連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」— 栄養学をテーマに妻木先生に聞く

広島女学院大学妻木 陽子さま

「将来の夢がまだはっきりしていない」

「食べるのは好きだけど、それが学問になるの?」 

そんなふうに感じている高校生も多いのではないでしょうか。 

今回お話を伺ったのは、広島女学院大学の妻木陽子先生
管理栄養士として、そして大学教員として、栄養学を学ぶ意義やその広がりについて、たっぷりと語っていただきました。 

妻木先生の専門は、「ライフステージ別栄養学」や「食物アレルギーへの栄養支援」。食べることを通じて、人の心や身体、そして家族や社会までも支える研究に取り組んでおられます。 

この記事では、そんな先生の言葉を通して、
✔ 栄養学とはどんな学問なのか
✔ 食を通じて人を支えるとはどういうことか
✔ どんな高校生に向いているのか
を一緒に考えていきます。 

栄養学との出会いとその魅力 

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— まずは先生のご専門について、ざっくりとした概要から教えていただけますか? 

妻木先生:
はい、私は管理栄養士の免許を持っていまして、大学では「基礎栄養学」と「ライフステージ別栄養学」を担当しています。「基礎栄養学」というのは、栄養素が体の中でどのように使われるのか、つまり代謝の仕組みなどを学ぶ授業です。 

もう一つの「ライフステージ別栄養学」では、赤ちゃんからお年寄りまで、人生の各段階での体の変化や食の問題を考えながら、それに応じた栄養管理について教えています。年齢や体の状態によって、必要な栄養も違えば、食の悩みも違いますから、それぞれに合わせたサポートが必要なんですね。 

私の研究は、その中でも小児に多い「食物アレルギー」をテーマにしています。管理栄養士の視点から、どうすれば食べられない子どもたちにも“食に興味を持ってもらえるか”ということを考えて取り組んでいます。 

— 食物アレルギーは、きっと読者である高校生の中にも身近に感じる人がいると思います。 

妻木先生:
そうですね。アレルギーって、ある人にとっては日常生活にすごく関わる問題です。もちろん治療の分野では、検査やお薬といった医療的な対応もありますが、私自身は「食べられないからこそ、どう“食”に向き合えるか」という部分に興味があります。食事を我慢するだけでなく、「それでも食べたい」「楽しみたい」と思ってもらえることが大事だと思っているんです。 

— 先生ご自身は、もともと栄養学に強い興味があったわけではなかったそうですね? 

妻木先生:
そうなんです。高校生の頃は、正直あまり栄養学に興味があったわけではなくて(笑)。どちらかというと、作るより食べる方が好きでした。
でも、それって実はすごく自然なことなんですよね。本学管理栄養学科の学生も、だいたい最初のきっかけは「食べるのが好き」から入ってくるパターンが多いです。
そして、「食べると幸せになれる」っていう当たり前の感覚から、「じゃあ、その幸せを支えるにはどうしたらいいんだろう?」っていうふうに興味が広がっていくんですよ。 

— なるほど、「食べる」ことが入り口になって、「支える」ことへの学びにつながっていくんですね。 

妻木先生:
はい。それに、栄養学の魅力のひとつは、病気になる前から人の健康を支えられるという点です。
お医者さんやお薬は「病気になってから」の対応が多いですが、栄養学は予防の段階から関われる。もちろん、病気になった人に対してもアプローチはできますが、「病気にならないようにどう支えるか」を考えるのは、すごく意味のあることだと思います。 

— 高校生の中には「食べるのは好きだけど、将来それが仕事になるのかな」と迷っている子も多いと思います。そういう子に、どう声をかけてあげたいですか? 

