「責任者」に対応する英語表現は色々あります。表現をひとつだけ挙げるとすれば、person in charge が幅広く使えて無難と言えるでしょう。これは「担当者」程度の意味でも使える表現です。
ひとくちに「責任者」といっても、「担当者」に近い意味合いで用いられる場合もあれば、部長や取締役といった重役の意味で用いられる場合もあります。日本語表現の真意を汲めば適切な英語表現はおのずと見つかるでしょう。
一般的な「責任者」を英語で言うと
何の前提もなく単に「責任者」と表現する場合の多くは、英語では「担当者」に対応する表現を使った方がしっくり来る場合が多いといえます。
ビジネス英語で「担当者」を正しく表現する単語・フレーズ・表現集
person in charge
person in charge は直訳では「責任を負っている人」という意味で「責任者」にほぼ直接に対応する英語表現です。
一般的な「責任者」、つまり、限りなく「担当者」に近い意味合いで「責任者」と述べる場合には、person in charge がいちばん使いやすい言い回しでしょう。取締役のように会社の上層部にいて経営上の大きな責任を負う人から始まり、課長や部長、係長や主任、プロジェクトレベルの担当者や係にも幅広く使えます。
彼は(この場合は)3000人を超える従業員の責任者であり、10億ドルを超える年間予算を監督している人物である。
――Saskatoon Starphoenix, January 18, 2018
2012年4月4日から同年8月13日までその会社の取締役だったシンガポール人は、MV社の業務を管理・監督する責任者であった
―― The Strait Times Singapore, January 19, 2018
金曜の朝、新生児がカルタゴの大聖堂内に遺棄され、教会の責任者である聖具係によって発見された
―― Qcostarica, January 19, 2018
responsible person / person responsible
「責任者」には、responsible person や person responsibleという言い回しもあります。
「責任者に『行動しろ』と要求することでは不十分です、多くの場合、責任者が誰であるかが曖昧だったからです」と彼は言った。
――DailyMail , January 19, 2018
responsible person には「責任感のある人」という意味の用例もよくみられます。
ボーイスカウトでの活動のおかげで私は責任感のある人物に成長することができました
―― The Chronicle, January 18, 2018
responsible person や person responsible は文脈によっては、一般的な責任者というよりも「責を負うべき人」「(良くないことに)関与した者」、ときには「犯人」といった感じのマイナスのニュアンスで使われることも多くあります。単に「責任者」を表したい会話では、person in charge を使うのが無難でしょう。
何者かが大量の雪を道に押し出していた。警察は関与した者にコンタクトするべく取り組んでいる
―― Standard Journal, January 19, 2018
このアカウント停止に責を負うべき人間は正社員ではなく請負業者だったかもしれない
――Bloomberg, November 4, 2017
ラビーンでの不法投棄の犯人の姿がカメラにとらえられた
―― Fox 10 Phoenix, December 29, 2017
特定の意味合いの「責任者」を表現する英語表現
特定の「責任者」を表す英語表現は非常に多様です。場面や文脈によってうまく使い分けましょう。
manager (役職を持つ責任者一般)
manager は文字どおり、manage(経営・管理・切り盛り)する人のことです。manageする人には当然、立場に相応の責任が降りかかってくるため、私たちは manager の大半を大まかに「責任者」と訳すことができます。
manager は広い意味で使える person in charge と比べ、どちらかというと何かの役職名がついているような立場の人を指すことが多いです。manager は文脈によって、「経営者」「管理者」「支配人」「部長」などといったさまざまな役職名にあたる意味を表すことができます。
まず、あなたは責任者として、チームメンバーのエンゲージメント(企業に対する愛情)について責任がある。責任はあなたが負うのだ。
―― Forbes, January 18, 2018
上の例では、engagement of your team members といったような記述から、日本でいえば課長や部長職以上にあたるような、複数の人をとりまとめ、比較的責任の大きな立場にある人物像を想像することができます。
このほか、英語においてスポーツの文脈で managerと言った場合、日本語で言うところの「マネージャー(≒選手の付き人)」を表す場合もありますが、どちらかというと「監督」の意味での用例が多いようです。
leader (リーダー一般)
leader とは文字通り、集団や組織をリード・指導・先導する人のことです。役職名のある責任者や国家レベルの人だけでなく、プロジェクトリーダーレベルの人のことも表すことができます。
ニュージーランド首相ジャシンダ・アーダーン、自身の妊娠を発表
―― The New York Times, January 18, 2018
be in charge of 〜 (〜の責任者である)
be in charge of 〜 の文で、〜の部分にプロジェクトや組織の名前を入れると、「〜の責任者である」という意味になります。
彼は春のキャンペーンの責任者だ
head (長)
head of 〜 で「〜の長、〜の頭(かしら)」という意味です。小さな部署や世帯から国家レベルまで、比較的簡単な表現で幅広い「責任者」「長」を表すことができます。
head of stock
在庫責任者
head of accounting
会計責任者
head of a family
世帯主
head of a state
国家元首
joint head
共同責任者
director (長)
director は「指揮をとる人」という意味で、責任者の中でも一定の大きさの組織の指揮をとる上層部の人、またはトップ・長の意味で使われます。
