【まとめ】大学の取り組み・研究紹介コーナーの記事一覧

大学の取り組み・研究紹介コーナーに関連してる記事をまとめたよ!

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 発達心理学をテーマに今福先生に聞く

赤ちゃんは、どのようにして言葉を覚え、他者と関わるようになっていくのか。

当たり前のように見えるその成長の過程を、科学的に明らかにしようとする学問があります。それが、発達心理学です。

今回お話をうかがったのは、乳幼児の言語獲得や社会性の発達をテーマに研究をされている、今福理博(いまふく・まさひろ)先生。保育や教育の現場にもつながる発達のメカニズムを解き明かしながら、学生たちには「子どものことがわかる保育者・教員になってほしい」と語ります。

研究者として、教育者として、そして絵本の著者として。

子どもの育ちを支えるさまざまな取り組みと、その背景にある思いを、丁寧に語っていただきました。
続きを読む

グローバル教育に強いおすすめの大学をご紹介!

近年、社会のグローバル化が急速に進む中で、大学教育においてもグローバル人材の育成が重要な課題となっています。

グローバル化が進むビジネス分野では、国境を越えて活躍できる人材が求められる一方、日本国内でも外国人観光客の増加や在日外国人の増加など、日常生活の中でグローバル化を肌で感じる機会が増えてきました。

このような状況の中、文部科学省は「グローバル人材育成推進事業」を立ち上げ、大学教育のグローバル化を推進しています。

グローバル教育に力を入れている大学では、語学教育や留学制度の充実はもちろん、海外からの留学生を多く受け入れることで、日本人学生が日常的に異文化交流を体験できる環境を整えています。

また、海外大学との連携を強化し、国際的な研究交流や学生交流を活発に行うことで、グローバルな視点を持った教育を実践しています。

本記事では、グローバル教育に定評のある大学を厳選し、その特徴や取り組みを詳しく解説します

また、グローバル教育を受けるメリットや、大学選びのポイントについても触れていきます。将来、グローバルな舞台で活躍することを目指す方は、ぜひ参考にしてください!
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 開発と文化をテーマに小鳥居先生に聞く

長崎外国語大学小鳥居教授

海外で誰かの役に立つことがしたい

そんな気持ちを持ったことのある高校生は、決して少なくないはずです。しかし実際に、世界の現場では何が起きているのか、そこにどう関わることができるのかは、なかなか見えにくいものです。

今回お話をうかがったのは、長崎外国語大学で東南アジアの開発と文化の関係を研究している小鳥居先生。
先生は、インドネシアやカンボジア、タイなどの地域に実際に足を運びながら、現地の暮らしや課題を見つめ、「外から与える支援」ではなく、「中から育つ変化」に関心を持ち続けてこられました。

「現場に行って、自分の目で見ること」「支援とは何かを考えること」
先生の言葉には、国際協力やフェアトレードといった言葉を、現実の人々の暮らしに引きつけて考えるヒントが詰まっています。
研究者として、そして教育者として、学生たちと共に取り組んできた活動の中から、未来を考える手がかりをお届けします。

PR:おすすめのオンライン英会話はどこ?これでもう間違えない!

続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 免疫学をテーマに佐藤先生に聞く

○○○○大学 ○○○○教授 (14)

医療の世界は日々進歩していますが、それでもなお「治療が難しい病気」は数多く残されています。  

中でもがんは、今も多くの人の命に関わる深刻な課題です。  

今回お話を伺ったのは、宮崎大学で免疫学を専門に研究し、がん免疫療法の新しい可能性を探っている佐藤克明先生。  

樹状細胞という免疫の中枢に関わる細胞に注目し、これまでにない治療法の開発に挑んでいます。  

しかし、そんな最先端の研究に取り組む先生も、最初から免疫学を目指していたわけではないといいます。  

高校生に向けた今回のインタビューでは、専門分野の話だけでなく、「学問との出会い方」や「進路の見つけ方」についても、率直な言葉で語ってくださいました。 
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」国際教育をテーマに市瀬先生に聞く

市瀬教授

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の専門家にインタビューを行い、学問の魅力を探ります。 

今回は、「国際教育」を専門とする宮城教育大学の市瀬智哉先生にお話を伺いました。 

国際教育とはどのような学問なのか? 

日本と海外の教育にはどのような違いがあるのか? 

これからの時代に必要な学びとは? 

