英語で「お金持ち」を表現する言い方は沢山あります。特に慣用的な言い回しが多種多様で、裕福さの度合いや人格・品格まで表現する言い方が色々とあります。
富豪の家柄、いわゆる成金、羽振りの良い人、ケチな人。語彙の多さは世間的な興味の深さの表れでしょう。日常で使う機会はそう多くはないでしょうけれど、知っておいて損はありません。
「金持ち」「裕福」を表現する基礎単語
普段の会話の文脈で「金持ち」と述べる場合があるとすれば、用いられる表現はおそらく rich か wealthy かのどちらかでしょう。
rich
rich は「お金持ち」を表現する最も一般的な表現といえるでしょう。
rich は根本的には「豊か」な様子を指す語です。金銭的な裕福さは典型的な意味合いですが、金銭資産に限らず、経験の豊富さ、土地の肥沃さ、食べ物の栄養の豊富さ、味や香りの濃厚さ・芳醇さ、衣装の華やかさ、毛髪のフサ具合なども rich と表現できます。
rich の対義語にあたる表現は poor 。poor は「乏しい」という意味の一般的表現であり、金銭的な貧乏、あるいは特定の要素が満足にない・まったくない様子を示します。
wealthy
wealthy も「お金持ち」を指す一般的な言い方です。
金銭的な蓄えが多いだけでなく、相応の社会的な地位も得ている(ひとかどの人物)という意味合いを含みます。「富裕」「富豪」「長者」といった日本語のニュアンスに近い表現といえるでしょう。
affluent
「富める者」という意味合いでは affluent の語も使えます。
affluent はラテン語由来の、fluid や flow に通じる語源を持つ語です。豊かな水が流れるイメージ。財産が潤沢にあるさま、とめどないさま、といった感じで捉えるとよいでしょう。
名詞形は affluence です。
prosperous
prosperous は「成功している」「繁栄している」という意味の表現です。
直接的に「金持ち」と表現する言い方ではありませんが、事業が成功しているということは、とりもなおさず金持ちであることですから、裕福な人を形容する言い方としても多々用いられます。
富裕度や人品まで表現できる慣用的表現
millionaire
百万長者
ミリオネア。日本語で言うところの「百万長者」です。
英語では million (百万)は膨大な数の代名詞的な語です。具体的な資産額が100万というわけではなく、巨万の富を有する富豪、という意味合いです。
女性の大富豪を指す語として millionairess という言い方もあります。性(ジェンダー)の問題を意識させる言い方なので、昨今では避けた方が無難でしょう。
彼自身はお金持ちではないけれど、彼の後ろには大富豪が付いている
もし百万長者だったら貧しい人たちのためにお金を寄付していたわ
billionaire
億万長者
billionaire(ビリオネア)は「億万長者」、あるいは「巨万の富を持つ人」。
millionaire よりも後に登場した表現で、裕福さの度合いはミリオネアの上位に置かれます。
彼が億万長者じゃなければ彼女も結婚しなかった
武器の取引で成功して彼は億万長者になった
彼はこの町で最も若くして億万長者になったことで知られている
well off
良い暮らしをしているお金持ち
well off は裕福なさま、暮らし向きがよいさま、財政的に順境にあるさま、を表現するスラング表現です。形容詞的に用いられます。
お金に不自由せず生活している、楽に生活している、というニュアンスを多分に含む表現です。
裕福な顧客は一度にたくさんのお金を使う
母は、離婚してからお金に困ったことはない
filthy rich
ものすごい金持ち
filthy は rich に程度の甚だしさを示す filthy を加えて「大金持ち」を表現する俗な言い回しです。単に filthy とだけ言うこともあります。
filthy は、基本的には「不潔な」「下品な」といったネガティブな意味を持つ形容詞です。ところが口語表現では、「非常に」「ものすごい」という意味の副詞として用いられることがあります。
filthy が口語的な用法であり、元の意味合いが好ましくないということもあるので、使用場面は選ぶ必要がありそうです。
彼の家族はただのお金持ちじゃないんだ、とってもお金持ちなんだ
