英語の本を読む(洋書を読む)という英語学習法は、効果的な英語学習方法としてよく挙げられます。でも初心者にはどうしても敷居の高さというか、上級者向けの印象を感じやすい側面もあります。
でも大丈夫、初心者には初心者なりの洋書の読み方・選び方があります。
英語の学び始めの最初の教材としてオススメできる「英語の本」として、児童向け図書として作成された絵本があります。敷居が低く、英語への抵抗感を打ち消す意味でも良い手がかりになるでしょう。事によっては、そのへんの教科書・参考書よりも日常英会話の勉強に役立つかもしれません。
絵本の「易しさ」が英語教材として優れている
英語を学ぼうとも思って早々に挫折してしまう、その大きな要因は「英語がまっっったく分からない」という絶望感と、読めるようになる気がしないという徒労感です。
分からない文章や単語は辞書で引いて意味を確認するけれど、最初のうちはキリがない。単語の意味を調べていると文章全体の内容を見失ってしまう。そんなことを続ければ、読める気がせず挫けてしまうのも仕方ありません。
その点、絵本は単語や文法も分かりやすく、内容も把握しやすく、敷居が低いため英語初心者にとってとっつきやすさがあります。もちろん絵本だって立派な勉強法です。
単語も表現も文法も分かりやすく学べる
絵本は基本的に子供向けに書かれた児童書です。用いられている言葉や表現は基礎的な語彙に限られ、文章もシンプルな単文ばかり。
絵本ならではの擬音表現や詩的な表現が含まれることもありますが、挑発的な複雑で難解な表現とはほぼ無縁です。
挿絵から視覚的に学べる
絵本の特徴である挿絵は、文章の記述の視覚的イメージ形成を補助してくれます。
英語はビジュアル化して理解せよ!という学習法のセオリーがありますが、絵本は正にこれを地で行く教材です。
絵本にも場面が想像しにくい描写が出てくることはあります。そんな場面に挿絵が入ります。挿絵を見れば、この英文はこういう事を言ってるのかという察しがつきます。そして、表現とイメージが結びつき、表現の把握・定着の度合いが強化されます。
生活文化や考え方も学べる
絵本は、言葉を学ぶ要素や想像力を育む要素に加えて、物語の背景となる文化も学べます。登場人物の行動や持ち物は、その物語の誕生した国(あるいは時代)の雰囲気を多かれ少なかれ宿しているものです。
たとえば外国の子供部屋、小学校の定番ランチ、悪いことをした時の罰、イタズラに成功したときの喜び方など。文章からは見出しにくくても、挿絵が教えてくれます。
無料で英語の絵本が読めるオススメサイト
絵本を絵本としてじっくり味わうなら、書籍として入手するに越したことはありません。丁寧に制作された絵本の雰囲気は、手元にあるだけで心がホンワカすること請け合い。とはいえ、洋書を何冊も購入するのは大変です。
ウェブ上には無料コンテンツとして絵本を公開しているウェブサイトがいくつかあります。上手に利用すれば、手軽な教材コンテンツとして、絵本選びのサンプルとして、あるいは勉強中の息抜きとしても、長く役立ってくれるでしょう。
BrillKids
初級:幼児向け絵本
幼児向けの絵本を電子書籍として無料でダウンロードできるサイトです。絵本は印刷も可能です。
日本でもよく知られている「三匹の子豚」(The 3 Little pigs)などの絵本コンテンツも閲覧できます。よく知っている話を英文で読み直すことは英語学習という点でも恰好のの学習法です。
Children’s Books Online
初級~中級:幼児向け絵本~大人向け小説
Children’s Books Online: the Rosetta Project, Inc.