国際社会で求められるスキルや、高校生が今からできることについて、先生の研究をもとに詳しく解説していただきました。 
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」環境経営と地域をテーマに藤森大祐先生に聞く

東京富士大学藤森教授

企業と環境問題、地域の活性化、そして伝統産業の再生——。 

一見バラバラに見えるこれらのテーマを、ひとつの大きな視点でつなげながら探究を続けているのが、東京富士大学 経営学部の藤森大祐教授です。 

藤森先生は、公害という社会問題から企業の環境対策に目を向け、地方の自然との出会いをきっかけに「地域の持つ力」に気づき、やがて都市・新宿に残る染色文化の継承や、サッカークラブとの地域連携など、多岐にわたるテーマに取り組んでこられています。 

今回のインタビューでは、「環境とどう向き合うか」から始まった先生の研究の歩みと、学びの中にある“人とのつながり”や“問い続ける面白さ”についてお話を伺いました。 

進路を考える高校生の皆さんにとって、学問との出会いがどんなふうに広がっていくのか。そのヒントが、きっとこの対話の中にあるはずです。 
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 平和学をテーマに末吉先生に聞く

末吉先生

高校の授業ではあまり耳にする機会のない「平和学」。けれども、世界で起きている戦争や社会の対立、私たちの身近にある差別や分断といった問題に向き合ううえで、この学問は非常に重要になります。

帝塚山大学で国際法と平和学を教える末吉洋文先生は、学生たちとともに戦争遺跡をめぐるフィールドワークを行ったり、小学校での平和学習の教材づくりに取り組んだりと、学問と社会をつなげる実践を続けてきました。

今回は、高校生に向けて、平和学とはどんな学問なのか、どのような魅力があるか、具体的な活動や経験を交えながら語っていただきました。
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 栄養学をテーマに妻木先生に聞く

広島女学院大学妻木 陽子さま

「将来の夢がまだはっきりしていない」

「食べるのは好きだけど、それが学問になるの?」 

そんなふうに感じている高校生も多いのではないでしょうか。 

今回お話を伺ったのは、広島女学院大学の妻木陽子先生
管理栄養士として、そして大学教員として、栄養学を学ぶ意義やその広がりについて、たっぷりと語っていただきました。 

妻木先生の専門は、「ライフステージ別栄養学」や「食物アレルギーへの栄養支援」。食べることを通じて、人の心や身体、そして家族や社会までも支える研究に取り組んでおられます。 

この記事では、そんな先生の言葉を通して、
✔ 栄養学とはどんな学問なのか
✔ 食を通じて人を支えるとはどういうことか
✔ どんな高校生に向いているのか
を一緒に考えていきます。 
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」ソーシャルロボティクス研究者・飯尾尊優先生に聞く

飯尾さま

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の専門家にインタビューを行い、学問の魅力を探ります。 

今回は、ソーシャルロボティクス(Social Robotics ヒューマン・ロボット・インタラクション(Human-Robot Interaction という分野を研究されている 飯尾尊優先生 にお話を伺いました。 

「ロボットが人を褒めると、どんな影響があるのか?」
「人と自然にコミュニケーションできるロボットとは?」 

ロボットと人の関係性を探る、先生の研究の魅力に迫ります。 
続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」エネルギーの研究をテーマに上坂先生に聞く

富山国際大学上坂 博亨先生

「電気はコンセントから来るもの」——そんな当たり前の考え方を、根本から変えてみませんか?

私たちの生活に欠かせない電気。しかし、その仕組みを深く理解し、エネルギーを「自分でつくる」ことを考えたことはありますか? 上坂先生は、小水力発電という再生可能エネルギーの研究を通じて、地域社会とエネルギーの自立を結びつける挑戦を続けています。

実は、研究の道は意外なところから始まることもあります。先生自身も、生物学から情報学、そしてエネルギー研究へと進み、多様な視点を活かしてきました。学問の世界は一つの道だけではなく、交差し、広がり、思わぬ発見につながるものです。

「自分の興味はどこにあるのか?」そんな問いを持つ高校生に向けて、本記事ではエネルギーの未来、研究の面白さ、そして進路を考えるヒントをお届けします。あなたの「学びたい」を刺激する一歩になるかもしれません。

続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」多様な学問を今に結び付けて研究を広げる片山先生に聞く

名古屋女子大学    片山直美

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントとなります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の最前線で活躍する専門家にインタビューし、学問の魅力やその背景に迫ります。 