ここロスアラモス国立研究所の新所長であるテリー・ワレス。アメリカ核兵器研究所の75年の名高い歴史の中で特に厳しい時期である今月初め、研究所の指揮権を握った。
―― Science, January 19, 2018
その他、テレビや芸能の文脈で directorというと日本語でいう「ディレクター」に近い意味、映画の文脈で directorというと、日本で言う「映画監督」を表します。
chief (長)
chiefはラテン語では「頭」を意味する言葉で、集団の長、頭(かしら)、トップ、等々幅広い意味で用いられる英語表現です。
ロンドンの金融のトップは、イギリスのEU離脱の影響によって転職が減るとみている
―― Reuters, JANUARY 19, 2018
chief ~ officer (最高 ~ 責任者)
chief 〜 officer は「最高〜責任者」という意味で用いられる英語表現です。たとえば Chief Executive Officer なら「最高経営責任者」、いわゆるCEOです。Chief Operating Officer は「最高執行責任者」、Chief Financial Officer なら「最高財務責任者」と訳せます。
representative (部長)
representative とは「代表者」という意味です。部署名+ representative で「〜部代表→ 〜部長」という表現になります。
Sales Representative
営業部長
H.R. representative
人事部長
point man (代表者)
point man はアメリカ英語で、文字通りに捉えれば「ポイントに立つ人」、転じて、プロジェクトなどの責任者、第一線の人、先頭に立つ人、交渉代表者、などといった意味で用いられる英語表現です。どちらかというと軍事的な背景から出てきた言葉で、ビジネスの場面で使われる場合はプロジェクトをある種の戦いになぞらえて表現していると考えることができます。
FETÖの軍事代表者は、テロリスト集団の影響力について明かした
―― Daily Sabah Investigations , January 17, 2018
officer (役員・幹部)
〜 officer もおおまかには「〜責任者」に訳すことのできる言葉ですが、head よりも意味合いが複雑です。単に officer と言った場合、「役人」「〜官」などといったややお役人寄りの堅いニュアンスもあって少し使いづらいので、まずは manager などの使いやすい英語表現を覚えておくとよいでしょう。
warden (所長、校長)
warden には「監視する人」という意味があり、そこから発展して、アメリカ英語で刑務所長、イギリス英語で学寮などの長、病院や官公署の長官、寄宿舎のようなところの管理人という意味を持っています。同じ責任者でも、監視のニュアンスの強い責任者を表します。
マーケット刑務所は初の女性刑務所長を獲得した
―― Wnmu-FM, January 20, 2018
curator (博物館・図書館の責任者)
curatorとは、博物館や図書館などの長、または職員を表す言葉です。資料を蓄積している施設で資料の管理をする責任者のことを言います。
博物館職員がどんな仕事をしているか不思議に思ったことはありますか?
―ー Portnews, JANUARY 17, 2018
〜には…に責任がある
「…に責任がある」という意味の表現には is responsible for、 is in charge of、have responsibility for などがあります。
〜is responsible for …
ポーランドは、EUには「社会的幻滅感」に責任があると述べた
―― Euronews, December 1, 2018
〜is in charge of …
疾病管理予防センターには、インフルエンザの症例を監視することを超えて、もっとずっと多くの公共衛生についてイニシアチブを取る責任がある
―― HuffPost, January 19,2018
〜 have responsibility for …
この役職では、業務チームの研修・開発・運営に責任を負う(研修・開発・運営の責任者である)
―― Built in Chicago, January 8, 2008
その他の「責任者」に関する英語表現
責任者関連でよくある英会話表現
店舗でのお客さま応対などでありがちな表現をいくつか挙げることができます。
責任者を呼んでまいります
責任者に相談します
責任者と話をしたいのですが
責任者になる、責任者を努める、責任者をやめる
〜には役職名が入ります。
become 〜
~に就任する
serve as 〜 (〜として仕える)
~を務める
take over as 〜
〜を引き継ぐ
step down as 〜 (〜の立場を降りる)
〜を辞任する
be forced out as 〜 (〜の立場から出るよう強制される)
〜の地位を追われる
be chosen to be responsible for… (…に対して責任を負うように選ばれる)
…の責任者に選ばれる
be put in charge of the … department (…部の責任を負う状態に入れられる)
…部の責任者になる
責任者を 〜する
punish those responsible for 〜
〜の責任者を処罰する
bring in a new 〜
新しい〜を迎え入れる
have him in charge of 〜
彼を~の責任者に任命する
Please do not ask who is in charge.
責任者を問わないでください
その他
executive には、名詞の場合に「経営者」「幹部」などの意味合いがあります。executive decision の場合の executive は形容詞で、「実行力のある」「執行部の」「幹部としての」などの意味で使うことができます。
幹部責任者としての決断をする
このほか、「責任者」を表す俗っぽい表現として big dog、can-carrier、honcho といったものがあります。俗っぽい表現を不用意に会話の中で使うことにはリスクがあるので、会話では無難で使いやすい表現を選びましょう。