幼児向けから大人向けまで、数多くの絵本と、多言語での翻訳が載っているサイトです。絵本はボランティアによって提供されています。
絵本は”the Rosetta Project”というボランティアによって提供されており、サイトの利用者は翻訳者としてボランティアに応募することもできます。
Children’s Storybooks Online
中級~上級:小学生向け絵本~青少年向け小説
Children’s Storybooks Online – Stories for Kids of All Ages
幼児向けから青少年向けまで、40ほどのイラスト付きのストーリーを読むことができます。易しい絵本から難しいストーリーまで、幅広く用意されています。
青少年向け(For Young Adults)の各ストーリーは、とりわけ分量も豊富で内容的にも読み応えがあります。音声付きコンテンツもあり、まずは耳から英語のロングストーリーに慣れていくのも良いでしょう。
幼児向け(Books for Young Adults)の何冊かには、量が多くて朗読付の物もあります。自分のレベルに合わせて朗読を聴くと良いリスニングの練習になります。
Project Gutenberg
初級~上級:幼児向け絵本~大人向け小説・学術書まで
著作権切れ(パブリックドメイン化した)書籍を無料で公開しているウェブサイトです。サイト自体は絵本に限らず小説・歴史・戯曲など多岐にわたるコンテンツを公開しています。
絵本は Children’s Picture Books の一覧などから辿れます。
「ピーターラビット」「赤ずきん」「アラビアンナイト」「イソップ寓話」といった、古いけど著名な絵本コンテンツがたくさん見つかります。
「The Tale of Peter Rabbit」 Beatrix Potter, 1902
安価で購入オススメ絵本
また、日本でも有名な作品を実際に買って読むという手もあります。ネット通販のサイトでは、たいていのものは安いもので100円から、高くとも1000円で購入することができます。
いわゆる有名どころの作品はもちろん海外でも有名です。英語版のタイトルが分かれば、見つけることは容易です。
- 腹ペコ青虫 (the Very Hungry Caterpiller)
- ピーターラビット (the Tale of Peter Rabbit)
- ジャックと豆の木 (Jack and the Beanstalk)
- 醜いアヒルの子 (The Ugly Duckling)
- うさぎとかめ (The Tortoise and the Hare)
- 三匹の子豚 (The Three Little Pigs)
- 北風と太陽 (The North Wind and the Sun)
- あかずきん (Little Red Riding-Hood)
- シンデレラ (Cinderella)
- 眠れる森の美女 (Sleeping Beauty)
- 裸の王様 (The Emperor’s New Clothes)
物語の根源は西欧のおとぎ話だったりする場合が多く、必ずしも原著・原題が英語とは限りません。
実際に手元に本があると、読みたい気持ちは高まるものです。モノを座右に置くというのも、ある意味りっぱな勉強法です。
絵本はもちろん年齢を問わない学習法
絵本の典型的イメージに「子供騙し」のような要素を見出す方もいるでしょう。たしかに、そういう種類の絵本もあります。他方、絵本の中にも良質な絵本、大人が読んでも新鮮な味わい深い物語もたくさんあります。
絵本選びは絵本を使った学習法の最初の重要なポイントです。
絵本は幼時の印象と深く結びつくものでもあります。
もし自分が幼い頃に読み聞かせてもらった絵本の英語版が見つけられたなら、幼少時の記憶を思い起こしつつ、他方では新鮮な気持ちで、楽しく学ぶことができるでしょう。
お子さんのいる方はぜひ英語の本を読み聞かせてあげてください。お子さんが耳で英語に接する良いキッカケとなります。読み聞かせることで発音の練習もできます。(聞かせる相手がいるといないとでは心境が大違いですし、発音ヘタでも受け入れてくれる幼児は恰好の相手です)
独身の方は、いずれ授かる子供のために絵本の読み聞かせをイメトレしてみてはいかがでしょうか。やはり読む際の心持ちが変わってくるのではないでしょうか。
効果的な読み方
絵本を使った学習法は、やはり読むこと(音読)が大きなコツといえます。
声に出して読む
絵本を構成する文章は音感がとても重視されています。モッサリ黙読して終わりとしてしまわず、声に出して明朗に読み上げてみましょう。英語のリズム感の、凝縮されたエッセンスのようなものがきっと感じ取れるハズです。
音源つきの絵本は、子どもに正しい英語を聞かせて学ばせることを意識した丁寧な英語の読み方を学べます。発音の仕方や音の強弱だけでなく、息継ぎの箇所や感情の込め方(声音のニュアンス)なども大いに参考になるでしょう。リスニングやスピーキングの学習法としてもよい教材になるというわけです。
挿絵として使われている絵の中のものを英語で言ってみる
受験英語の影響もあってか、少し難しい単語は知っているが、生活に根ざした、例えば裁縫用の糸は yarn など、実はあまり知られていない単語が挿絵の中には多く登場します。分からないものは調べて、すでに知っているものも口に出すことでボキャブラリーを増やしましょう。
形容詞単語帳を作る
何かを表現するとき、 good や great と言っても何の問題もありません。しかし、それらばかりを使っていると何か物足りなく感じるかもしれません。絵本では使いやすくて分かりやすい形容詞が多く登場します。 wonderful や kind 、 thoughtful などです。これらを単語帳にして形容詞表現を増やしましょう。
状況に応じて自分に合った教材を選ぼう
絵本といっても内容はさまざまです。ファンタジー色の濃いものから、昔話、寓話、日常生活を切り取ったものまで、多種多様です。絵本とひとくくりにしてしまわず、興味の持てる内容の本を選びましょう。
絵本の中にも文章の難度の違いがあるという点も、絵本選びの際には意識しておくべきでしょう。
絵本以外の勉強法のほうが合うという場合もある
また、「初学者だから絵本で」という考え方が一概に太鼓判を押せない場合もあります。英語の知識の程度によっては、絵本などよりもむしろ、ある程度しっかりした学術的な本の方が読みやすくて学習効果に結びつきやすい場合もあります。
何しろ学術書は合理性・整合性・現実性を主眼とする文章です。いくらか文法やボキャブラリーを身につけている方は学術書の法が読み応えを感じやすいかもしれません。
「万人が絶対に効果の出せる勉強法」のようなものは、さすがにありません。絵本はかなりオススメできる学習法ではありますが、他の本を手がかりとする勉強法も決して引けを取りません。
これはと思える学習法を見つけるための準備・検討は、早計にならず、ある程度の労力を割いて判断するだけの価値があります。いろいろな学習法を比較して自分にとっての最適な学習法や教材を選び取りましょう。