今回は、味覚・嗅覚・咀嚼力の変化の研究から、宇宙食の開発、さらには平衡機能や宇宙酔いに至る、幅広い分野で活躍される片山先生にお話を伺いました。 

 工学からキャリアをスタートさせ、調理や栄養学、そして宇宙医学へと道を広げた片山先生の独自の歩みは、「好き」を追求する情熱が未来を切り拓く好例です。インタビューでは、先生がこれまで歩んできた人生をお伺いしながら、「過去の経験」がいかに「今のキャリア」に結び付くのか、その魅力と可能性に迫ります。 

続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 持続可能な社会を考える教育をテーマに中澤先生に聞く

中澤教授

高校生にとって、大学でどのような研究・取り組みが行われているかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の専門家にインタビューを行い、学問・研究の魅力を探ります。

今回は歴史文化遺産を通じて持続可能な社会を考える教育(ESD)に取り組んでおられる奈良教育大学の中澤静男先生にお話を伺いました。

中澤先生は奈良公園の鹿や東大寺の1300年続く仕組みには、持続可能な社会を築くためのヒントが隠されているといいます。

では、持続可能な社会を学ぶことにどのような意味があるのか? そして、社会とつながる学びとはどのようなものなのか? 中澤先生のお話から、その糸口を探ります。

続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」SDGs×企業戦略をテーマに安岡寛道先生に聞く

 安岡 寛道教授

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのか、その学問がどのように社会とつながっているのかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。本連載では、各分野の専門家にインタビューを行い、その学問の魅力や学ぶ意義を探ります。

今回は、経営学の視点からSDGs(持続可能な開発目標)やウェルビーイング(Well-being)に取り組む、明星大学の安岡寛道先生にお話を伺いました。

経営学が社会に果たす役割、そしてこれからの時代に求められる企業戦略について深く考えます。 続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」心理学>親子関係をテーマに井梅先生に聞く

井梅先生

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の専門家にインタビューを行い、学問の魅力を探ります。

今回のテーマは「心理学」。人の心の発達や親子関係の心理に焦点を当て、東京未来大学こども心理学部の井梅 由美子准教授にお話を伺いました。井梅先生は、臨床心理学を専門とし、親子の関係や子育て支援について研究を続けています。また、臨床心理士としての経験を活かし、現場での実践にも携わってきました。

心理学は、単に「心の仕組みを学ぶ」だけではなく、子どもの成長や教育、さらには社会の課題を解決する手がかりにもなります。スポーツや中学受験など、私たちに身近な場面でも、心理学の視点が深く関わっていることをご存じでしょうか? 今回のインタビューを通じて、心理学の学びがどのように社会と結びついているのかを探っていきます。

続きを読む

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」数学教育を追求する佐藤先生に聞く

岩手大学   准教授    佐藤寿仁

数学は、多くの人にとって「得意」「苦手」がはっきり分かれる教科ではないでしょうか。なぜ学ぶのか、どう役立つのかが見えにくいと感じる高校生も多いでしょう。しかし、「数学はただ解くだけのものではなく、考え方そのものを鍛えることもできる学問です」と語るのが、岩手大学の佐藤寿仁(さとう・としひと)先生です。

佐藤先生は、中学校で17年間の教員経験を経て、現在は数学教育の研究者として活躍しています。現場での指導経験と研究の視点を併せ持つ立場から、「これからの時代に求められる数学教育」について日々探究を続けています。

本インタビューでは、数学教育の意義や課題、そして未来の教育に求められる変化について伺いました。数学に苦手意識を持つ高校生や、将来教育の道を考えている人にとって、学びのヒントとなる内容です。

数学教育とは?

― まず、先生のご専門である数学教育についてですが、これはどのような研究分野なのでしょうか?
佐藤先生:
数学教育は、教育学の中の教科教育学の一分野です。名前の通り、子どもたちが算数や数学を「なぜ学ぶのか?」を追求したり、それによって「どのような力が身につくのか?」を研究する分野です。また、それを指導する教師の指導法の研究も重要なテーマとなります。特に私の研究では、数学そのものの内容だけではなく、教師がどのような算数・数学の授業をすれば、子どもたちがより深く理解し、効果的に学習できるのかといったメカニズムについても探求しています。

数学教育における指導法の研究

― 先生の研究では、特に教師の指導法に焦点を当てているとのことですが、具体的にはどのようなことを研究されているのでしょうか?

