゆっくり話してもらっても、部分的にしか理解できない。断片的に単語を並べる程度で、実践的な意思疎通の役には立たない。
日本人の平均スコアは512点なので、上記のCに該当します。一方、企業が社員に求めるTOEICスコアは海外出張者に対しては570点~780点、海外赴任者に対しては605点~785点ですから、B、あるいはCに書かれているスキルを求めていることになります。しかし、Cのスキルでは「限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる」、「複雑な場面における適格な対応や意思疎通になると、巧拙の差が見られる」、「表現力の不足はあっても、ともかく自己の意志を伝える語彙を備えている」のようにネガティブな要素が多く、商談など重要なビジネスシーンにおいてうまくコミュニケーションの取れないケースの生じる可能性があります。そのため、海外出張者、海外赴任者には、Bに記載されているスキル、つまりTOEICスコア730点以上が求められるといってよいでしょう。
中国人のTOEICスコアは日本人よりも200点高い
下の表は、海外に拠点を持つ日本企業の現地法人数を国・地域別で多い順に示したものです。併せて、各国のTOEICやBEIのスコアを付しています。TOEICのスコアはその国の受験者の平均得点、BEIのスコアはその国のビジネス英会話力の平均スコアを表しています。
日本企業の現地法人数が最も多い国・地域は中国の6,432社で、2位のアメリカ(2,955社)を大きく引き離しています。3位はタイ(2,020社)、4位は香港(1,172社)、5位はシンガポール(1,037社)という結果でした。
中国人のTOEIC平均スコアは716点で、CAN-DOリストによれば「日常生活の必要を充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。」英語力を備えていることになります。日本人の512点も同様の評価)もちなみに、TOEICスコア 730点以上であれば「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。」英語力があり、860点以上であれば「Non-nativeとして十分なコミュニケーションができる。」英語力を備えています。また、BEIのスコアは5.03で、評価は「ビジネスプレゼンテーションを理解し、問題や解決策を説明したりできるが、議論や積極的な役割を果たすことはできない。」という内容です。
表中において、母語・公用語が英語の国は、アメリカ、香港、シンガポール、マレーシア、イギリス、フィリピン、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの9か国です。これらの国においては問題なく英語でのコミュニケーションが可能です。TOEICやBEIのスコアから、英語でのコミュニケーションにやや問題がありそうな国は、インドネシア、ベトナム、メキシコ、ブラジル、ロシアなどが挙げられます。
出典:
第45回海外事業活動基本調査概要(経済産業省)
日本人の平均スコアは512点、48カ国中40位にとどまる(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)
Heightened Urgency for Business English in an Increasingly Global Workforce(GlobalEnglish)
BEIのスコア別CAN-DOリスト(参考)
- ADVANCED(9~10)
ネイティブの英語話者のように、コミュニケーションや共同作業ができる。 - INTERMEDIATE(7~8)
議論に積極的に参加し、比較的複雑な作業が実行できる。 - BASIC(4~6)
ビジネスプレゼンテーションを理解し、問題や解決策を説明したりできるが、議論や積極的な役割を果たすことはできない。 - BEGINNER(1~3)
簡単な文書であれば読んだり伝えたりすることができるが、電話では基本的なビジネス情報を理解することができない。
関連サイト
グローバル人材育成に向けた研修プログラムに関する調査 – 経済産業省
社会科学系大卒者の英語力と経済的地位 – 国立研究開発法人科学技術振興機構
中小企業のための海外展開入門 – 独立行政法人中小企業基盤整備機構