英語で「好き」と述べるなら、動詞 like もしくは love を使えば無難に適切に伝わります。もっと特別なニュアンスを込めて「好き!」の気持ちを伝えたいなら、表現を工夫する余地はいくらでもあります。
どのくらい好きなのか、どういう風に好きなのか、どういうところがすきなのか、そうした部分を意識すれば、ぴったり来る表現はきっと見つかります。
「好きだ」と端的に述べる動詞・形容詞
like と love が基本中の基本
「好き」という気持ちを表現する語としては、やはり like と love が基本です。
like は基本的には「好きだ」「好みだ」といった軽めの度合いを示します。ちょっとイイなと感じた程度でも使えますし、a lot や very much といった強調表現を加えれば「かなり好き」「大好き」といったニュアンスも表現できます。
love は「好きだ」あるいは「大好きだ」という強く積極的な愛情を表現する語です。「好き度」は like の上位互換。とはいえ、I love you. と I like you a lot. とでは、程度以前に伝わるニュアンスが微妙に違います。何がどう違うかは明示しがたいところではありますが。
like と love も、何にでも使える
like や love は対象を選ばずに使えます。人、モノ、あるいは趣味や考え方といった抽象的な事柄にも使えます。
たとえば love なら、異性、家族、友人、隣人、国、文化、作品、自然、景観、習慣、趣味、風情、感性、信教、等々が愛する対象になり得ます。つまり何でも対象になります。生への執着や勉学への情熱なども love で表現できます。
日本語で「好き」と評価できる対象ならまず何でも like や love と言ってしまえると考えて問題ないでしょう。
like と love の対義語は
love の対極にある語といえば hate。like の対極に位置する語としては、dislike が挙げられます。
hate は「憎む」「憎悪する」といった、強烈で積極的なネガティブな心情を表現する語です。dislike はおおむね「嫌い」「イヤだ」という程度。この低度差も love と like のニュアンス差に対応しています。
「like の反対は don’t like」という見解もアリです。
adore
adore は動詞で、「(神を)敬愛する」「崇める」といった意味の語です。転じて、人を敬慕する、崇めるように熱愛するといった意味でも用いられます。
adore は、対象が神であれ人であれ、強く深い愛情・崇敬の情を表現する語です。
異性に恋心を伝えるような場面で I adore you. という風に述べても、全然ヘンではありません。熱く強く、対象を見上げるような慕情、「お慕い申し上げます」的な愛の表明として伝わるでしょう。
care (for)
care は「気にかける」という意味合いを根本とする動詞で、色々な意味・用法がありますが、前置詞 for を伴って care for ~ の形を取る場合に「好き」の意味で用いられることがあります。「気になってしまう」ニュアンスの感じられる言い方です。
ただし、「好き」に通じるニュアンスは、もっぱら否定文や疑問文で用いられる場合に限られるようです。
あの子のこと気になる?
べつに。どうでもいいよ
fancy
fancy の動詞の用法には、イギリス英語においては、「好き」「大好き」という意味合いもあります。I fancy you. が I love you. とほぼ同じ意味の表現として用いられます。
fancy は同じ綴りで動詞、名詞、形容詞としても用いられます。名詞としては主に「幻想」「思いつき」といった意味で、形容詞としては「空想的な」「派手な」といった意味で、アメリカ英語では多分に「おしゃれな」というニュアンスも込めて用いられます。
(be) fond (of)
fond は形容詞で、I’m fond of ~ のような(叙述的用法)の形で述べられる場合に「私は~が好き」という意味を取ります。
fond はどちらかといえば長期的な(その場限りでない)好み方、よく知っている(馴染みのある)人やモノへの好意を表現する言い方として用いられます。
チェロを弾くのが好きです
彼女は子供好きだ
fond は叙述的用法で「好き」を示す、ということは、文章上 fond が直接に係る対象は主語(好んでいる主体)であるということでもあります。
favorite
favorite も形容詞で、訳語はたいてい「お気に入りの」と表現されますが、それは即ち「大好き(な)」という意味です。もっぱら限定用法で(名詞に直接係る形で)用いられます。
「私の好きな(対象)は~」という風に述べる場面では、ほぼ例外なく使える、万能で使い出のある単語です。
これが私の好きな本です(この本がすごく好きなんです)
私の好きな色は赤です
favorite は基本的に形容詞として用いられますが、名詞として「お気に入り」という意味でも使えます。
どの子が推し?(誰がお気に入り?)
