日本語の「恥」「はずかしい」いう言葉には、実にさまざまな感情・心情のニュアンスが含まれます。この手の感覚を英語で表現する場合、「はずかしい」という表現はいったん捨てて、「ばつが悪い」とか「当惑してしまう」のような表現に言い換えてみた方が、適切な表現が見つかりやすそうです。
なお shy(シャイ)は「恥ずかしがり屋」という性格的傾向を指す語であり、それ自体に恥ずかしいという感情を指す意味・用法はありません。
みんなの回答:恥ずかしいは英語でどう言うの?
目次
「気まずい」「バツが悪い」感じを表現する言い方
大勢の前で凡庸なドジを踏んだり、小手先のごまかしがバレたり、といった状況で感じる恥ずかしさは、「当惑」のニュアンスを中心に考えるとよいでしょう。
embarrassing 、 embarrassed
embarrassing と embarrassed は、何かミスを犯して恥をかいたときのバツが悪い気持ちを表現する一般的な言い方です。
embarrassing は動詞 embarrass の現在分詞(形容詞用法)、同じく embarrassed は embarrass の過去分詞(形容詞用法)です。そして embarrass は「困らせる」「はずかしい思いをさせる」という意味の他動詞です。
主語との関係で -ing と -ed を使い分ける
embarrassing と embarrassed は、意味そのものには違いはありません。主語・主体と「はずかしい」気持ちとをどういう関係で述べるか、によって使い分けられます。
embarrassing は、《「はずかしさ」を感じる原因となった行動》を主語に位置づけて叙述する場合に使えます。
embarrassed は、《「はずかしい」という思いを抱いている当事者》を主語に位置づけて叙述する場合に使えます。
彼女ははずかしいスペルミスを犯した
みんなを前にしてとても緊張してしまった
awkward
awkward は、基本的には、体の動きの「ぎこちなさ」や「無様さ」を形容する表現といえますが、雰囲気や感情について awkward であると形容する場合は、「照れくささ」や「気まずさ」とでも訳すべき感覚の表現といえます。
awkward には、屈辱・恥辱というような深刻な恥のニュアンスとは少し違って、心理的ぎこちなさという程度の感覚です。羞恥心のようなニュアンスは近いといえるかもしれません。
彼女は会話に入っていくのにはずかしさを感じていた
赤面する・赤面しているさまを表現する言い方
照れや羞恥心といった感覚を抱くと、思わず顔が赤らんでしまうものです。「赤面」というやつです。英語圏でも「赤面」は恥ずかしい感情を表現する言い方として用いられます。
直接に感情を(「恥ずかしい」と)述べるよりは、やや婉曲的な響きになるでしょう。
red in the face
(be) red in the face は、文字通り「顔が赤くなっている」と述べる言い方です。日本語の「赤面する」という表現と同じ感覚で、恥ずかしさを表現する言い方として使えます。
ビルは赤面していた
blush
blush は「赤面する」「顔を赤らめる」という意味の動詞です。そのまま「恥じ入る」「恥ずかしい気持ちに駆られる」という意味を示す語としても解釈されます。
あなたに少し恥をかかせることになるかもしれない
flush
blush と似た単語に flush があります。これも「赤面する」さまを指す動詞です。
flush は恥ずかしさによる赤面の意味では特に用いられず、もっぱら《怒り》や《困惑》による赤面・紅潮を指して用いられます。
have egg on one’s face
have egg on one’s face は文字通りに捉えれば「顔の上に卵をまき散らかしている」とでも訳せる表現ですが、これは「大恥をかく」「面目を失う」といった意味で用いられる慣用的な言い回しです。
have egg on one’s face のフレーズでは egg は冠詞を付けずに用いられます。冠詞を伴わない(不可算名詞の)egg は、調理したり床に落としたりして、つぶれてぐちゃぐちゃになった状態の卵を指します。
本当に赤っ恥だよ
社会的によろしくない(恥ずべき)事柄を指す言い方
不道徳なことや不名誉なことなど、社会的によくないと思われている言動を誰かがした場合、あるいは自分がそのような状況になってしまった場合に、《見ていられない》《外聞が悪い》という意味で「はずかしい」と表現することがあります。そうした場面で使える英語は disgraceful 、 scandalous 、 unworthy です。
disgraceful
disgraceful は、dis- graceful ということで、もともと「優美な」「上品な」「潔い」といった意味のある graceful の語意を打ち消した表現です。優美でない、潔くない、みっともない、不名誉だ、恥ずべきだ、といった意味合いで用いられます。
彼のみっともない振る舞いは真剣に行く末が案じられる
scandalous
scandalous は、scandal (スキャンダル)から派生した形容詞です。日本語における「スキャンダル」のニュアンスと同様、いかがわしい不祥事、こちらが恥じ入ってしまうよ事柄に対して用いる表現です。
彼女はそんな恥ずかしいようなことは二度としなかった
unworthy
unworthy は形容詞 worthy の「価値がある」という意味を un- で打ち消した語です。価値がない、くだらない、というニュアンスの「恥ずべき」さまを表現できます。
紳士の名にもとる行為
罪悪感や後悔の念を表現する言い方
自分のしてしまったことに対して、罪悪感に駆られ、後悔を抱くような気持ちを、日本語では「はずかしい」と表現することがあります。英語では ashamed と shameful がこの気持ちに最も適した表現です。
embarrassing 、 embarrassed 、 awkward などの表現が、主に「他人を相手にして感じる恥ずかしさ」であるとすれば、ashamed や shameful は「自分自身の内奥と対面して(自分自身に向けて)感じられる恥ずかしさ」であるといえるでしょう。
ashamed
ashamed は、人が「罪の意識や後悔の気持ちに駆られている」という状況で用いられる表現です。
ashamed はもっぱら「人」を主語に取ります。モノや行為は主語に置けません。
自分が我慢できなかったことにはずかしさを覚えます
shameful
shameful は、「罪悪感を覚える」ような、あるいは「先々後悔する」ような、行為や態度を評する場面で用いられる表現です。
shameful はもっぱら「行為や態度」を主語に取ります。人を主語にする言い方は用いられません。
母がしていたことははずかしいことだ
shame 自体は名詞
ashamed も shameful も、どちらも元を辿れば shame から派生した語です。
shame は名詞(あるいは他動詞)であり、「恥ずかしい」と形容する言い方としては基本的に適しません。
shame は日本語の「恥」に対応する表現の筆頭として把握されやすい表現といえます。それはあながち間違いではありません。とはいえ、shame のニュアンスは必ずしも「恥」ばかりではなく、「残念なこと」「不名誉なこと」といった意味合いでも多く用いられます。
何と気の毒な
他人から受けた屈辱・恥辱を指す言い方
「はずかしさ」を感じる原因は、自分自身の行動にあるとは限りません。理不尽にも他人から辱められたり、屈辱的な状況におとしめられたりすることもあるでしょう。 humiliating や humiliated は、そのような他人や周囲の状況から受けた屈辱を表す英語表現です。
humiliating 、 humiliated
humiliating と humiliatedは、動詞 humiliate の現在分詞および過去分詞です。humiliate は「自尊心を傷つける」「辱める」といった意味の他動詞です。
屈辱を与える側や状況が主語に来る場合には -ing の形で、屈辱を受ける側が来る場合には -ed の形で、と使い分けられます。
全くの屈辱的で不快な経験だった
彼女は上司の侮辱のせいで、辱めを受けた