英語の動詞には、意識的にしっかり把握しないと文法的な誤りを犯しやすい語がいくつかあります。正しい用法をしっかり意識しましょう。
英語の動詞と、それに対応する日本語の動詞は、必ずしも文法的機能が一致しません。「日本語の文章を英訳する」ような考え方は特に誤用の要因になるので、早々に克服しましょう。
自動詞と他動詞を間違えやすいパターン
英語を学ぶと、動詞が「自動詞」と「他動詞」に区分されることを意識します。そして、日本語の動詞にも自動詞・他動詞の区分が適用可能であることに気づきます。これ自体は素晴らしい気付きです。
ただし、英語の動詞と、それに対応する日本語の動詞が、つねに自動詞・他動詞の区分まで一致するかというと、必ずしもそうとは限りません。意味は対応関係にあっても自他の扱いが逆という場合もあります。そういう種類の動詞が誤用のもとになりがちです。
他動詞なのに自動詞として使いがちな語
英語の他動詞の後ろには目的語が(前置詞などを伴わずに)置かれます。前置詞を挿入して意味が通る場合はありますが、その場合は動詞は自動詞として機能しています。
そして、もっぱら他動詞として用いるべき英語の動詞の、目的語に当たる語に、自動詞のように前置詞をつけてしまうという間違いがしばしば起こります。
discuss
discuss は「自動詞と間違えやすい他動詞」の代表例といえるでしょう。
対応する日本語はもっぱら「~について議論する」。この日本語表現の感覚に頼ると、英語の文にも「~について」に相当する前置詞 about を加えたくなってしまいます。しかし about は不要。
discuss は動詞そのものが「~について議論する」までの意味を含む他動詞です。
We need to discuss this problem.
この問題について話し合う必要がある
discuss の類似表現には自動詞が多いという点も、混同しやすい要因でしょう。たとえば talk about(~について語らう)、あるいは dispute over (~について諍いになる)などは前置詞が必要です。
いささか極端な考え方かもしれませんが、「議論は内容こそが重要」と考えてみましょう。ただ議論したか否かについて触れるだけでは不十分、「何を議論したのか」という議題の部分にこそ関心が向けられるのだ、そう捉えるくらいが丁度よさそうです。
marry
marry も自動詞と間違えがちな他動詞の代表格です。
marry の訳語としては「結婚する」が対応しますが、日本語の「結婚する(した)」は相手が誰かに言及せずに使えます。「(誰)と結婚する」という話題は追加の質問のイメージ。そんな日本語感覚につられると marry with ~ とか marry to ~ のように前置詞を挟んでしまいがちです。
marry は動詞そのものに「~と結婚する」という意味を含みます。基本的に「結婚相手が誰なのか」という部分まで前提している動詞なのです。
Do you want to marry him ?
彼と結婚したいの?
marry には自動詞の用法もあります。目的語を取らずに marry. とだけ述べる言い方は、必ずしも間違いとは言えません。
しかし前置詞を付けて結婚相手に言及する言い方はあからさまに不自然です。
approach
「~に近づく」。
approach には自動詞の用法もありますが、 Winter is approaching. (冬が近づきつつある)というような限られた意味用法でのみ用いられます。
answer
answer は自動詞・他動詞どちらの用法でも使われます。日本語的な(自動詞の)使い方もできます。ついでに名詞としても使えます。
「(人)に答える」、「(質問)に答える」と述べる場合、answer は他動詞として機能します。to のような前置詞を加えたくなるところですが、それは蛇足というもの。
oppose
oppose は「対抗する」「反対する」といった意味を示す動詞。基本的に他動詞として用いられます。
「~に反対する」という意味からして against などの前置詞を添えたくなりますが、oppose そのものが「~に反対する」という意味を示す語です。against を付け加えると「~に対して反対する」という重言めいた言い方になります。
enter
enter も自動詞の用法はありますがもっぱら他動詞として(「~に入る」までの意味を含めて)用いられます。
かつては enter into ~ のように前置詞付きで述べることもあったようですが、これは今や廃れた用法です。
consider
consider (~について熟考する)も discuss と同様に「~について」部分を動詞そのものに含む他動詞です。
自動詞の用法もあるので、目的語をとらずに「熟考する」と述べる言い方もできます。
mention
consider (~について言及する)も、話題を目的語に取る他動詞です。
どうも「~について」と訳されるタイプの動詞は要注意と見るべきかもしれません。必ず他動詞というわけでもなく、自動詞の用法を基本とする refer のような語もあります。
appreciate
appreciate (~に感謝する)には to や for をつけたくなりますが不要です。appreciate +人+ ~ing という形で「誰の何(行動)を感謝する」と表現できます。
感謝のフレーズとしては Thank you for ~ . を連想して混乱しがちです。thank の意味用法も併せてよく把握しておきましょう。
英語で伝える「ありがとう」の言葉、場面別に使えるお礼と感謝の表現集
自動詞だけど他動詞と勘違いしやすい語
本来は自動詞として用いるべき動詞を、前置詞をつけ忘れて他動詞のように述べてしまう誤用パターンもあります。
graduate
graduate は「卒業する」という意味で用いられますが、「どこそこを卒業する」という意味までは含みません。つまり目的語を取らない自動詞です。卒業校に言及する場合は前置詞 from を添えてやる必要があります。
She graduated from high school.
