インタビュー:LCA国際小学校・山口紀生学園長に聞く「LCA国際学園はいかにして誕生したか」

2016年6月某日、神奈川県相模原市にあるLCA国際小学校へお邪魔してきました。ひょんなきっかけから、LCA国際小学校を運営するLCA国際学園・山口紀生学園長のお話を伺う機会を得られたのです。

インタビューで伺った内容を2部に分けてお届けします。第1部は学園設立までの経緯や今日に至るまでの紆余曲折についてお話頂きました。

第2部は「LCA国際学園の英語の教え方」です。

【LCA国際小学校とは】
LCA国際小学校は、2008年に開校した日本初の「株式会社立認可小学校」です。学校法人ではなく、株式会社が運営する小学校。当時の小泉内閣が推進した「構造改革特区」制度によって実現しました。授業は基本的に英語で行われます。低学年(1~3年生)は国語を除く全教科を、高学年(4~6年生)は基礎科目以外の教科を英語で取り組みます。教師陣の約半数は外国出身の英語ネイティブスピーカーです。「日本初」と「日本唯一」の称号を多く持つ、ユニークで破天荒な小学校です。

校舎は2015年度から授業を開始したばかりの新校舎です。外観もさることながら、校内も明るく開放的な造りが印象的でした。

第1部 LCA国際学園はいかにして誕生したか

山口学園長の経歴や学校設立の経緯は、同校公式ウェブサイトの「EDURE LCAの歩み」および「メディア掲載」の記事で詳しく紹介されています。そこから見えてくるのは、学園長はかつて公立小学校の教師だったこと、学校教育のあり方に限界を感じ教師職を離れたこと、そこから独自の教育のあり方を模索しはじめたこと。そして、当初は「英語教育」に特に着目していたわけではなかったこと。

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英語教育に目を向ける発端

―― 過去のインタビュー記事を拝読して、英語教育が出発点ではなかった点に意外さを感じました。どのようにして今日の英語教育にたどり着いたのでしょうか。

私が小学校の教諭をしていた頃は、現場では「これをしなさい」「これはしてはいけません」ということを子どもたちに言っていました。つまり、子どもたちが「これをしたい」といえる環境がありませんでした。「したいこと」を言える子を育てたいという思いで、塾を作りました。

作った塾では、アウトドアアクティビティ(野外活動)を取り入れて、子どもたちに楽しいことをたくさん経験してもらいました。楽しい経験を通じて「したいこと」の言える子どもが育つと考えたので。北海道でキャンプとか、もう国内でできることは全てやりましたね。

それから今度はアメリカのアイダホ州に、ホームステイを兼ねたアウトドアアクティビティに行ったんです。ここで、子どもたちが想像以上に英語が話せないことに気付いた。中学生でも全然話せない。これは何とかしないと、と思いましたね。これが英語に着目したきっかけです。

帰国してからいろいろと英会話学校を見て回りましたが、どうも納得できるところがない。それなら自分で作ってしまおうと思って、英会話教室を作りました。私も英語は話せなかったので、外国人教師を呼び寄せて。

英会話教室の限界からイマージョン教育へ

英会話教室を10年ほど自分なりの方法で運営しましたが、限界を感じていました。生徒の英語力がどうも思うようには伸びない。

なぜかというと、英語を使う場所がないんですよ。週に1回、英会話教室で英語を習っているとして、次週の授業まで英語を使う機会がない。

それなら英語を使う場所を作ろうと考えて、パーティーや英語村での英語漬け生活などを行いました。でも年1回程度のイベントだと、そのときは上達しても、すぐに薄れていってしまう。

もっと日常的に英語を使う場所を作るにはどうしたらいいか。いろいろと考えましたが、例えば理科の授業で「この虫を知っている?」とか「この動物を見たことがある?」といったことを英語でやったらどうかな、というようなことを考えました。

授業の半分は英語を習って、残りの半分は習った英語を使って他の英語を習う。そういうコースを作りました。はじめは土曜日に3時間だけ、1時間半ずつ。これを始めてから、子どもたちの英語力がかなり伸びたんです。「ああ、これだな」と思いましたね。

