英語の会話表現では、発音やアクセントに加えてイントネーション(intonation)=抑揚も、重要な音声要素です。基本的な抑揚の付け方をおさらいしておきましょう。
声の抑揚・イントネーションは、文意を正確かつニュアンス豊かに伝えるために欠かせない要素です。抑揚の付け方を誤ると、文意が伝わり方が変わる場合もあり得ます。
抑揚・イントネーションの基礎知識
文章表現におけるイントネーションは、文章中あるいは文末の音の高低を変化させて、文意や感情を示す表現方法です。
イントネーションは文意を左右する
声の抑揚はコミュニケーションを円滑にする上で決してないがしろにできない要素です。
日本語でも、たとえば「昨日テレビ見た」と述べる場合、平板に述べると「自分はテレビを見たよ」という報告として伝わり、語尾を上げて「昨日のテレビ見た?」と述べると相手に対する質問の意味で伝わります。
英語にも、語尾のイントネーション次第で文意が変わる表現は多々あります。
たとえば excuse me は、平板な調子(下げ調子)で Excuse me. と述べると「ちょっと失礼しますよ」と声を掛ける表現になり、上げ調子で Excuse me ? と述べると「今なんと仰いましたか」と尋ねる表現になります。
イントネーションの種類は「上げる」「下げる」の2種類
イントネーションは「上げ調子」と「下げ調子」の2種類で構成されます。
場合によっては「上げる」か「上げないか」と区分してもよいかもしれません。
上げ調子は、語尾を相対的に高い音で発音します。Do you have a pen? のような疑問文が典型的な上げ調子の文です。
下げ調子は、語尾の音を高めることなく平板に述べる言い方です。I have a pen. のような平叙文は下げ調子、文章表現の基本は下げ調子です。
イントネーションはあくまでも目安
英文のイントネーションのルールは、ある程度パターン化できます。とはいえ、それが絶対的な原則とというわけでもありません。
イントネーションは話者の気持ちに左右される部分も大きく、一般的な抑揚の付け方を逸脱する場合も多々あります。基本からの逸脱を過度に恐れる必要はありません。
しかしながら、適切な逸脱は、やはり基本が身についていてこそ可能な芸当です。まずは標準的なルールを把握しておくべきでしょう。
英文を「下げ調子」で述べる場合
いわゆる平叙文、普通の叙述
下げ調子は文章叙述の基本の形です。ことさら上げ調子で述べるのでないなら、下げ調子になります。
肯定、断定、説明、陳述の趣旨で述べられる文章は基本的に下げ調子です。この辺の要領は日本語とほぼ同様と考えてよいでしょう。
WH疑問文
英語の疑問文は基本的に上げ調子で述べられますが、疑問文のうち What、When、Where、Why、Who、How の疑問詞(5W1H)を文頭に用いる文章は基本的に下げ調子で述べられます。
A or B の二者択一パターン
or(または)の語を用いて「AかBか」という選択肢を提示する場合、疑問文であっても文末は下げ調子で述べられます。
ただし、最初に提示する選択肢(「A or B」における A )は上げ調子で述べます。その上で第2の選択肢を下げ調子で述べます。
念押し・念のため確認の付加疑問文
いわゆる付加疑問文は、文末に言い添えて相手に尋ねるため用いられる表現です。
付加疑問文は、上げ調子で述べられる場合もあれば、下げ調子で述べられる場合もあります。
すでに知っている、分かっている、察しがついている、けれど一応(念のために)問いかけてみる、という意味合いで付加疑問文を用いる場合は、文末を下げ調子で述べます。
純粋な質問として、あるいは反語的なニュアンスを込めた問いかけとして付加疑問文を用いる場合は、上げ調子です。
英文を「上げ調子」で述べる場合
上げ調子のイントネーションは、基本的に、「相手に話を振る」意味合い、あるいは、「話はまだ終わっていないと相手に予感させる」意味合いで用いられます。
Yes か No かの返答を期待する問いかけ
相手は Yes または No の一言で回答できる種類の質問は、基本的に上げ調子で述べます。
平叙文でも問いかけ表現として機能する
Do you ~?を尻上がり調子で述べる理由については、《疑問文は尻上がりに発音するものだから》というような理屈でも捉えられそうです。しかしながら「Yes か No かの問いかけ」という点に焦点を当てた把握の方が英語の実際的感覚に馴染みます。
「Yes か No かの問いかけ」という点に焦点を当てて把握すると、ただの平叙文でも語尾を上げ調子にすると疑問文として機能するという実用上の用法が腑に落ちやすくなります。
ペン持ってる?