昨日の夜、大金持ちになった夢を見た
well-heeled
社会的身分も高いお金持ち
well-heeled も口語表現で、経済的に恵まれている、かつ社会的地位にも恵まれているニュアンスを多分に含む表現です。wealthy 、affluent、prosperous に近いニュアンスがあります。
heeled の語そもののが口語表現で「金を持っている」という意味で用いられます。何故そういう意味用法が生じたのか、歴史的背景がありそうですが、いまひとつ定かでありません。
裕福な客が昨晩レストランで20万円も使った
彼女は自分の父親は裕福であり、僕とは全然違うと言った
nouveau riche
成金
nouveau riche はフランス語に由来する外来語です。nouveau は英語の new に対応する語。「新たに富を得た者」といった意味合いです。
nouveau riche は、最近になって巨万の富を得た者、とりわけ富を見せびらかすような品位に欠く振る舞いがある者、という批判的なニュアンスを含みます。
多くの人は、他国から来たにわか富豪を軽蔑している
このホテルは、町に住んでいる成金どもの間で人気だ
loaded
お金をたくさん貯め込んでいる人
loaded は基本的には「いっぱいの」「満員の」といった意味合いの表現で、文脈によっては「大金を持っている人」という意味でも用いられます。
彼はそろそろ家業を継いで、お金持ちの仲間入りをするだろう
今日給料日だからお金があるんだよね。ディナーをおごってあげる
have money to burn
金が腐るほどある
have money to burn は、直訳すると「焼くためのお金がある」。焼き捨てても困らないほどに金が有り余っている、と表現する言い回しです。
彼は有り余るほどお金があるんじゃないかと思ってる
彼女の仕事が何なのか知りたいわ、彼女お金が有り余っているんだもの
born with a silver spoon
生まれながらの金持ち
be born with a silver spoon (in ones’s month) は、文字通りにいえばは「銀の匙を持って生まれた」と述べる言い方。これは、「食べ物には困らない」「生まれながらにして金持ち」という意味の慣用表現です。
silver spoon は富の象徴です。食べ物に困らないように、という願いを込めて出産祝いに銀のスプーンを贈る習わしがある地域もあります。
彼は生まれながらの金持ちではなく、とてつもない努力家だった
生まれながらにして高貴な家柄に生まれていたら良かったのにと思う
made of money
富の権化
be made of money は直訳すると「お金で作られている」という事で、その人の主成分がお金であり、富がその人の本質であると言っているにも等しい比喩表現です。
私の学校ではほとんどの人が大金持ちです
残念だけれど、君にダイアモンドは買ってあげられないんだ。お金持ちじゃないから
big chips
チップが大量にある人
big chips の chips はギャンブルで使われるチップのこと。スラング・若者言葉で、ギャンブルに興じる際に多額のチップを賭ける、そのくらい資金が潤沢にある、つまり大金持ちだ、という意味合いの表現です。
君がお金持ちだって聞いたけど
minted
ミント
mint にはミント(薄荷)の他に、「新しい」、「鋳造」「造幣」といった意味があります。形容詞形の minted には「ミント味の」といった意味の他に「大金を持っている」という意味があります。
mint そのものも口語表現としては「大金」という意味で用いられる場合があります。
あの大きな家が見える?大金持ちに違いないね
彼しょっちゅう車を買えてるよ、お金持ちなんだろうね
fat cat
でぶ猫
fat cat は「資産家」「有力者」、とりわけビジネスや政治にかかわる人たちを指す隠喩表現です。
その記事はあの会社の有力者たちを批判した
数人の資産家は不法に利益を得ていた
Croesus
クロイソス
Croesus(クロイソス)は、紀元前に中東を治めた王の名前です。恐るべき富を蓄えていたことで知られ、「大金持ち」の代名詞となっています。
おじいさんは大金持ちで、欲しいのもすべてを買っていた