学生の頃にカナダに留学したことがあります。あるとき、時間が知りたくて、現地のお年寄りの男性に「What time is it?」と尋ねました。質問そのものは日本人にもおなじみの初歩レベルの英文です。しかし、うまく伝わりませんでした。どうも「time」の部分の発音がまずくてネイティブには聞き取りにくかったようなのです。
私が声をかけたネイティブのお年寄りはとても優しい方で、必死に私の英語を聞き取り理解しようとしてくれました。しかしどうにも伝わりません。3分ほどして、彼の奥さんとおぼしき女性が合流し、私の話す英語を「timeといっているんじゃないかしら」と伝えてくれました。お年寄りの男性はやっと理解してくれ、「なんだtimeと言っていたのか!」と一言残して、喜んで去っていきました。
結局、いま何時かを知ることはできませんでした。
今となっては笑い話ですが、恥ずかしい記憶でもあります。これは私にとって英会話の発音を練習(というか矯正)しなければと思い知らされた貴重な体験です。
発音レベルを引き上げるために実践したこと(1)インプットの練習
私は英会話の発音練習を「英語のインプット」と「英語のアウトプット」に大きく分けて、一人でもできる学習方法を探しました。
英語のインプットは、自分の語彙力を上げ、参加できる英会話のトピックを広げる目的と、英会話における一般的な型を身に着ける目的で取り組みました。
たとえば英語で書かれているWeb上のニュース記事を毎日チェックしたり、英語の資格試験のテキストに取り組んだり、といった形で英語の基礎レベルを鍛えました。移動中はWebラジオを聞いてネイティブの声に耳を傾けました。WebサイトやWebラジオはオンラインで無料で利用できることもあって重宝しました。基礎英語力が底上げされて自信もついてきました。
ただ、ニュース記事の英語は一方向的に伝達するためのものなので、実際の英会話で使われる文章とは少し形が違います。そこで、ネイティブスピーカーの会話に接する手段として、英語字幕のある洋画を観る方法に取り組みました。洋画も日本語字幕だと意訳が中心となるので英会話の練習になりませんが、英語字幕だと英文と発音をチェックしながら鑑賞できます。
洋書を多く読む練習にも取り組みました。特に「ハリーポッター」シリーズのような児童文学は、英語レベルがあまり高くない日本人でも読みやすく、会話のシーンも多いので、うってつけの教材であると思います。「ハリーポッター」シリーズは映画作品も観ていたので、映画俳優の発音をマネて一人で音読しました。最初は少し恥ずかしいのですが、慣れると楽しくなってきます。発音をマネてみると、英会話の基本フレーズを覚えるだけでなく、どんな風に喋るとネイティブっぽくなるのかを具体的に練習できます。
発音レベルを引き上げるために実践したこと(2)アウトプットの練習
ある程度インプット練習を行って多少の自信がついた頃に、英会話のレベルをさらに上げるため、実践的な英会話の練習のため英語ネイティブとの会話の機会を探しはじめました。私の場合、学校の休み時間に職員室に足を運んで英語ネイティブの先生に話しかけたりしました。街中で外国人観光客と思われる人を見かけたら、恥ずかしい思いを振り切って英語で話しかけることもしていました。
ネイティブに積極的に話しかける方法は、英会話の引き出しというか、自分なりの英会話パターンを身に着けるために役立ちました。自分なりの英会話の「型」のようなものが身につくと、英語でも言いたいことがスラスラ言えるようになるものです。
英会話スクールやオンライン英会話とは違って、ネイティブとの実践的な英会話は「教えてもらう」場ではないので、自分の英語の発音の良し悪しを判定してもらったり具体的に発音を直してもらったりする機会は多くありません。しかし常にネイティブの発音に耳を傾けていると、それだけでも自分の英語の発音が矯正されていくこともまた実感できます。