佐藤先生:
私は、単に「数学の内容を教える方法」ではなく、教師の指導法そのものを研究しています。つまり、どのように授業を設計すれば、子どもたちがより深く理解し、主体的に学ぶことができるのかを考えることが大きなテーマです。

また、授業の中で生徒が「理解しているかどうか」を見極めるポイントや、子どもが数学に対して持つ認識の変化なども分析対象となります。

学校現場から研究の道へ

― 先生は元々、中学校の数学教員をされていたとお伺いしております。そこから大学で研究を行う道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか?

佐藤先生:
はい、私は中学校の教員として17年間勤務し、様々な学校で数学の教科指導してきました。公立校、大学附属校など、異なる環境の中で多くの子どもたちと関わる機会がありました。

その中で感じたのが、これからの時代に求められる数学教育は、単なる「知識の詰め込み」では通用しないということです。
従来のように「知識を教え込む」スタイルの授業ではなく、子どもたち自身が考え、問題を解決する力を養うことが求められています。そのためには、教師自身も授業のあり方を変えていく必要があるのではないかと考えるようになりました。

こうした問題意識を持つようになったことが、研究を志した最初のきっかけです。

また、今は大学に所属しており、教育を志す学生たちと関わる機会があります。彼らは将来の教師として教壇に立つわけですが、単に目の前の授業をこなすのではなく、これからの日本の教育をどう変えていくかまで考え実を育てたいという思いを持ち、現在の研究を続けています。

社会の変化と数学教育の必要性

― 確かに、社会は急速に変化していますし、そういった問題解決の力は重要になってきますね。具体的に、先生が特に危機感を抱いた社会の変化や出来事はありますか?

佐藤先生:
そうですね。私が特に強く意識するようになったのは、2008年頃のPISA調査(国際学力調査)の結果を見たときです。日本の子どもたちは数学のスコアは高いものの、「数学が好きか?」と聞かれると「好きではない」と答える割合が非常に高いという結果が出ていました。

数学の成績は良いのに、役に立つと感じていない。これは海外の子どもたちにはあまり見られない傾向です。特に高校生になると、数学が好きな生徒と、全く興味が持てず「数学なんてもう見たくもない」と感じる生徒がはっきり二極化してしまいます。

この状況を見たときに、「このままでは、日本の教育構造そのものが、グローバル社会で戦えなくなるのではないか?」という危機感を抱くようになりました。
現在の教育のままでは、単に「与えられた情報を覚えるだけの人間」になってしまい、問題を自分で考え、解決していく力を育てることができないのではないかと思ったのです。

また、東日本大震災の経験も、教育の在り方について考える大きなきっかけとなりました。私は岩手にいたので、震災を直接経験しました。そのときに感じたのは、「何が起こるかわからない」という現実です。

ただ、重要なのは起きた出来事そのものではなく、そのときに人間がどのように知的に行動できるかということです。災害時の対応一つとっても、状況を正しく判断し、冷静に行動できる人と、そうでない人の差が大きく出ることを実感しました。

この経験から、やはり教育には大きな責任があると感じました。知識を詰め込むだけではなく、状況を的確に判断し、賢く行動する力を育てることが、教育の役割であるべきだと強く思うようになりました。

数学教育が育む「考える力」

― そうすると、数学教育は単に計算ができるようになることではなく、もっと広い意味で「考える力」を育てるものなのですね。

佐藤先生:
その通りです。数学ができるようになること自体ももちろん重要ですが、それ以上に、数学を通じて「どのように考えれば問題を解決できるのか」を学ぶことが大事です。

単に公式を覚えて計算するのではなく、どうすればこの問題を解決できるのか?」という視点を持つことが、これからの時代に求められる力になっていくと思います。

数学嫌いの原因と教育の課題

― 数学が苦手、あるいは嫌いになる生徒が多いと言われていますが、先生の研究や調査の中で、どのような要因が関係していると考えられますか?

佐藤先生:
これはいろいろな要因が考えられるのですが、特に大きいのは「学習評価のあり方」だと思います。

学校教育の現場では、どうしても「正しい答えを出すこと」に重きが置かれがちです。たとえば、数学の問題で「答えが3」と決まっている場合、どれだけ考え抜いたとしても、3と書かなければ正解にはなりません。

しかし、実際の大学受験の試験問題を見ていると、答えだけでなく、その過程や考え方を重視するものが増えているんですね。採点していると、こちらが驚くような発想をしている生徒がいたりします。これはまさに、数学の「考える力」を示している良い例ですが、日常の授業ではこうした「過程」を評価する仕組みがまだまだ不足していると感じます。