favorite は限定用法で用いられます。つまり、話し手ではなく話し手が好きといっている対象の方に係ります。その点で fond とは好対照。違いを把握して上手く使い分けましょう。
crazy と mad
crazy および mad は基本的に「頭が変な」「気が狂っとる」という意味を示す形容詞ですが、「熱狂的に好き」というような意味合いでもよく用いられます。
もっぱら前置詞 about を伴って crazy about +好きな対象、のように表現されます。
「狂おしいほど好き」「狂っちゃいそうなほど好き」「好きすぎて変になりそうなくらい」といったニュアンスを表現するならうってつけの表現でしょう。
君のことが好き過ぎる
彼は釣りキチだ
be into
特に「のめり込んでいる」「夢中になっている」という意味合いを表現するなら、(be) into ~ と表現する言い方もあります。多分に口語的な表現です。
into は前置詞で、「(外から)中に入り込む」イメージを基本とする表現です。没頭・没入・沼といったニュアンスがぴったり表現できます。
be into ~も、どんな対象にも使える万能フレーズです。
君にゾッコンだ
姉はプリパラにハマっている
恋愛感情の「好き」を如実に伝える表現
like も love も favorite も、汎用的に「好き」と表現できる言い方です。便利ではありますが、その分ある種の「恋愛の情緒」のようなものが表現しにくかったりもします。
もうちょっと恋情の繊細なニュアンスを醸したいなら、日本語で「恋に落ちる」と表現するような私的ニュアンスのある慣用表現を使ってみてもよいかもしれません。
have feelings for ~
have feelings for ~という言い方は、日本語の「気がある」という言い方に即応する表現と言えます。文字通りの意味でも、そこに込められた含意も、いわゆる「気がある」の意。
実際に使われる場面も、相手にロマンチックに告白する場面よりは、第三者に話しているようなシーンで用いられがちです。その点でも日本語の「気がある」という言い方に通じます。
とはいえ、気になっている相手に想いを伝える表現として使っても別にヘンではありません。開けっぴろげに「好き」と明言する形ではなく「君が気になっているんだ」的な言い回しで告白する言い方としては自然に使えます。
彼は彼女に気があるに違いないわ
実は君に惹かれているんだ
in love with ~
in love with という表現は、かなり情熱的に相手への愛情を伝える表現です。
I’m in love with you. というと、毎日ドキドキしたり一喜一憂したり好きな人のことばっかり考えていたりといった「恋をしている」状況、非日常的な(恋の病を患ったような)ニュアンスが表現できます。
素朴に I love you. と言っても良さそうなところですが、I love you. は日常的・普遍的な愛情表現を含み、家族や友達の間でも普通に使われます。日常的な love とは違うんだという意味を込めるような場面では in love with ~ と言ってみるとよいかも知れません。
父は半世紀も夫婦でいて今なお母にメロメロです
あの連れ合いは5年の交際の末に別れることにした、もう恋愛感情を抱いていないと互いに悟ったので
have a crush on ~
have a crush on は「~に一目惚れする」「~に恋をする」という意味で用いられる言い回しです。
crush は元々「押しつぶす」「ぺちゃんこにする」といった意味の単語です。一目見て、衝撃的に、恋に落ちてしまうような情景が表現できます。
一目惚れに限らず、長らく圧倒的な片思いを患っている状況も have a crush on と表現できます。圧倒的な片思いの相手を my crush と表現する言い方もあります。
fall for ~
fall for ~ は「~を好きになる」「~に惚れる」という意味で用いられることがあります。
fall in love で「恋に落ちる」、と同様のニュアンスと解釈してよいでしょう。
動詞 fall の時制によって、自分の気持ちの進行状況も示唆できます。falling for you といえば恋に落ちそうな(ホレかけている)状態、fallen for you といえば恋に落ちてしまった(虜になった)状態が表現できます。
対象別に無難に「好き」と表現する言い方
好きなもの(事柄)を紹介する場合
いわゆる「好物」について言及する場面では、favorite が一番無難に汎用的に使えます。
ものスゴく熱中していたり特別な思い入れがあったりするわけではない、けれど、選択肢の中からお気に入りを選ぶとすればコレ、という程度の「好き」度合いを表現するにはぴったりの語です。
好物(好きな食べ物)は何?