妻木先生:
私、入学式の時にも学生によく言うんですが、「栄養学を学ぶことで、あなたの大切な人を守ることができる」んです。そして、自分自身の身体も守れる。
それが、栄養学のいちばんの魅力だと思っています。 

食って、誰にとっても毎日のことですよね。食べないと生きていけないし、逆に、ちょっとしたことでその人の生活がすごく豊かにもなる。
だからこそ、家族や恋人、友達、そして自分自身――そういう「大切な存在」の健康を、食を通して守れるっていうのは、本当に意義のあることだと思うんです。 

食物アレルギーと家族をつなぐ「サマーキャンプ」という実践 

— 先生は食物アレルギーに関する研究をされているということですが、実際にどのような活動を行っているのでしょうか? 

妻木先生:
私がアレルギーに関心を持ったのは、大学院で基礎研究をしていた時のことです。当時は細胞や実験動物を使った研究をしていたのですが、「患者さんに会ったことがない」という自分にふと気づいたんですね。私自身、アレルギーを持っているわけではなかったので、「一体誰のために研究してるんだろう?」って思ってしまって。 

そこで始めたのが、食物アレルギーを持つ子どもとその家族のためのサマーキャンプです。この活動では、アレルギーのある子どもたちだけでなく、その家族全員で参加してもらうことを大切にしています。お父さんやお母さんはもちろん、兄弟姉妹、おじいちゃんおばあちゃんなど、みんなで“アレルギーについて一緒に考える場”にしたいという思いがあります。 

— アレルギーは本人だけでなく、家族にも大きな影響がありますよね。 

妻木先生:
そうなんです。特にお母さんが「自分のせいかもしれない」と悩んでしまうことが多いんです。でも、そんなことは決してないんです。そうした思いを共有し、同じ悩みを持つ保護者同士が出会い、支え合えるような場を作りたいと考えて、キャンプを続けてきました。 

また、アレルギーを持つ子どもたちは、普段は「みんなと同じものを食べられない」という経験が多いです。でも、このキャンプでは“みんなで同じ食事を食べる”ということができる。これがすごく大きな意味を持つんです。 

— それはきっと、子どもたちにとっても家族にとっても大きな経験になりますね。 

妻木先生:
はい。そしてもう一つの特徴は、学生が中心となって運営しているという点です。本学管理栄養学科の学生たちが、アレルギー対応のレシピを半年以上かけて考え、実際に作って、子どもたちや家族に提供します。レクリエーションや司会も学生が担当します。 

キャンプの場で、自分たちが作った料理を子どもたちが「おいしい!」って笑顔で食べてくれる。その姿を見ることで、学生たちも「あ、自分たちの学びは人の役に立つんだ」って実感できるんですね。これは教室の中だけでは得られない、とても大きな学びになります。 

アレルギーは“誰にとっても”無関係じゃない 

アレルギー対応食(鶏卵、乳、小麦不使用のレシピ)
アレルギー対応食(鶏卵、乳、小麦不使用のレシピ)=妻木先生よりご提供

— 一方で、高校生の中にはアレルギーを持っていない子も多いと思います。そういった子たちに、栄養学やアレルギーの大切さをどう伝えていけると思いますか? 

妻木先生:
実は、アレルギーって気づかれていないことも多いんです。たとえば果物アレルギーだと、症状が口の中だけで終わることもあるので、「喉がちょっとかゆい」くらいで済ませてしまって、自分ではアレルギーだと気づいていない場合もあります。 

また、「将来自分の子どもがアレルギーを持つかもしれない」って考える機会もあると思うんです。だから、当事者でなくても、将来的に関わる可能性がある。そこから興味を持ってもらえたらうれしいですね。 

— 身近な人がアレルギーを持っていると、自分も関心を持つきっかけになりますよね。 

妻木先生:
はい。たとえば友達の子どもがアレルギーだったり、災害時にアレルギーのある人のことを考える場面が出てくることもあります。今後は、そういった場面での地域の理解や対応についても研究していきたいと思っていて、地域イベントでの意識調査なども始めようとしています。 

— 災害時の食の支援についてもお話されていましたね。 

妻木先生:
はい。災害時の炊き出しでは、アレルギーのある子どもに配慮が必要です。ただ、「アレルゲンフリーの食事」をすぐに準備するのは現場としてはとても難しいんですよね。そこで今考えているのが「袋調理」です。耐熱パックの中に食材を入れて湯煎で調理する方法で、同じ鍋でも混ざらずに複数の料理を作れる可能性があります。 

— 一つの鍋で安全に複数のメニューが作れるのは画期的ですね! 