また、授業の現場でも、子どもたちは「答えを求めること」ばかりに意識を向けてしまい、「どう解くか」について深く考える経験が少ないのではないかと思います。

私は小中学校の授業をよく見に行くのですが、子どもたちは「答えを求める力」は持っているものの、「解き方を試行錯誤する力」や「問題を分解して考える力」があまり育っていないと感じることがあります。

つまり、単に「数学ができるかできないか」の話ではなく、そもそも「問題解のようにアプローチしていくか」という思考プロセスが十分に育っていないのではないか、というのが私の考えです。

数学的思考と社会での応用

― なるほど。確かに、学校の数学ではとにかく「正解を出す」ことが特に重視されているように感じます。しかし、実際の社会では、ゴールにたどり着く方法は一つではないですよね?

佐藤先生:
まさにその通りです。社会に出れば、正しい道筋が一つしかない問題というのはほとんど存在しません。

しかし、学校教育では「唯一の正解を求める」ことが強調されすぎてしまっているため、数学が苦手な子どもたちは「正解を出せない自分は数学に向いていない」と思ってしまいがちです。

本来、数学は「考え方の多様性」を学ぶための学問でもあるのですが、その本質が十分に伝わっていないのが課題ですね。

たとえば、数学の問題を解く際にも、解法は一つではないことをもっと意識させるような指導が必要だと思います。

「こう解いてもいいし、別のアプローチでもたどり着ける」という経験を積むことで、子どもたちは数学を「自由に考えるためのツール」として捉えることができるようになるのではないでしょうか。

ICTと数学教育の未来

― ここまでのお話から、手計算だけではなく、新技術の活用やツールの導入も重要なテーマではないかと思いました。数学教育におけるICTの活用についてはどのような状況でしょうか?

佐藤先生:
日本では「GIGAスクール構想」により、義務教育では1人1台の端末が配備されるなど、ICTの導入が進んでいます。ただ、高校に関しては端末費用の負担問題などがあり、まだ課題も多いですね。数学教育に関して言えば、関数やグラフ、図形のシミュレーションをパソコン上で動かしてみたり、エクセルを使ってデータを処理したりといった活用が考えられます。

ただ、ここで大事なのは「計算をできるようになること」ではなく、数学を用いた問題解決」を学ぶことです。例えば、微分や積分を必死に計算すること自体が目的になってしまい、実際の活用方法がわからないという現状があります。海外では、数学のアプリを活用し、手書きの数式をスマホで撮影すると自動的に計算してくれるツールなどが普通に使われています。日本ではこうしたツールを「あたかもズルをするもの」として見てしまいがちですが、本来は「問題解決のためにどう使うか」が重要なはずです。

― 日本では新しい技術に対して慎重になりがちな傾向があるのでしょうか?

佐藤先生:
その傾向はあると思います。例えばAIもそうですが、大人は普通に使っているのに、子供たちには「まだ早い」「使ってはいけない」と制限してしまうケースが多いでしょう。教師側にも「AIが普及すると自分たちの仕事がなくなるのではないか」という漠然とした不安があり、それが子供たちの学びを制限する方向に働いてしまっているのかもしれません。

しかし、世界は確実に変化しています。数学教育においても、単なる計算力ではなく、「数学を活用してどう問題解決するか」を学ぶ必要があります。そのためにも、ICTの活用は不可欠だと思います。

― 数学教育の未来を考える上で、ICTの活用は避けて通れないということですね。

佐藤先生:
はい。数学教育だけでなく、教育全体に言えることですが、これからの時代は「情報を知っている」だけではなく、「どう活用するか」が問われます。AIを含む新しい技術を適切に使いこなす力を育てることが、これからの教育の大きな課題ですね。

数学教育の未来と学問の楽しさ

― 数学を教えることに加えて、数学教育を研究することの重要性についてお聞かせください。

佐藤先生:
そうですね。数学を教えること自体も重要ですが、それだけではなく「数学をどう教えるか」「教育全体をどう設計するか」を考えることも大切です。教育というのは、ただ知識を伝えるだけではなく、その仕組みを考え、より良い方法を探ることも含まれます。数学教育を専門に学ぶことで、授業の進め方だけでなく、教育の仕組みを作る側にもなれるのです。

私は時々、高校生向けの出前授業を行っていますが、ぜひ高校生の皆さんにも「教育を作る側に立つ」という視点を持ってもらいたいですね。受けるだけではなく、教育そのものを設計することにも興味を持ってほしいと思っています。

算数が嫌いだった少年時代と進路選択

― ところで、先生は学生の頃から数学関連の道を志されていたのでしょうか?

