英語の発音は、ある意味で文法や英作文よりも難しい要素です。学校でも文法ほどしっかり習わないし、知識だけではどうにもならない、時間をかけて体にたたき込む必要がある要素だからです。
発音は「英語らしく」「英語っぽく」と意識するだけでもだいぶそれらしくなるものですが、そうした(半ば付け焼き刃の)発音に頼った場合にたいてい特定の誤りを犯してしまいがちです。少し意識してみる価値はあるでしょう。
この手のちょっとした誤りを指す語としては「ミス」という言い方がいちばんしっくり来ますが、英語では「ミス」とは言わず mistake という(つまり「ミス」は和製英語である)点は踏まえておきましょう。
語末の子音の後ろに母音をつけてしまう
日本人英語学習者が最も陥りやすいミスは、単語の語末の子音を、ないはずの母音と合わせて発音してしまうことです。余計に母音を付けて発音をしてしまうと、異なる英単語に聞き間違えられたり、正しく聞き取られなかったりする場合があります。
日本人英語学習者が語末に母音を付けてしまいやすいパターンは主に3つに区分できます。
日本語に外来語・カタカナ語として定着している英単語
日本語の中でカタカナ語として普通に用いられている語は、原語である英単語を発音する場合も、日本語における発音に寄せてしまいがちです。
特に、子音で終わる語に母音を付けて発音してしまう傾向は、なかなか克服しにくい部分です。friend や hot などはよほど意識しても語末に日本語的な母音を加えてしまいがちです。
- friend(/frɛnd/)
- hot(/hɒt/)
- table(/ˈteɪb(ə)l/)
- beautiful(/ˈbjuːtɪf(ə)l/)
- nice(/nʌɪs/)
発音とは別にアクセント(強弱アクセント)がないと英語らしい発音には聞こえません。日本語感覚で発音すると抑揚のないのっぺりした言い方になりがちです。
一般動詞の現在分詞形
一般動詞を現在進行形などで用いたい場合、一般動詞は現在分詞形に直して用いられます。現在分詞形は基本的に「一般動詞の原形+ing」で表されます。多くの日本人英語学習者は語末の「g」の後に、母音「u」を付けて発音してしまいます。「g」を短く、跳ねるように発音すると、母音が残りにくくなるでしょう。
- watching(/wɑ́tʃɪŋ/)
- playing(/pléɪɪŋ/)
- taking(/ˈteɪkɪŋ/)
例えば、playing を発音する場合、日本語でいうと プレイン に近い発音になります。「グ」はおまけ程度に考えておくとよいかもしれません。
一般動詞の過去形・過去分詞形
多くの一般動詞の過去形もしくは過去分詞形は「動詞の原形+ed」で表されます。過去形もしくは過去分詞形を発音する場合、日本人は、日本語カタカナ表記の「~ト(ゥ)」「~ド(ゥ)」に近い発音をしてしまい、語末の母音を強めに発音してしまう傾向があります。発音記号に従って発音することが大切です。
- waited(/weɪtɪd/)
- talked(/tɔːkt/)
- enjoyed(/ɪnˈdʒɔɪd/)
必要以上に(必要ない部分で)巻き舌を使ってしまう
いわゆる巻き舌は、西欧の言語らしい雰囲気を演出できる小技といえますが、これを意識しすぎると「過ぎたるは何とやら」という状況になりがちです。
英語が舌を巻いて発音しないというわけではありませんが、巻き舌と捉えるべき例はかなり限られます。r の発音も、舌を巻巻いて発音するというよりは、喉を鳴らして発音する、という要領で捉えた方が正しい発音に近づきます。
舌を巻いてそれらしく発音すつという微妙にズレた認識は、初学者よりもむしろ中級者、ちょっと自信がついてきた段階の人が陥りがちだったりします。
LをRに置きかえて発音する場合
R と L の発音の区別がつかない場合、無意識的に L を R に置き換え、舌を巻いて発音してしまいます。R と L の発音を区別した上で、正しい L の発音を学びましょう。
- collect(/ˈkɒlɪkt/)
- people(/ˈpiːp(ə)l/)
R も L も含まない英単語で発音する場合
英語っぽく発音するぞ!と意気込んでしまうと、R を含まない英単語でも舌を巻いて発音してしまいます。発音記号で表すと /aʊ/ や /əʊ/ の音がある場合に、舌を巻いて発音してしまうとされています。極端な例をいえば、house(/haʊs/)を /harʊs/ のように発音してしまう場合があり得ます。
- bag(/baɡ/)
- house(/haʊs/)
/θ/ と /s/ と混同して発音してしまう
英語の /θ/ の発音は、日本語ではまず使わない、日本語にはないと言ってよい音です。日本人は /θ/ が発音できず、 /s/ の音で代用してしまいがちです。
/θ/ の発音を練習して、きちんと習得するまでの間は、 /s/ で代用してしまうこともやむを得ません。早々に /θ/ の発音の要領を身につけて克服しましょう。
/t/ として発音してしまうと、全く別の英単語として解釈される可能性があります。
/θ/ はスペルでいうと、「th」にあたる音です。正しく /θ/ と発音する場合には、舌先が上下の前歯に挟まれるような位置で止めて発声をします。
例えば、think と thing の発音を間違えると、それぞれ sink(/sɪŋk/)と sing(/sɪŋ/)として聞き取られる場合があるので注意しましょう。
- think(/θɪŋk/)
- thing(/θɪŋ/)
例えば、think は日本語でいうと、シンク と発音されるのではなく、スィンク に近い音で発音されます。
文全体としてのつながりがない
単語ごとにしっかり発音しようという意識が強い場合、文全体に抑揚がなく、単語がバラバラに聞こえてしまいます。英語には単語間での音の連結や欠落があるほか、助詞や冠詞などの重要でない部分は早く話すことでリズムを作る、という特徴があります。
- There are many bridges in this city.
There are を発音する場合、日本人は、ゼイ・アー と単調に読んでしまいがちです。しかし、英語では単語同士を連結させて話します。そのため、There are は日本語で ゼアー のような音で発音されます。