妻木先生:
はい。ただ、湯煎中に成分が溶け出さないかなどの検証が必要なので、今まさに研究を始めようとしているところです。この袋調理の方法が普及すれば、災害時でもアレルギー対応食を提供しやすくなるはずですし、日常生活にも応用がきくと思っています。 

— 先生の研究が進めば、より多くの人が“安心して食べること”を楽しめるようになりますね。 

妻木先生:
そうなっていけたらうれしいですね。でも一番は、困っている人がいるということに気づく社会になってほしいという思いです。アレルギーのある人だけが努力するのではなく、お互いにできること・できないことを伝え合える、そんな社会に向けて栄養学は役に立てると信じています。 

高校での学びが栄養学につながる瞬間 

— 栄養学と聞くと、「病院での専門的な知識」といったイメージがあるかもしれません。でも、先生のお話を聞いていると、それだけではなくて、もっと日常に根ざした学問だと感じます。 

妻木先生:
そうですね。栄養学っていうのは「食べること」から始まる、すごく身近な学問なんです。そして、人を幸せにする手段としての“食”に興味がある人には、本当にぴったりだと思います。たとえば、「誰かの笑顔が見たい」「誰かの健康を支えたい」という気持ちがある人には、向いている分野です。 

最近は病院や保育所だけでなく、食品開発の分野でも栄養学の知識が求められています。いわゆる「フードテック」の時代に入ってきていて、災害食や健康志向の食品など、さまざまな分野で活躍できる可能性が広がっているんです。 

— 高校生の段階で、何を勉強しておくといいでしょうか? 

妻木先生:
やっぱり「家庭科・生物・化学」は大事ですね。家庭科では栄養素の基本やライフステージの違いについて学べますし、生物では人体のしくみ、化学では栄養素の構造や反応が理解できます。 

あと意外と見落とされがちですが、「算数や数学の基礎力」もすごく大事です。たとえば、お味噌汁の塩分濃度を計算したり、レシピの分量を調整したりと、現場では数字を感覚的に捉える力が問われます。 

— なるほど、理系科目も実はすごく密接に関係してるんですね 

妻木先生:
はい、まさにそうです。さらに言えば、歴史や文化にも興味がある子にも向いています。たとえば、源氏物語や昔の文学作品に出てくる「食」の描写を通して、昔の食文化に興味を持つという入り口もありますよね。 

本当に、栄養学っていろんな学問や興味とつながっているんです。だから、「これが好き」「これが得意」という何かがある高校生には、どこかで栄養学と接点が見つかるはずです。 

自分や大切な人を守る学問として 

— 最後に、進路に悩む高校生に向けて、何かメッセージをお願いします。 

妻木先生:
そうですね。私はよく学生に、「この学問は、あなた自身と、あなたの大切な人を守る力をくれる」と話しています。病気の予防や健康のサポートはもちろんですが、それ以上に、「食べることで人を笑顔にできる」ということが栄養学の本質だと思っています。 

そして、「追求することは楽しい」ということも伝えたいですね。栄養学の世界は、まだまだ未知のことがたくさんあります。自分が興味を持ったこと、もっと深く知りたいことがあるなら、それを追いかけてみてほしいです。 

— 本当に、食を通して人を幸せにしたいという思いが伝わってきました。今日はありがとうございました! 