佐藤先生:
実は、私はもともと算数が嫌いでした。学生の前で話すと驚かれるのですが、ドリル学習が苦手で、同じことを繰り返すのが嫌いでした。当時の教育は「決められた答えを出すこと」が重視され、私には合わなかったんです。でも、高校に入って数学の面白さに気づきました。

高校時代は、数学の研究をしたいという気持ちと、教えることの楽しさを感じる気持ちの間で揺れ動いていました。友達に数学を教えると「わかりやすい!」と言ってもらえることが多く、教員になる道も良いかもしれないと考えるようになりました。高校2年生の頃に進路を決める際、理学部に進んで数学を研究するか、教育学部に進んで教員になるか悩みましたが、最終的には地元・岩手で教員として働く道を選びました。

高校数学の面白さを教えてくれた先生の影響

― 高校数学の面白さに気づかれたきっかけは何だったのでしょうか?

佐藤先生:
それは間違いなく、高校の数学の先生の影響ですね。私の高校の先生は、授業でよく「どういう筋道でこの問題を解いたのか?」と問いかけてくれる人でした。ただ答えを求めるのではなく、考え方を大切にしていたんです。それがすごく楽しくて、考えること自体に面白さを感じるようになりました。

もう一つ、私にとって印象的だったのは、その先生が時々「圧倒的な数学の力」を見せてくれたことです。黒板に高度な数学をスラスラと書きながら「こういう世界もあるんだぞ」と見せてくれたんですね。正直、私は全然ついていけなかったんですが、それがすごくかっこよくて、「数学ってこんなに奥深いんだ」と憧れるきっかけになりました。

高校数学と受験対策のバランス

― 高校の数学教育では、受験対策と数学の楽しさをどう両立するかが課題になりそうですね。

佐藤先生:
本当にその通りですね。共通テストや大学受験に向けた勉強はもちろん大事ですが、それだけになってしまうと、数学の本来の楽しさが伝わりにくくなります。

私の高校の先生は、そのバランスをとるのがとても上手でした。受験対策の時期には徹底的に試験対策をする一方で、そうでない時期には数学の奥深さや面白さを見せてくれました。特に印象に残っているのは、3年生の最後の授業で言われた言葉です。

「勉強はもうこれで終わりだ。君たちは来年から学問をやるんだよ。」

この言葉は、今でも強く心に残っています。大学に入ると、ただの勉強ではなく「学問」としての数学を学ぶことになる。そう言われたことで、大学での学びに対する意識が大きく変わりましたね。

数学教育を志す高校生には、ぜひ「数学を教える」ことの面白さだけでなく、「数学を学ぶ」「数学を使う」という視点も持ってもらいたいと思います。

研究の本質は「創造すること」

― 最後に、先生にとって研究することの一番の楽しさとは何でしょうか?

佐藤先生:
それは「創造すること」ですね。これに尽きます。研究をする上では、必ずしも思い通りにいくとは限りません。特に私のように、教育という人間を相手にする分野では、機械や自然科学のようにシンプルな法則だけでは説明がつかないことも多いです。それでも、試行錯誤を重ねていくうちに、先生が「こうすればもっと子供たちが理解できるんだ」と気づいたり、子供たちの思考のプロセスが見えてきたりする。そういう発見があるからこそ、研究はやめられないんです。

「こういう授業を作ったらどうなるだろう?」「こういう教育方法なら、もっと効果が上がるかもしれない」と、常に創造し続けること。これは研究の原点だと思いますし、それがあるからこそ、新しい教育の形を生み出せるのだと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

まとめ

佐藤先生は、学問の魅力を「創造すること」だと語ります。数学の楽しさを伝えるためには、ただ知識を詰め込むのではなく、「なぜ学ぶのか」「どう活用できるのか」を考えさせる教育が必要です。

中学校の教員としての経験を経て、研究の道に進んだ佐藤先生。その原動力は、「これからの時代に必要な教育とは何か」を追求し続ける探究心にあります。ICTやAIが発展する中で、教育も変わらなければなりません。数学をただ「解くもの」として捉えるのではなく、社会の問題を解決するための手段として活用できるような学びが求められています。

数学教育を研究し続ける佐藤先生の言葉は、これから学びの道を進む高校生たちにとって、大きなヒントになるのではないでしょうか。

 

学校紹介記事を作成する際のカテゴリ



englishcompany



WebRTCで無料英会話