英国発のケンブリッジ英語辞書(Cambridge Dictionary)は毎年末に「今年の英単語」(Word Of The Year)を発表しています。2017年のケンブリッジ版「今年の英単語」は populism です。
「Word Of The Year」は英語辞書メディア各社がそれぞれ独自に発表している恒例行事。見比べて吟味堪能するのは年の瀬の楽しみのひとつです。
- 2017年のウェブスター英語辞書「今年の英単語」は「Feminism」
- 2017年のオックスフォード英語辞書「今年の英単語」は「youthquake」
- 2017年のコリンズ英語辞書「今年の英単語」は「Fake News」
- 2017年のウェブリオ英和辞書「今年の英単語」は「fact」
Cambridge Dictionary’s Word of the Year 2017 は populism (ポピュリズム)
ケンブリッジ英語辞書による「Word of the Year」は、同社が提供しているオンライン辞書「Cambridge Dictionary」の検索動向に基づき、その年を象徴する単語を発表する催しです。
キーワードの選定は、年間を通じて多く検索された語であり、特定のタイミングで急激に検索数の突出(スパイク)が見られた語である、という点が主な基準となっています。
そしてケンブリッジ英語辞書版「Word of the Year」には populism が選ばれました。
populism とは
populism とは、Cambridge Dictionary の定義によれば、「大衆が欲するものを与えることで、彼らの支持を得ようとする政治思想や政治活動」のことです。
political ideas and activities that are intended to get the support of ordinary people by giving them what they want
日本語では「人民主義」と訳されることもありますが、そのまま「ポピュリズム」と表記される場合の方が多いでしょう。
-ism が含む微妙なニュアンス
populism の語末の「-ism」は、思想や主義という意味合いを付与する接尾辞です。語幹の popul- 部分はラテン語で「民衆の」という意味の populus に由来が求められるでしょう。
接尾辞 -ism は、対立する立場や見解があるということを暗に示す表現でもあります。そして批判・皮肉めいたニュアンスで用いられる場合がままあります。
populism の語も、本来の意味としては「多くの市民から支持を得ようとする政治行動」のように解釈し得ますが、実際は大衆迎合的・扇動的・衆愚的であるといったニュアンスを示す語として用いられる場合が多かったりします。
ケンブリッジ英語辞書が自社の蓄積した大量のデータ(コーパス)を調べたところでは、 populism の語もほとんどの場合は「人々を出し抜くニセモノの政治」という意味合いで用いられていたようです。
急上昇のきっかけはアメリカ新大統領就任
populism の語が急上昇を見せたのは年始早々、1月22日。アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプが就任した2日後のことです。
1月22日はローマ法王が雑誌インタビュー上でポピュリズムの台頭に警鐘を鳴らす趣旨の発言を世に出した日でもあります。
ローマ法王は3月にも、ドイツの週刊紙「Die Zeit」のインタビューでも再びポピュリズムに言及しています。