まとめ 

妻木先生のインタビューを通して、栄養学がどれほど身近で、人の人生に深く関わる学問であるかが、ひしひしと伝わってきました。 

栄養学は、単に「健康を保つための知識」ではなく、病気の予防から治療のサポート、そして日々の“食べる喜び”に至るまで、私たちの暮らしを支えている学問です。そしてその中でも先生は、特に「食物アレルギー」や「災害時の食支援」といった、見過ごされがちな課題にも向き合い、食を通して誰もが安心できる社会づくりを目指しています。 

また、印象的だったのは「この学問を学ぶことで、あなたの大切な人を守れる」というメッセージ。誰かの笑顔を守りたい、そんな思いがあれば、どんな高校生にも栄養学の世界は開かれています。 

先生が語るとおり、栄養学は「食べるのが好き」という小さな動機からでも始められる学問です。そして、その学びはやがて“誰かを幸せにする力”へとつながっていく。 

進路に迷っている高校生へ——。
まずは、自分自身や身近な人の「食」について、ちょっと考えてみてください。
そこには、未来をつくるヒントが、きっと隠れています。 

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」ソーシャルロボティクス研究者・飯尾尊優先生に聞く

飯尾さま

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の専門家にインタビューを行い、学問の魅力を探ります。 

今回は、ソーシャルロボティクス(Social Robotics ヒューマン・ロボット・インタラクション(Human-Robot Interaction という分野を研究されている 飯尾尊優先生 にお話を伺いました。 

「ロボットが人を褒めると、どんな影響があるのか?」
「人と自然にコミュニケーションできるロボットとは?」 

ロボットと人の関係性を探る、先生の研究の魅力に迫ります。 

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飯尾先生の研究分野について 

― まず、先生のご専門であるソーシャルロボティクスやヒューマン・ロボット・インタラクションについてですが、これらはどのような研究分野なのでしょうか?

 

飯尾先生:
ソーシャルロボティクスもヒューマン・ロボット・インタラクションも、基本的には似たような分野です。どちらも「人とロボットが、柔軟で適切なコミュニケーションを取るためにはどうすればよいか」を考える学問ですね。 

ただ、違いをあえて言うならば、ヒューマン・ロボット・インタラクション(HRI)はその名の通り「人とロボットの相互作用」に特化した研究です。つまり、人間とロボットのやりとり自体を細かく分析し、どうすればスムーズな対話や関わりが生まれるのかを探る分野です。 

一方で、ソーシャルロボティクスの方はもう少し広い視点を持っています。たとえば、「社会においてロボットがどのように受け入れられるのか」「社会的に調和するロボットとは何か」といったテーマを扱います。そのため、社会的な受容性や倫理学的な課題、さらにはロボットの実装についても含まれることが多いです。 

― つまり、ヒューマン・ロボット・インタラクションは、ロボットと人の関係性を深く掘り下げる研究で、ソーシャルロボティクスは、より社会全体の文脈でロボットの役割を考えるということですね?

 

飯尾先生:
そうですね。その理解で大丈夫です。ただ、実際の研究では両者が明確に分かれているわけではなく、かなり重なっています。実験室レベルでロボットの動作を検証することもありますし、逆に社会にロボットを導入する際の課題を考えることもあります。どちらも共通する部分が多いですね。 

飯尾先生とロボットとの出会い 

先生はもともとロボットに興味があったのでしょうか?

 

飯尾先生:
いや、大学に入るまではそんなに興味なかったんですよ。むしろ情報系の分野が好きで、AIやデータ処理の研究をしたいと思っていました。 プログラムを書いて、コンピューターが自分で学習しながら答えを見つけていく、そういう「考えるシステム」に興味があったんです。 

でも、大学院に進学してから研究所のインターン に行くことになって、そこでロボット研究と出会いました。それが人生の大きな転換点でした。 

具体的に、そのインターンではどのような経験をされたのですか?

