日本の七夕の風習は、西欧にはない(伝わっていない)ので、英語で表現する場合は Tanabata festival のように固有名詞的に述べる言い方が基本です。Festival of the Weaver のように英訳する言い方も一応あります。
日本の七夕のような「伝統行事に関する話題」は、話題にする時期は限られますが、時期をうまく捉えれば特に脈絡なく話題にできるナイスな会話ネタです。
「七夕 = Tanabata」+補足説明がいちばん穏当
英語圏には七夕という行事そのものがなく、ぴったり対応する英語表現もありません。
訳語を探しても見つからないなら、固有名詞的として扱うことになります。Sushi や Tempura と同様です。
まずは Tanabata という言葉を紹介し、その後で言葉の意味を補足する、そうした言い方がいちばん妥当でしょう。
Star Festival のような英語表現もある
七夕を、固有名詞的な扱いではなく、あくまでも英語の語彙で表現するなら、Festival of the Weaver あるいは Star Festival といった言い方が一応あります。
weaver は「織り手」「機織り」といった意味の語。七夕祭りの背景にある言い伝えにちなんだ言い方といえます。Star Festival も天の川のお話にちなんだ命名でしょう。
Star Festival が七夕を全く知らない人に通じる英語とは言いがたい
Star Festival のような表現は、普通の英語の語彙を使った表現なので、話の脈絡から完全に浮いて聞き手の頭上に「?」が浮かぶ、というようなことにはならないでしょう。
とはいえ七夕の風習を知らない方に Star Festival (星祭り)のような英語表現で伝えても、七夕の何たるかという部分が期待通り伝わることはないでしょう。
Star Festival は「星の祭典」という意味合いの英語表現に過ぎず、「七夕」の行事を一意に指す呼び名とは言えません。日本語では「星祭」といって「七夕」を指す場合も結構あるのですが、それを世界標準のように考えるわけにもいきません。
たとえばポリネシア系民族のマオリの人々は、プレアデス星団(和名「すばる」)を「新年の到来」の象徴として尊んでおり、同星団を称えて盛大な新年の祝い(「マタリキ」)を催しますが、これもある意味「星の祭典」であり、英語でいえば Star Festival に該当し得ます。
マタリキの星祭りを初めて主催するグレートバリア島
― Auckland Council , 6 June 2018
英語圏のお手本に学ぶ、七夕を英語で説明する言い方
七夕がどういう風習なのかを英語で補足説明するのは、難しいというか、面倒臭いというか、まあ色々と厄介な部分です。自分の言葉で述べよ、と言われてもスラスラ説明できる人の方が少ないでしょう。
言葉を端的に説明する言い方は、辞書、もしくはニュースメディアの記事などが、理想的なお手本とて使えます。
「七夕」の場合、英国 BBC News が2012年に「Japanese people make a wish in Tanabata star festival」と題した記事で日本の七夕祭りを紹介しています。これを英語で説明する言い方のお手本にしてしまいましょう。
It is part of a tradition practiced throughout Japan celebrating the arrival of the star festival Tanabata.
言い伝えによると、太陰暦の7月7日は、二柱の不運な神様が天で会うことのできる日です。そしてこの日だけは、願いを短冊に書いて竹にぶら下げると叶えてもらえます。
(七夕祭りは)七夕の伝来を祝して日本で行われてきた伝統行事のひとつです。
―― BBC News Asia, 06 Jul 2012
七夕はさすがに英語辞書に記載されるには至っていませんが、karate(空手)や kimono(着物)、kawaii(カワイイ)、(karoshi(過労死)、 hara-kiri(腹切り)といった日本語は、英語圏でもちょくちょく紹介されており、主な英語辞書にも項目として収載されています。
英語辞書に載っていればしめたもので、端的にツボをついた説明のしかたがそのまま分かります。
なお中国の七夕は日本の七夕とは全く別物
七夕はそもそも中国発祥・中国伝来の節句ですが、中国の七夕節と日本の七夕は同一視されず全く別モノとして扱われています。
英語圏でも中国の七夕は日本の七夕とは区別して扱われる
中国の七夕節は英語では Qixi Festival のように呼ばれています。ピンインをそのまま音写した言い方です。
中国由来の言葉が中国語とは別個に日本語として英語化する例は特に珍しいものではありません。たとえば道家の開祖である老子は、英語では Lao-tzu と呼ばれていますが、日本の禅仏教を読み解く流れで言及される場合は Roshi と呼ばれます。