日本語の「また」は、英語に訳せそうで訳しにくい表現です。英語で「また」のニュアンスを正しく表現するには、まず日本語の「また」のニュアンスを正しく知る必要があります。
しかし英語で「また」に相当する表現を使い分け、使いこなすことは、難しいことではありません。使い慣れた日本語表現に改めて意識を向け直せば、自ずと対応する英語表現が見えてきます。
→英語の「別れ際のあいさつ」場面別・ニュアンス別フレーズ集
→「Me, too.」よりも知的でステキな英語表現「So do I.」を使いこなそう
目次
「また来るよ」という場合(反復)
「あしたまた来ます」「いつかまた会おう」「また失敗してしまった」のように言う場合の「また」は、繰り返す、反復する、再び同じことが起こるといった意味合いです。この意味を英語で表現するなら again がうまく当てはまります。
また明日来ますね
またね
「また今度(別の機会に)」という場合
「忙しいからまた今度にして」「またの機会に」などのような文脈では、反復・繰り返しのニュアンスが基本ではありますが、どちらかといえば今回とは別の機会というニュアンスが中心です。そうした文脈では next (次の)がピッタリ来るでしょう。
またの機会にお会いできるのを楽しみにしています
「またとないチャンス」という場合
また繰り返し……にはならないであろうという意味合いで用いられる「またとない機会」という表現は、次の機会とは言わずに素晴らしいものであることを表すなら、 good opportunity (好機)あるいは a unique opportunity (無二の機会)のように表現した方が英語としては自然です。
これはまたとない機会だ。逃すわけにはいかない
「彼もまた」という場合(並置)
「彼もまた私と同じ境遇に置かれている身である」というような、他と同じであるという意味合いで用いられる「また」は、英語なら also、あるいは as well as といった表現が使えます。
彼はまたフランス語も話す
彼もまた父と同じく学者だ
「時間がない、また金もない」のように言う場合(付加)
「春は出会いの季節であり、また別れの季節でもある」とか「彼はハンサムだ。また優しい心の持ち主でもある」というように、別項を付け加える意味で「また」という場合、文末の too 、あるいは文頭の and などで表現するとよいでしょう。
彼女は美しい、また優しくもある
このアクセサリーもかわいい、またこっちのもかわいい
文意を区切って「加えて」というニュアンスを強める場合には、 In addition 、あるいは besides などの表現もよいでしょう。
また、同様に天気も異様だった
私には友達がいない。また金もない
「彼はまた(他方で)」というような場合
「父は格闘家であり、またその娘は声優として活躍している」とか、「人口は減少している。また、生活保護の受給者数は増加している」というような文脈で用いられる「また」は、and でも表現できますが、さらに「一方」「他方では」といった意味合いが加わります。この場合には while、 in turn、 on the other hand といった英語表現を使うとよいでしょう。
彼はちょっと頑固すぎるところがあったけど、また一方では信頼できる人だった。
彼はお金持ちになったが、また一方で人でなしにもなった。
「なんとまた」「これはまた」という場合
「またえらい騒ぎに発展したもんだ」とか「また派手にやったものだ」というように、驚きや疑問の強意表現として用いられる「また」は、英語なら What a ~ ! のような反語的な言い方で表現すると、うまくニュアンスが伝わりそうです。
またえらいことになった
要は驚嘆を表現する言い方なので、表現は文脈に応じていくらでも工夫できます。
お父さんが亡くなられたとは知りませんでした。これはまた失礼しました
「また聞き、また貸し」
「また聞き」「また貸し」の「また」は「間接であること」を示しています。日本語の「また聞き」「また貸し」は本来「又聞き」「又貸し」と表記され、それぞれ「その人から直接ではなく、他の人を通して関節的に聞くこと」「借りたものを更に他人に貸すこと」を意味します。「また聞き」は単語としてはsecondhand informationやhearsay information、「また貸し」はsublease、sublettingなどの語にあたりますが、名詞にこだわらずとも文章でその意味が伝わればOKです。hearsayは「風聞、うわさ」という意味で、「また聞きした」つまり「伝え聞いた」と言いたいときに使えます。
部屋の転貸には所有者の承認書が必要です。
借りた本を又貸ししないように。
本当かどうかわからないの、また聞きで聞いただけだから。