 

飯尾先生:
僕は「ロボットが自分で学習して動く」みたいなことを期待していたんですが、いざ研究所に行ってみると、全然違いました。ロボットは基本的に、プログラマーが決めた通りにしか動かない。 つまり、「こう動け」と命令したことを忠実にやるだけだったんです。 

それを見たとき、「え、ロボットってこんなに手作業なの?」 って思いました。僕の中では、「ロボット=自律的に考えて動くもの」っていうイメージがあったので、すごくギャップがありました。 

そんなとき、研究所の方に言われたんです。
「そもそも、まず動かすことが大事なんだよ」 って。 

「まず動かすこと」ですか?

 

飯尾先生:
はい。ロボットがどれだけ賢くなったとしても、ちゃんと動いて、人と関われる状態にならないと、社会で使えない ということです。どんなに高度なAIが搭載されていても、実際の生活の中で使えないと意味がない。だから、まずはロボットを動かし、人とのやり取りを観察して、そこから改善していくことが重要です。 

この考え方に出会ったとき、僕の価値観がガラッと変わりました。
それまで「ロボットが自分で考えること」にばかり興味があったのが、「ロボットが人とどう関わるかを研究する」 ことに興味が向きました

 

では、高校生が「まだ自分のやりたいことが見つからない」と悩んでいたとしても、大丈夫でしょうか?

 

飯尾先生:
むしろ、それが普通だと思います。僕自身も、ロボット研究をやろうと思って大学に入ったわけじゃないし、たまたまインターンでロボットと出会って考え方が変わりました。 

だから、「今やりたいことが分からない」からといって焦る必要はない と思います。大事なのは、そのとき目の前にあることをしっかりやること。勉強して知識を増やしていれば、ある日ふとしたきっかけで、興味のある分野に出会えるかもしれません。 

ロボットが人を褒める? その研究の背景とは 

— 先生の研究の中に、「ロボットが人を褒める」というテーマがありますよね。これはどういうきっかけで始まった研究なのでしょうか?

 

飯尾先生
ロボットと人間が会話するとき、どういうコミュニケーションをすれば良いかを考えたときに、「褒める」という行動は基本的にポジティブな影響をもたらすだろうという直感がありました。ただ、それが実際にどれだけ効果があるのかは、明確には分かっていなかったんです。 

人間同士の研究では、褒められることでモチベーションが上がったり、パフォーマンスが向上したりすることが分かっています。たとえば、キーボードのタイピングをする実験では、褒められたグループの方が翌日、より速く、正確にタイピングできるようになっていた、という研究があります。これは、脳の神経活動にも関係しているらしいのですが、詳しいことは専門外なのでそこまで深くは分かりません。 

それをロボットでも試したらどうなるか、というのが研究の出発点でした。 

— 実際の実験では、どのように検証したのでしょうか?

 

飯尾先生
まず、ロボットが人を褒めるグループと、ロボットが褒めずに単に「今〇回目です」と事務的に伝えるグループを用意して、どちらの方が良い影響を与えるかを検証しました。 

それだけでは少し単純すぎるので、もう一つ工夫を加えました。ロボットって、人間と違って簡単に増やしたり減らしたりできるんですよね。そこで、「複数のロボットが褒めたら、効果がより強くなるのか?」という点も調べました。 

—つまり、1台のロボットと2台のロボットで褒めるのを比較したということですか?

 

飯尾先生
そうです。「褒めないグループ」「1台のロボットが褒めるグループ」「2台のロボットが褒めるグループ」を作って、全員に同じ作業をやってもらいました。そして、翌日もう一度同じことをやってもらったところ、やはり褒められたグループの方がパフォーマンスが向上していた。そして、1台よりも2台で褒められた方が、さらに良い結果が出んです。 

— 面白いですね! それはつまり、ロボットが「人にとっての社会的な存在」として機能しているということですよね?