コーヒーでもどう?
驚きなどの感情を存分に込めた相づち
相づち表現のうち、うそ?それ本当?というような驚きの感情を表現する場合、上げ調子で述べられます。
昨日クルマを衝動買いしちゃったんだ
What?↗(上げ) Really?↗(上げ)
え~!マジで?
入学試験通ったんだ!
Oh, did you?↗(上げ) Congratulations!
へーそうなの! おめでと!
とりわけ感情を込めて強調する語
文中の特定の語に特に強い感情を込めて強調したい場合、相づち表現に限らず、上げ調子で述べる場合もあります。
本当にすまないんだけど、君から借りた本なくしたっぽい
WHAT?↗(上げ) You lost my BOOK?↗(上げ)
は? なくした!?(おいおい嘘だろ!)
財布はどこだ? あなたココにいましたよね
ExCUSE me?↗(上げ)
なんですと?(まさか私を疑ってるのか?)
聞き返す意味で用いる語
よく聞き取れなかったり、意味が分からなかったりして、相手に「もう一度言ってくれないか」と促す意味を込めて用いる語は、上げ調子で述べられます。
Sorry や Excuse me のような表現が主に該当します。
この間ウーパールーパー見に行ったんだ
Sorry?↗(上げ) You saw what?↗(上げ)
え?何を見に行ったって?
複数の項目を並置して A, B, C, and ~と述べる場合
複数の同じような要素を並べて、間を置く形で列挙していく場合、書き言葉にするとカンマを使って記述されますが、このカンマが置かれる部分は上げ調子で述べられます。
最後の項目は and と続けて述べられ、ここだけ下げ調子です。
純粋な質問として用いる付加疑問文
付加疑問文のうち、まだ自分がよく把握できていないことを質問する意味で用いる場合は、上げ調子で述べます。
あなたパーティーに参加しないんだよね?
自分のやらなきゃいけないことちゃんと理解した?
すでに自分が理解・把握していることを一応確認するという場合は下げ調子です。
従属接続詞が文頭に用いられた文節
従属接続詞から始める文は、文中でいったん間を置いて(カンマを打って)文章を前後に分けます。この間を置く部分を上げ調子にします。
木曜日なら、遅い時間でも大丈夫です
本を読んでるうちに寝てしまった
上げ調子で述べることで、文章が途切れていない、まだ続く、と察しやすくなります。
イントネーション次第で文意が変わる場合も少なくない
文章そのものは全く同じでも、抑揚の付け方によって発言の趣旨が違って伝わる場合があります。
書き言葉ではクエスチョンマーク(?)の有無で表現されますが、話し言葉ではイントネーション使いで表現することになります。
お皿洗ってくれた?(通常の疑問文)
Have you washed the dishes?↘(下げ)
(もちろん)お皿洗ったよね?(※相手にYesを期待している)
マネージャーとお話できますか(※通常の丁寧な問いかけ)
Can I speak to Manager, please?↘(下げ)
マネージャーと話したいのだが(※相手にYesを期待している聞き方、命令調のニュアンスが含まれる)
すみません(もう一度言ってください)
Excuse me.↘(下げ)
ちょっとすみません(※人の注意を引く場面で用いられる言い方)