最後の最後という局面で気を抜いたり手を抜いたりして台無しにしてしまう様子を、日本語では「詰めが甘い」と表現しますが、これは元々は将棋の用語だそうです。英語にはチェスの大詰めを指す endgame という語があります。その意味では、poor endgame のような表現が語源的にも腑に落ちる表現と言えそうです。
ただ、英語で「詰めが甘いよ」と述べる場面では、往々にして文章を大胆に言い換えて表現した方がいっそう適切に表現できます。「詰めが甘い」をもっとストレートに言えばどう言い換えられるか? という点を意識して言い直せば、きっと伝わる表現が見つかります。
「詰めが甘い」を上手く伝える言い方
not thorough (徹底していない)
thorough /θʌrə/は形容詞で「完全な」「徹底的な」のように訳されます。つまり、ぬかりのない様子を示す語です。
not thorough enough のように言えば、最後まで徹底できていない、すなわち詰めが甘いという趣旨を綺麗に表現できます。
彼は十分に徹底していない。だから、彼はよくミスをするんだ
詰めの甘さがなく徹頭徹尾うまく仕事をこなす人は、thorough in one’s work のように表現できます。
not follow through (最後までやりきらない)
follow through は「最後までやりきる」「結果を出すまで続ける」といった意味合いの句動詞です。これを否定形で not follow through の形にすると、「最後までやりきらない」という意味で「詰めの甘さ」が表現できます。
follow through は自動詞・他動詞どちらの用法もありますが、自動詞として扱われる場合の方が多めです。何について詰めが甘いのかを示す場合は、前置詞 with または on を伴って表現されます。
わが部下の仕事は最後の詰めが甘かった
fail at the last moment (最後の最後で下手をうつ)
at the last moment は「最後の最後で」(文脈によっては「土壇場で」)という意味合いで使われる定型的フレーズです。fail at the last moment (最後の最後という時に失敗する)と表現すれば「詰めが甘い」の趣旨が伝わります。
最後の最後でヘマするんじゃないよ、いいね
poor result(ひどい結果)
途中まではよかったという認識が共有できている文脈なら、「残念な結果に終わった」と表現することで、最終局面の対応のダメさを言い表す方法もアリでしょう。
poor result (ひどい結果)とか bad end(嫌な終わり方)のような表現は、半ばまでは好調だったという前提があるなら、詰めの甘さを如実に表現できる言い方になり得ます。
チェスの用語に由来する endgame は、「大詰め」「終盤」のように訳される語です。ゲームの終わりが近づき、ボード上に駒が少ししか残っていない状況を指します。駒の数や配置がさんざんな場合になぞらえて poor endgame といえば、日本語の「詰めが甘い」の元来の意味にも通じるニュアンスが表現できそうです。
ひどい終局だった
「すればよかったのに」の形で表現する言い方
過去を振り返って反省点を挙げる形で、「こうすればよかったのでは」「こう対処する方法もあったはず」というように、詰めの甘さを指摘する言い方もアリでしょう。
「こうすればよかったのに」と表現する場面では過去仮定法がうまく使えます。could have や should have を中心とする言い方です。
could have (~できたはず)
could have+過去分詞は、過去の可能性について言及する表現です。「もっと良くできたはず」「もっと力を発揮できたはず」と伝えることで、詰めの甘さを指摘できます。
その計画はもっと良くできたはずだ
もっと良いパフォーマンスができたはず
should have (~すべきだった)
should have+過去分詞は、行わなかった言動について「するべきだったのだ」と指摘する、多分に非難のニュアンスを含んだ表現です。
最後の最後でヘマやらかした場合などに、「注意を怠るべきではなかったのだ」と伝えることで、詰めの甘さを指摘できます。
そのことについて、君はもっと注意すべきだった
なぜ前もって彼に聞いておかなかったんだ?君はちゃんと準備すべきだったのに