 

飯尾先生
そういうことですね。人間って、周囲の評価によって行動が変わることがあるじゃないですか? 例えば、友達に褒められたらやる気が出るとか、クラスの皆から応援されると頑張れるとか。ロボットでも同じような現象が起きるっていうのが面白いところです。 

特に、ロボットが2台になることで効果が高まるという点は、人間の社会的な振る舞いと似ていますよね。人から褒められるのと、集団から褒められるのでは受け取る印象が違うのと同じように、ロボットでも「複数から褒められる」ことで影響が大きくなる可能性がある、というのが示唆されました。 

ロボットが人間関係をサポートする? 

— 今回の研究を聞いていて思ったのですが、例えば高校生が新しいクラスに入ったとき、最初は緊張して馴染みにくいことがありますよね。こういう場面でロボットが間に入ることで、コミュニケーションが円滑になることもあるんでしょうか?

 

飯尾先生
まさに、それは将来的にやりたいことの一つですね。今、大学のキャンパスで、ロボットを使った「挨拶運動」のような実験をしようと考えています。ロボットが学生に「ちょっと〇〇さんと話してみたら?」と促したり、自然な形で人と人をつなげたりできるんじゃないかと。 

人間同士だと、例えば先生が「みんな仲良くしようね」と言っても、「うーん……」となることもありますよね。でも、ロボットなら、ちょっと空気を読まないくらいのおせっかいな介入ができるんです(笑)。「お前ら喋れよ!」と人が言うと角が立ちますが、ロボットが「〇〇さんと話してみなよ」と言うと、ちょっと笑いが生まれたりする。そういう形で、ロボットが人間関係をつなぐ役割を果たせるかもしれません。 

研究の面白さとは? 

— 最後に高校生に向けて、先生が考える「研究することの魅力」を教えてください。

 

飯尾先生
やっぱり、新しいことを発見できることですね。誰も知らなかったことが分かる瞬間って、すごくワクワクするんですよ。「これ、もしかしてこうなってるんじゃない?」と思って調べてみて、本当にそうだったときの感動は、研究ならではの楽しさです。 

それと、研究って一見難しそうに見えるけど、実は身近なこととつながっているんです。例えば今回の「ロボットが人を褒める」研究も、もともとは「人間って褒められると伸びるよね?」という素朴な疑問から始まっています。そういう「なんで?」を突き詰めていくのが研究の面白さかなと思います。 

— 本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

まとめ 

今回のインタビューでは、ソーシャルロボティクスやヒューマン・ロボット・インタラクションという分野を専門とする飯尾尊優先生に、ロボットと人との関係性についてお話を伺いました。 

飯尾先生の研究では、ロボットが人と自然にコミュニケーションをとるための仕組みや、人がロボットを社会の中でどのように受け入れるかを探求しています。特に「ロボットが人を褒めることによって、どのような影響があるのか」というテーマでは、ロボットの言葉が人の行動やモチベーションに与える影響を実験的に検証し、興味深い結果を得ています。 

また、先生自身のキャリアについても伺いました。もともとはロボットに特別な関心があったわけではなく、大学院でのインターンをきっかけにロボット研究へと進んだというエピソードは、高校生が進路を考える上でも参考になるかもしれません。「今やりたいことが分からないのは普通のこと。まずは目の前のことに取り組むことが大切」という言葉には、多くの高校生にとって励みになるメッセージが込められています。 

研究の魅力について飯尾先生は、「誰も知らなかったことを発見する瞬間が最高にワクワクする」と語ります。身近な疑問から生まれる研究が、実際に社会に役立つ形で応用される過程を知ることで、学問の持つ可能性を実感できるのではないでしょうか。 

ロボット研究に限らず、日常の「なんで?」という疑問を大切にすることが、未来の学びにつながるかもしれません。 

連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」エネルギーの研究をテーマに上坂先生に聞く

富山国際大学上坂 博亨先生

「電気はコンセントから来るもの」——そんな当たり前の考え方を、根本から変えてみませんか?