この服お気に入りなの
それイイね的な「好きだわ」を表現する場合
初めて見聞きしたり食べたりしたものを「好きだ」と評する場合、like や love で表現してもよいのですが、「美味い」「可愛い」という風に具体的に形容した方が趣旨は伝わります。
like や love は「自分の好みに合致している(か否か)」という観点が入り込んでしまいかねません。装いを可愛いと想ったのなら「カワイイね!」と率直に述べた方が自然です。
そのドレスかわいいね
このチキンおいしいから食べてみて!
恋愛感情なく純粋に「人として好き」という場合
思慕するというニュアンスを排除して「人として好き」「人間性に好感を抱いてやまない」と表現する場合、基本的には like および love で無難に表現できます。
like も love も、恋愛感情に限られず用いられる語です。男性が I love him. と言っても別に「おまえはホモか」と勘ぐられたりはしません。基本的には。
favorite person という言い方も使えます。主に、仲のいい友達や一緒にいて楽しい人などを指す言い方として用いられます。特別な思い人というニュアンスは特に含まれません。
アーティストや著名人について「すき」という場合
歌手や俳優などに関して「好き」と述べる場合、 I’m a fan of ~ という表現が使えます。「応援している」「支援してる」といったニュアンスです。
熱心・熱狂的なファン=いわゆる「コアなファン」を表現する言い方としては big fan や huge fan のような言い方もあります。「コアな」は英語では特に core とは表現しません。
それほど入れ込んでないなら、 like や love で表現してしまって全然問題ありません。
よほど入れ込んでいるなら crazy とか mad のような語で熱狂的な度合いを表現してもよいでしょう。
熱狂的というわけではないが「好きな有名人は誰」と聞かれたら挙げるかなという人は favorite と表現してもよいでしょう。
「(~が)スキな人」と表現する言い方
趣味について「好き」と言う場合
スポーツ好き、映画好き、という風に趣味を起点も人を形容する場合、最も無難な表現は fan でしょう。
日本語で「ファン」というと歌手や俳優の(多分に熱狂的な)応援者を連想しますが、英語の fan は「愛好家」全般を意味し、より広く浅く使えます。
私のような野球ファンにサッカーのことなんて聞かないでくださいよ
「好き」どころか非常に求めている場合
「~~好き」というと聞こえはいいけれど、対象を常に欲している、ガツガツしている人には少し違う呼び方も当てはまるでしょう。
「求める人」「探究者」という意味の seeker という言葉は過剰な欲求をやや揶揄したレッテルを貼るのに効果的です。
遊び好きな人
物好きな人
また「好き」では止まらず中毒状態に陥っている人のことは、大げさに ~(a)holic と呼ぶこともあります。本当に診断されてはいなくても、酒が好きすぎる人のことをたしなめるために alcoholic と呼ぶような場合もあります。かなりきつい言い方なので使う場面には気を付けましょう。
チョコ好きな人
そのまま伝えたほうが良い場合が多い
基本的には「~好き」と表現するのに特に決まった形容詞がない場合の方が多いと思っていて良いでしょう。「動物好きな人」というときは people who love animals といったように、丁寧に説明してあげるほうが伝わりやすいと言えます。
また、dog person(犬好きな人)、cat person (猫好きな人)のようにそのまま単語を形容詞のように使ったり、horsey person(馬好きな人)snoopy person(詮索好きな人)のように「好き」の対象となる単語の形容詞形を付けることで表現する場合もあります。
「好きじゃない」の言い方
否定語を付ける
「好きじゃない」と伝えたいときには、don’t や not などの否定語を付ければたいてい表現できます。
しかし I don’t like it は好きじゃないことを端的に表すのに対して、I don’t love it は「大好きではないだけで少しは好き?」という疑念も与えるのでフォローが必要です。柔らかい言い方にするためにわざとあいまいな表現にしたい場合には便利ともいえます。
reallyの位置に注意
強調の really を否定語につける際には注意が必要です。I don’t really like it は「そんなに好きじゃない」、I really don’t like it は「本当に好きじゃない」となりかなりニュアンスが異なります。誤解を生まないよう気を付けましょう。