高校の英語授業に「スキット練習」を取り入れて、話す力を伸ばそう
高校生の英語による「話す力」がアップする学習法の1つに、「スキット練習」があります。スキットとは寸劇(短い劇)の意味で、英語の授業においては、生徒が英語で台本を作り、クラスの前で実演することを「スキット練習」といいます。
高校の英語授業においてスキット練習を実施することで、生徒1人ひとりの英語の発話量が増え、「話す力」が向上します。台本を書く作業を通じて、英語による「書く力」も向上し、台本を聞くことで「聞く力」の向上も期待できます。高校の英語授業における、スキット練習の進め方を見ていきましょう。
目次
高校の英語授業におけるスキット練習の流れ
スキット練習の台本を作るのは生徒ですが、どのような台本を作ればよいのか、指示を出すのは先生です。指示する内容は2つあります。1つ目は、使用する文法事項の指示です。例えば、「関係代名詞のwhatを使うこと」「過去完了形を使うこと」というように指示を出します。文法事項の指示はなくても構いませんが、文法事項の習得のためになるべく指示するようにしましょう。2つ目は、シチュエーションの指示です。「今朝の遅刻について、友人どうしの会話」「明日アメリカへ旅立つ母娘の会話」といった内容を示します。生徒の日常生活や学校生活を想定してシチュエーションを考えるとよいでしょう。
生徒は、文法事項をシチュエーションをもとに台本を作成します。高校の英語授業では、2人1組になって台本を作成するのが一般的です。台本の長さは生徒の英語力にもよりますが、2往復程度の会話ができるボリュームにするのがおすすめです。
初めてスキット練習をする生徒にとって、いきなり台本を作らせるのは難しいでしょう。まずは、先生が生徒にスキット例を示してあげます。
スキット例
文法事項:関係代名詞のwhatを使うこと
シチュエーション:英語の授業において、原田先生(A)が生徒の山田君(B)に英語で指示を出す場面
A: Mr. Yamada, will you translate the next English sentence into Japanese?
B: I’m sorry, but I couldn’t understand what you said. Would you say it again slowly?
A: Yes, of course. I want you to translate the next English sentence into Japanese. Do you understand what I meant?
B: I see. Thank you, Mr. Harada. I’ll try to translate it into Japanese.
※日本語訳
A: 山田君、次の英文を日本語に訳してくれますか
B: すみませんが、先生が言われたことが理解できませんでした。もう1度ゆっくり言っていただけますか
A: はい、勿論いいですよ。あなたに次の英文を日本語に訳してもらいたいのです。私が意味したことが分かりましたか
B: 分かりました。原田先生ありがとうございます。それを日本語に訳してみます
スキット練習では、台本を見ないで話しますので、台本を暗記することから始めます。暗記したら、声を出して役を演じます。うまくできたら、役を交代して演じます。先生は、うまく発音できているか、ちゃんと役になりきって話しているかなどをチェックして、生徒を評価します。
高校の英語授業向けのスキット例
過去完了形を使ったスキット
文法事項:過去完了形を使うこと
シチュエーション:今朝の遅刻について、マイ(A)と友人のユカ(B)が会話をしている場面
A: Hi, Yuka. Why were you late for school this morning?
B: Hi, Mai. Actually, I overslept this morning and I left the house without having breakfast to get on the usual train. But when I arrived at the station, the train had gone.
A: As a matter of fact, I was also on the verge of missing the train. Because I had not done my homework, I got up early this morning. As I did it hard, I didn’t notice that it was time to leave the house. But I managed to get on the usual train.
B: You were lucky. And could you do your homework?
※日本語訳
A: おはよう、ユカ。今朝はどうして遅刻をしたの
B: おはよう、マイ。実は今朝寝坊をして、いつもの電車に乗ろうと朝食をとらずに家を出たの。でも私が駅に着いた時には電車は行ってしまっていたのよ
A: 実は、私も電車に乗り遅れるところだったの。宿題をしていなかったから早起きをしたの。一生懸命にやっていたから家を出る時間だということに気が付かなかったのね。でも、いつもの電車に何とか乗れたのよ
B: ラッキーだったわね。それで宿題はできたの?