私たちの生活に欠かせない電気。しかし、その仕組みを深く理解し、エネルギーを「自分でつくる」ことを考えたことはありますか? 上坂先生は、小水力発電という再生可能エネルギーの研究を通じて、地域社会とエネルギーの自立を結びつける挑戦を続けています。

実は、研究の道は意外なところから始まることもあります。先生自身も、生物学から情報学、そしてエネルギー研究へと進み、多様な視点を活かしてきました。学問の世界は一つの道だけではなく、交差し、広がり、思わぬ発見につながるものです。

「自分の興味はどこにあるのか?」そんな問いを持つ高校生に向けて、本記事ではエネルギーの未来、研究の面白さ、そして進路を考えるヒントをお届けします。あなたの「学びたい」を刺激する一歩になるかもしれません。

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連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」国際教育をテーマに市瀬先生に聞く

 

市瀬教授

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントになります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の専門家にインタビューを行い、学問の魅力を探ります。 

今回は、「国際教育」を専門とする宮城教育大学の市瀬智哉先生にお話を伺いました。 

国際教育とはどのような学問なのか? 

日本と海外の教育にはどのような違いがあるのか? 

これからの時代に必要な学びとは? 

国際社会で求められるスキルや、高校生が今からできることについて、先生の研究をもとに詳しく解説していただきました。 

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連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」多様な学問を今に結び付けて研究を広げる片山先生に聞く

名古屋女子大学    片山直美

高校生にとって、大学でどのような学問が学べるのかを知ることは、進路選択の大きなヒントとなります。連載コラム「大学で学べる学問を知ろう」では、各分野の最前線で活躍する専門家にインタビューし、学問の魅力やその背景に迫ります。 

今回は、味覚・嗅覚・咀嚼力の変化の研究から、宇宙食の開発、さらには平衡機能や宇宙酔いに至る、幅広い分野で活躍される片山先生にお話を伺いました。 

 工学からキャリアをスタートさせ、調理や栄養学、そして宇宙医学へと道を広げた片山先生の独自の歩みは、「好き」を追求する情熱が未来を切り拓く好例です。インタビューでは、先生がこれまで歩んできた人生をお伺いしながら、「過去の経験」がいかに「今のキャリア」に結び付くのか、その魅力と可能性に迫ります。 

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  • (さらに)高める
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英語「bleed」の意味や使い方は?例文を交えて解説

「bleed」の意味は?どのように使う?

英単語「bleed」は、液体や感情が流れ出る様子を示す言葉です。具体的には「出血する」「血を流す」「樹液を出す」といった意味があります。また、資源やお金が過剰に失われる状況を表現する際にも使われます。ここでは、さまざまな「bleed」の使い方について、分かりやすく解説していきます。

  • 出血する
  • 血を流す
  • 樹液を出す
  • 資源やお金を失う

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英語「faint」の意味や使い方は?例文を交えて解説

「faint」の意味は?どのように使う?

英単語「faint」は、何かが微かで不明瞭な様子や、力が弱くてはっきりしない状態を表す言葉です。「かすかな」「ぼんやりした」「弱々しい」といった意味があります。また、「気が遠くなる」「めまいがする」という意味でも使われます。ここでは、「faint」のさまざまな意味とその使い方について、わかりやすく解説していきます。

  • かすかな
  • ぼんやりした
  • 弱々しい
  • 気が遠くなる
  • めまいがする

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英語「disrupt」の意味や使い方は?例文を交えて解説

「disrupt」の意味は?どのように使う?

英単語「disrupt」は物事の流れや状態を大きく変えたり、混乱させることを指す言葉です。例えば、何かが突然予定通りにいかなくなったり、秩序が乱れたりする時に使われます。この単語は、少々ドタバタした場面をイメージさせますね。ここでは「disrupt」のさまざまな意味とその使い方についてわかりやすく解説していきます。

  • 混乱させる
  • 中断させる
  • 途絶させる

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