英語の基本的な動詞は、簡単なようでいて、実は最も理解の難しい言葉です。それは、英語という言語の根幹にあって英語独特の考え方が最も色濃く反映されている言葉だからです。
初歩的で基礎的な言葉ほど、単純な日本語への置き換えではなく言葉の持つ細かいニュアンスを理解する必要があります。逆にいえば、基礎的な言葉を正しく理解することがネイティブの思考に近づく大きな一歩なのです。
「come」は「来る」ではなく「向かう」
Come here. こっちへ来て。
「come」は「来る」に対応する動詞として学びます。しかし単純に「come=来る」と理解しただけでは、come を使ったイディオムやフレーズが理解できません。たとえば、夕食に呼ばれて「今行きます」と言う場合、なぜ英語では「I’m coming.」と言うのか、納得できなくなります。
「come」は対象に向かうイメージとして理解しましょう。
日本語の「来る」はあくまで話し手を起点として、自分に「近づく(か、遠のくか)」と考えます。英語の come には、「自分(か、相手か)へと向かう」という考え方をします。
話題の中心にある場合が「いま自分のいる所」なら、「来る」と訳せる内容となります。話題の中心が「相手のいる所」にある場合は、日本語では「行く」と訳するべき内容となるわけです。
I’ll come back at six. 6時に戻って来ます
I’m coming. いま行きます
I’m coming は、むしろ「いま向かっています」と訳した方が、混乱しにくくて良いのかもしれません。
「go」は「行く」ではなく「離れる」
「go」は「行く」に対応する語として学びますが、英語の goは「話題の中心から離れてゆく」動きを示す語として把握しましょう。
夕食ができたからいらっしゃいと呼ばれた場面で「I’m going.」と返事した場合、そちらへ行くという意味でなく「今出かけます」という意味になってしまいます。
come と同じく go も、話題の起点によって使い方が変わります。たとえば「後ほどオフィスに行きます」というときは、相手(聞き手)も同じオフィスにいる(もしくは行く)なら「I’m coming to the office later.」と表現します。相手(聞き手)と別れてオフィスに向かう場面jでは「I’m going to the office later.」と表現します。
Go home! は「帰れ!」と訳されますが、go が「離れていく」動作を表す言葉であると理解すれば、「ここから出て行け」というニュアンスが含まれていることが分かります。
「bring / take」も考え方は「come / go」と同じ
come と go を使うコツは、つまり話題の焦点となっている対象に近づくか / 離れるか という基準といえます。
そして「bring」と「take」の使い方も同じ考え方が適用できます。
「bring」は「相手のいる場所に持っていく」イメージで捉えます。他方「take」は「相手とは離れた場所に持っていく」イメージと捉えることができます。
たとえば、「I’ll bring it to the office.」(オフィスにそれを持っていきます)という表現は、相手がオフィスにいる(もしくは行く)場合に用います。相手とは離れてオフィスに向かうのであれば「I’ll take it to the office.」(オフィスにそれを持っていきます)となります。
4つの動詞の使い分けをチェック!
オックスフォード大学出版局のサイトで、4つの動詞「come」「go」「bring」「take」を使い分けるテストができます。
「come」「go」「bring」「take」のニュアンスを正確に理解し、実際の英語表現に活用できるかどうかを確認してみましょう。
英語を逐一日本語に置き換えず、それぞれの単語のニュアンスを意識しながら使うことで、英会話での正確な表現ができるようになります。会話の相手に「近づくか、離れるか」を意識すれば、シチュエーションに合わせて「come」「go」「bring」「take」を使い分けることができます。