スキットの解説
過去完了形は、had∔過去分詞で表します。台本の「電車が行ってしまった」ことは、「ユカが駅に着いた」ことよりも前の出来事なので過去完了形で表します。「マイが宿題を終えていなかった」のは、「今朝早起きしたことよりも前」のことなので、同じく過去完了形になります。
未来完了形を使ったスキット
文法事項:未来完了形
シチュエーション:明日、アメリカへ旅行する娘(A)と母(B)が会話している場面
A: I’m really looking forward to leaving for Los Angeles tomorrow. Where will we be about this time tomorrow?
B: We will have arrived in Los Angeles by this time tomorrow. We will have to go to Narita Airport at eight o’clock. So go to bed early tonight.
A: OK, I will. But I have not made arrangements for the trip yet. I have to hurry. I don’t hope I will have been left behind at home about this time tomorrow.
B: No kidding! We won’t be able to enjoy ourselves in Los Angeles without you. It’s just like the movie Home Alone.
※日本語訳
A: 明日ロサンゼルスへ向けて出発するのが本当に楽しみだわ。明日の今頃は私たちどこにいるのかな
B: 明日の今頃までにはロサンゼルスに着いているわよ。8時に成田空港に行かなければならないのだから、今夜は早く寝なさい
A: そうね、そうするわ。でも、まだ旅行の準備ができていないのよ。急がなきゃ。明日の今頃家で置いてきぼりにされているのは望まないからね
B: とんでもない。あなた抜きで私たちはロサンゼルスで楽しく過ごせないわよ。映画のホームアローンみたいなものじゃないの
スキットの解説
未来完了形は、will∔have∔過去分詞で表す文法事項です。
仮定法過去形を使ったスキット
文法事項:仮定法過去形
シチュエーション:雨天のため野球ができなくなってしまった弟マサル(B)を慰める兄(A)
A: Why are you making a long face, Masaru?
B: Well, if it were fine today, I would play baseball with my friends in the park. But it is raining cats and dogs outside. I have no choice but to stay home.
A: It can’t be helped. It is the rainy season now. As you have studied at school, the rainy season is indispensable for rice planting. If I were you, I would spend time reading books.
B: Year, I know that this rainy season is necessary for farmers. But anyway it’s annoying me. Will you play games or something with me?
※日本語訳
A: どうして浮かない顔をしているの、マサル
B: だって、もし今日晴れていれば友達と公園で野球をするのだけれど。でも、外は土砂降りで、家にいるしかないよ
A: 仕方がないよ。今は梅雨の季節だからね。マサルが学校で習ったように梅雨は田植えをするのに欠かせないんだ。僕がマサルだったら本を読んで過ごすけれどね
B: うん、農家の人には梅雨が必要だっていうことは知っているよ。でもとにかくうっとうしくて。僕とゲームか何かをしようよ
スキットの解説
仮定法過去形は、if∔主語∔過去形(be動詞の場合はwere)、主語∔would(should, couldなど)∔動詞の原形の形で表す文法事項です。
スキット練習におけるCAN-DOリスト
- 先生が指示した英文法事項をよく理解し、正しい英語で英文を書くことができる
- 作成した英文のスキットを正しく読むことができ、暗記することができる
- 暗記した英文をクラスの前で正しい発音で発表することができる(発表する生徒)
- ゼスチャーを交えながら感情を込めてスキットを発表することができる(発表する生徒)
- 正しい英語の発音であれば、発表されたスキットを聞き取ることができる(聞く生徒)
- 正しい英文法で書かれた英語であれば、スキットを聞いてスキットの内容を理解することができる(聞く生徒)
関連サイト
高校の英語教育は新学習指導要領導入によりどう変わるのか – weblio英会話
高等学校「外国語の目標」の科目段階別一覧表 – 文部科学省
高等学校学習指導要領の改訂のポイント – 文部科学省
平成29年度英語力調査結果(中学3年生・高校3年生)の概要 – 文部科学省
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