新・学習指導要領準拠の小学校向け英語のCAN-DOリスト
小学校の英語の授業は、2020年から3年生と4年生では「必修科目」、5年生と6年生では「教科」へ変わる予定です。これまで、5年生と6年生でそれぞれ年間35コマの授業が行われてきましたが、2020年からは年間70コマ(3年生と4年生は35コマ)に増えます。
小学校児童の英語力アップのためには、中学校や高等学校の多くが導入しているCAN-DOリストの利用が有効です。小学校でも、児童一人ひとりの能力を把握して効率よく英語力アップが図れるCAN-DOリストを導入するとよいでしょう。
目次
小学校英語のCAN-DOリスト
小学校の英語授業におけるCAN-DOリストでは、「読む」、「聞く」、「話す」、「書く」の4つの技能に分けて、それぞれ「~することができる」のような箇条書きで列挙します。教師は、各児童について何ができて何ができなかったのかをCAN-DOリストに記録、管理して今後の指導の参考にします。(参考:「語学教育のキーワード「CAN-DOリスト」とは?その活用法は?」)
「読む」のCAN-DOリスト
2020年から施行される学習指導要領には「読む」ことについて次のようなことが書かれています。
- 活字体で書かれた文字を識別し、その読み方を発音することができるようにする。
- 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。
「読む」ことのポイントは、簡単な語句で構成される絵本や日常生活や学校生活で使っている物を題材にして英文字に慣れ親しみ、意味を理解したり適切に発音したりすることです。「読む」ことのCAN-DOリストは、上記内容を踏まえると次のような内容になります。
- 文字を見て、どの文字かを識別することができる
- 大文字と小文字を識別することができる
- 文字を見て、その読み方を適切に発音することができる
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄が書かれている紙などから、自分が必要とする情報を得ることができる
- 音声で慣れ親しんだ簡単な語句を、絵本などの中から識別することができる
- 音声で慣れ親しんだ簡単な表現を、絵本などの中から識別することができる
「聞く」のCAN-DOリスト
「聞く」ことについては次のような内容が学習指導要領に書かれています。
- ゆっくりはっきりと話されれば、自分のことや身近で簡単な事柄について、簡単な語句や基本的な表現を聞き取ることができるようにする。
- ゆっくりはっきりと話されれば、日常生活に関する身近で簡単な事柄について、具体的な情報を聞き取ることができるようにする。
- ゆっくりはっきりと話されれば、日常生活に関する身近で簡単な事柄について、短い話の概要を捉えることができるようにする。
「聞く」ことのポイントは、話し手(教師)が「ゆっくり」「はっきり」と話すことです。また、正しく発音することが求められます。発音が苦手な場合には、オンライン英会話サービスを利用するなどして、児童へのサポートを図るとよいでしょう。「聞く」ことのCAN-DOリストは次のような内容になります。
- 簡単な語句や基本的な表現でゆっくりはっきり話されれば、それが何であるかを聞き取ることができる
- 日付や時刻、曜日などの表現をゆっくりはっきり話されれば理解することができる
- 日常生活や学校生活など身近で簡単な事柄をゆっくりはっきり話されれば、必要な情報を得たり、概要を捉えたりすることができる
「話す」のCAN-DOリスト
「話す」ことについては、「やり取り」と「発表」の2つに分けて書かれています。
話すこと[やり取り]
- 基本的な表現を用いて指示、依頼をしたり、それらに応じたりすることができるようにする。
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄について、自分の考えや気持ちなどを、簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。
- 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして、伝え合うことができるようにする。
話すこと[発表]
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
- 自分のことについて、伝えようとする内容を整理した上で、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
- 身近で簡単な事柄について、伝えようとする内容を整理した上で、自分の考えや気持ちなどを、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
「話す」ことのポイントは、「やりとり」については会話のキャッチボールができるようになること、「発表」については内容を整理して相手に伝えられることです。CAN-DOリストは次の通りです。
話すこと[やり取り]
- 家族や先生、友だちと挨拶を交わすことができる
- 相手に何かを依頼することができる
- 相手からの依頼に応じたり、断ったりする返事ができる
- 自分の考えていることを相手に伝えることができる
- 自分に関する質問に答えることができる
- 相手に関する質問をすることができる
話すこと[発表]
- 日付や時刻、曜日などを話すことができる
- 簡単な語句や基本的な表現を用いて、日常生活や学校生活での自分の行動を話すことができる
- 簡単な語句や基本的な表現を用いて、趣味や好きな科目などを話して自己紹介することができる
- 簡単な語句や基本的な表現を用いて、身近で簡単な事柄について自分の考えを整理して話すことができる
「書く」のCAN-DOリスト
学習指導要領には「書く」ことについて次のようなことが書かれています。
- 大文字、小文字を活字体で書くことができるようにする。また、語順を意識しながら音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする。
- 自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に、音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を用いて書くことができるようにする。
「書く」ことのポイントは、大文字と小文字を正しく使い分けて、正確に文字が書けるようになること、聞いた語句や表現が書けるようになることです。CAN-DOリストは次の通りです。
- 教科書に書かれている簡単な語句や表現を書き写すことができる
- 音声で流れるアルファベットを聞いて、大文字と小文字で書くことができる
- 音声で流れる簡単な語句や表現を聞いて、大文字と小文字を使い分けながら書くことができる
- 簡単な語句や基本的な表現を用いて、趣味や好きな科目などの自己紹介文を書くことができる
- 簡単な語句や基本的な表現を用いて、身近で簡単な事柄について自分の考えていることを書くことができる
新・学習指導要領では4技能を重視
2020年から施行される学習指導要領では、小学校の外国語教育について次のような目標を掲げています。
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気付き、これらの知識を理解するとともに、読むこと、書くことに慣れ親しみ、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。
(2) コミュニケーションを行う目的や場面、状況などに応じて、身近で簡単な事柄について、聞いたり話したりするとともに、音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり、語順を意識しながら書いたりして、自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。
(3)外国語の背景にある文化に対する理解を深め、他者に配慮しながら、主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。
外国語の習得にあたっては、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能に重視することが書かれています。特に英語については、聞くこと、読むこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]、書くことの5つの領域別に設定する目標の実現を目指した指導を通して、(1)と(2)に示した資質、能力を一体的に育成するとともに、その過程を通して(3)で示した資質、能力を育成するとしています。
ここで注目されるのが「話す」ことを「やり取り」と「発表」の2つに分けている点です。「やり取り」は友達との会話や先生との会話のような、相手と会話のキャッチボールを行うことを表し、「発表」はみんなの前で考えを述べたり発表したりして比較的長い言葉を話すことを表しています。さまざまな状況においても英語が話せるようになることを目標にしていることがわかります。
関連サイト
小学校学習指導要領(案) – e-Gov
小学校学習指導要領 – 文部科学省
学校教育法施行規則の一部を改正する省令案等の概要 – e-Gov
現行学習指導要領の基本的な考え方 – 文部科学省
小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議 報告書 – 文部科学省
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