英語の中の「性(ジェンダー)に配慮した言い換え表現」一覧

言葉の中には、語意そのものに男女の性別が含まれている表現があります。こうした語は、現代においては性別を問わない表現に置き換える動きが進んでいます。特に英語はこの手の話題に敏感です。少し留意しておきましょう。

日本語でも看護婦・看護士を「看護師」と呼ぶようにしたり、婦警や女医とは呼ばなくなったりする動きがあります。米国を中心とする英語社会は、こうした言葉の性差の是正の取り組みが盛んです。取り組み始めた時期も早いため、今の世代にとっては「言い換え前の表現の方をむしろ知らない」という場合も。

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ついでに言うと「ジェンダーフリー」は和製英語です。英語では、性による区別のないさまを gender-neutral や unisex と表現します。

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表現が改められた主な英単語の一覧

言い換え前の表現 意味 言い換え表現 穏当な訳語 備考
man person
man 人間 human being 人間
mankind 人類 humankind 人類
young man 若者 youth 若者
manhood 成人 adulthood 成人
man among men 男の中の男 outstanding person 優れた人物
common man 凡夫 general citizen
または commoner
一般市民
Englishmen 英国人 the English 英国人
brotherhood 兄弟分 fellowship
または camaraderie
仲間意識・
友情
fatherhood 父性 parenthood 親であること
motherhood 母性 parenthood 親であること
master 主宰・親方 leader
teacher
boss
chief
指導者
先生
主任
上役
master plan 基本企画 comprehensive plan
または grand scheme
計画全体・
壮挙
manhole マンホール utility hole
または maintenance hole
マンホール  
manpower 労働力 workforce 労働力
Mother Nature 母なる自然 nature 自然
mother tongue 母国語 native language 自国語
fatherland 祖国 homeland 自国・故国
mother country 母国 homeland 自国・故国
no-man’s-land 中間地帯・
無人地帯
neutral zone 中立帯
founding father 創始者 founder 創始者
king-size キングサイズ very large 特大
sportsman スポーツマン athlete アスリート
workman 労働者 worker 労働者
freshman 新入生 first-year 一年生 ※ 学校の学年について用いられる言い方
chairman 議長 chairperson
または chair
議長
councilman 市会議員 council member 市会議員
actress 女優 actor 俳優
businessman 実業家 businessperson 実業家 ※「会社勤め」よりも「実業家」の意味合いが強い
businesswoman 女性実業家 businessperson 実業家
waiter ウェイター server 給仕人
waitress ウェイトレス server 給仕人
steward 執事・船室係 flight attendant 客室乗務員  航空機の場合
stewardess スチュワーデス flight attendant 客室乗務員  航空機の場合
cameraman カメラマン camera operator (映画などの)撮影技師 いわゆる写真家は photographer
policeman 警察官 police officer 警察官
fireman 消防士 firefighter 消防士
salesman セールスマン salesperson 販売員
seaman 船乗り sailor 船乗り
spokesman スポークスマン spokesperson 広報担当者
spaceman 宇宙飛行士 astronaut 宇宙飛行士
flagman 旗手、信号手 flagger 旗手、
信号手
frog man 潜水士 diver 潜水士、
ダイバー
airman 飛行士 pilot 操縦士、
パイロット
front man フロントマン representative 代表者
gateman 門番 gate keeper 門番
doorman ドア係 doorkeeper ドア係
horseman 騎手 jockey
または rider
騎手 rider は二輪車に乗る人を指す場合が多い
lumberjack forester 森林官
mailman 郵便配達人 mail carrier 郵便配達人
call girl コールガール sex worker 性労働者・
セックスワーカー
bagboy バッグボーイ caddy 荷物運び係
watchman 警備員 guard
security guard
警護
警備員
maid 女中 house cleaner お手伝い
housewife (専業)主婦 homemaker 主婦、家事担当
paperboy 新聞売り newspaper carrier
または paper carrier
新聞売り

慣習的に言い換えが進まない表現もある

単語の中に boy や man のような語が含まれていて、その意味では性を前提とした表現ではあるものの、イマイチ他の語のように是正が進んでいない表現もあります。

言い換え前の表現 意味 言い換え表現 穏当な訳語 備考
ballboy ボールボーイ ballperson 球拾い ※ まだ ballboy の方が主流
cowboy カウボーイ cowhand 牛飼い ※ まだ cowboy の方が主流
sportsmanship スポーツマン精神 fairness
または good humor
公正 ※ まだ sportsmanship の方が主流
snowman 雪だるま ※ もっぱら snowman が主流
Uncle Sam アンクルサム United States アメリカ合衆国 米国の隠喩である典型的米国人という意味では現役

大体において文化史的な側面が色濃かったり、分野(使用場面)がかなり限られていたりといった条件のある語が、言い換えの進んでいないパターンに該当しそうです。


「彼」や「彼女」も文脈によっては要検討

英語の人称代名詞は、第三者を指す場合、性を踏まえて he (彼)または she (彼女)と言い分けます。そのため、someone のような性別不明の第三者を示す語を受けて「その人」と述べる場合、少し厄介なことになります。

someone が実際には女性だったら、という場合を考えると、「とりあえず he と言っておくか」という判断はいくぶん軽率かも知れません。まあ、日常会話ならさほど問題ではないでしょうけど、この手の問題に配慮しなくてはならない公的機関などは、この辺の表現には苦労しているはずです。

someone 等の性別不明表現を受けた代名詞は he or she (所有格 なら his or her )のような表現が、ひとまず穏当と見なされます。

三人称単数としての they

昨今では he or she を they の一語に替える向きが見られます。

they はもともと三人称複数を示す代名詞ですが、 he or she の代替表現としての they は単数形として扱われます。

英語はかなり性の排除が進んだ言語体系といえます。

英語を含む西欧諸言語の多くは文法上の(ジェンダー)の要素を含みます。ドイツ語やフランス語などでは、無生物の物体や概念に男性・女性・中性といった性別要素があらかじめ付与されて扱われます。


人種や民族を意識させる用語も併せて要注意

人種や民族の呼び名で、語そのものに差別意識が含まれるとみなされる表現も、言い換えが進んでいます。

  • Eskimo(エスキモー)→ Inuit
  • Indian(インディアン)→ Native American
  • Negro(黒人)→ African American
  • white(白人)→ Caucasian

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天賦的要素をあげつらう観点そのものが忌まれると考える

性別も、人種も、出身地も、大抵の身体上の特徴も、いずれも当人の個人的努力では克服し得ない、生まれ持って備わっている属性・具有性です。そして性別もそうした具有性の一つです。

背が低いとか肌が黒い・黄色いといった部分は、基本的に努力では変えようがありません。先天的な要素をあげつらって差別的にとらえる姿勢は、身も蓋もない、無粋な攻撃でしかありません。

発言や仕草のちょっとイラつく部分などは、指摘してあげれば改善できます。人間性の向上に資するでしょう。しかし血統を貶されてもしようがありません。

そうした部分の感覚を育んでみると、「人種のるつぼ」たる米国および全世界で広く使われている英語の、性差および各種の差別的キーワードの扱い方に対する見方が、多少なりとも見えてきそうな気がします。




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