その当時はまだ「イマージョン教育」という言葉は知りませんでしたけれどね。

イマージョン教育:未修得の言語を身に付けさせるために、あえて未修得の言語で他の教科を学ばせ、その言語に浸す(immerse)という教育方法。

幼稚園の設立そして小学校の設立

まずは幼稚園(LCAインターナショナルプリスクール / 現・LCA国際プリスクール)を設立しました。義務教育の小学校とは違って、幼稚園は認可が必要ないので。

教師は外国人で、園児はみんな日本人。それで図工や運動を英語でやるんです。これはとても効果がありました。全然英語を話せないところからスタートして、最終的には日常会話に困らないくらいに上達します。

園児の保護者の方からは「小学校も作って欲しい」という要望を頂くようになりました。卒園すると英語を使う場所がなくなってしまいますから。しかし小学校は幼稚園ほど簡単には作れません。

まずは、寺小屋のようなものを作りました。小学校にあたるものですが無認可の施設です。無認可なので学割がもらえないというような難点もあったわけですが、これで子どもたちの英語力はかなり伸びました。

これを何とか正式な小学校として認可して欲しいと、何年か交渉しているうちに、小泉内閣の「構造改革特区」が成立しました。これで株式会社でも小学校が作れるようになった。そうして、2008年に認可が取得できました。

それまでの学校運営は土地を借りて家賃を払う形でしたが、新たにここ(相模原)に土地を購入して、校舎も作った。それが完成して、2015年4月からここで授業を始めています。

入学後に初めて英語に触れる生徒も

―― 生徒さんはみんな LCA国際プリスクールから上がって来た方でしょうか?

およそ半数弱がLCA国際プリスクールから上がってきた子で、半数は他の、英語教育に力を入れている幼稚園などからきた子たちです。

それまで全く英語を話す環境にいなかった子も入学しています。その場合、最初の数ヶ月は別のカリキュラムを組んで英語力を追いつかせてから合流させています。

周りの子どもが英語で話す環境があれば、英語ゼロの状態で入ってきても、授業を理解するレベルにはすぐに追いつきます。語彙力のような水面下の知識の量はまた別でしょうけれど。

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英語の授業jの様子

塾通いの禁止のわけ

―― 生徒さんは校外で英語塾に行ったり、家庭で英語を使ったりするのでしょうか?

塾通いは禁止しています。習い事はOK、たとえばサッカーやピアノなんかはOKです。

塾に通い出すと、学校が終わっても夜まで塾で勉強して、家に帰ってから塾の宿題をこなして……となってしまって、生活は乱れるし、習い事を続ける余裕もなくなってしまいます。しかし、海外に出て国際人として渡り歩いていくには、好きなことを続けていく姿勢は大切です。

保護者の方々には、「受験勉強は学校でしっかり教えますので、習い事は続けてください」とお伝えしています。この方針は設立当初から一貫しています。

最初は、「学校の授業だけで受験を乗り越えられるのか」と不安がる親御さんもいました。今では実績も着実に出せているので、だいぶ安心して任せて頂けていると思います。

LCA国際学園の描く未来

―― 過去のインタビュー記事では、カレッジの設立を視野に入れていらっしゃるお話がありました。これから中学、高校、大学と順次拡大していく構想でしょうか?

はい。中学と高校についてはすでに保護者の方から要望も頂いています。

カレッジは今のところ芸術系を考えています。それは私がもともと芸術家になりたかったということもあるんですが(笑)……

今は、芸術家を目指すとなると海外留学が必須という流れがあります。それを、日本に優秀な教師を招聘して、日本国内でもかなりのレベルまで学べるようにしたい。そうなると言葉の壁がネックになります。海外から招いた先生が日本語で授業するのはかなり厳しいので。これを解消しようというのが現在のカレッジの構想です。

幼稚園からカレッジまで揃ったら「LCA国際学園」の完成かなと考えています。当初は70歳までに実現したいと考えていましたが、現在63歳で、もうだいぶ迫ってきています(笑)。ですから、もっとスピードアップしていかないと、と思っています。

第2部「LCA国際学園の英語の教え方」へ続く)

関連サイト:
LCA国際学園(http://lca.ed.jp/)
エデューレコミュニケーションズ(https://com.edure.co.jp/)


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