彼女は高校を卒業した
graduate にも他動詞の用法はあるのですが、これは「卒業させる」「輩出する」という文脈で用いられます。
他動詞を受動態で用いて(「輩出された」と述べて)卒業した旨を述べる言い方はあります。これも結局は前置詞が必要になります。
She was graduated from highschool.
彼女は高校を卒業した
appeal
appeal は「誰に何を訴えるのか」という部分を前提した表現のように思われがちですが、「誰に」部分も「何を」部分にも前置詞が必要です。
He appealed to us for help.
彼は我々に助力を求めた
refer
refer は「言及する」「引き合いに出す」といった意味の動詞で、自動詞です。引き合いに出す対象は前置詞 to をつけて表現します。
refer と同じく「言及する」と訳されることの多い mention が他動詞ということもあり、混乱しやすい部分です。refer to まで含めて覚えてしまいましょう。
refer も他動詞として用いられることがありますが、目的語はもっぱら「誰に」という部分で、内容を示す場合は前置詞をつけて述べます。
reply
reply は「答える」(返信する)という意味の語。誰に対して返信すると述べる場合は reply to ~ と前置詞をつけて述べる必要があります。
reply には他動詞の用法もありますが、目的語はもっぱら「答える内容」を示します。refer とは逆のパターン。
apologize
apologize は「謝罪する」という意味も自動詞。apologize to (相手) for (謝りたい内容)、の形で用いられます。
appreciate (感謝する)と対比させると却って混乱しがちです。
apologize は 基本的に対象も内容も前提しない表現ということで、「謝る」というよりは「謝意を表明する」というニュアンスで把握しましょう。
文型を間違えやすいパターン
英語は動詞によって使える文型がおおむね決まっていますが、一部の動詞は第3文型と第4文型の書き換えが可能です。
第3文型で用いられる動詞の中には、第4文型に組み替えて表現できそうな(気がする)けど実際には無理という種類の動詞があります。
第4文型(SVOO)が使えそうで使えない動詞
英語の第3文型は《SVO》、第4文型は《SVOO》の構成を取ります。Sは主語、Vは動詞、Oは目的語です。第4文型は「誰が・誰に・何を・どうした」と述べる形をとります。「授与動詞」と呼ばれる動詞群がこの文型に対応します。
授与動詞の典型例は give、 tell、show、 make など。これらの動詞は第4文型でも使えますし、第3文型でも使えます。
- He gave a book to me.(第3文型)
- He gave me a book.(第4文型)
授与動詞を理解して、ある程度なじんでくると、第4文型にできない動詞も第4文型にできるものと早合点してしまいます。
「内容」を目的語に取って「相手」は前置詞つきで示す動詞
第3文型をとる動詞で、たいてい「誰に・何を」まで述べることになる動詞には、「誰」要素と「何」要素のどちらを目的語として取るか決まっている場合があります。
explain や express といった動詞は、「何を」要素が目的語に置かれます。「誰に」と述べる場合は前置詞を添えて表現しなくてはなりません。
- explain (~を説明する)
- express (~を表現する)
- propose (~を提案する)
- suggest (~を提案する)
- confess (~を告白する
He explained the situation to me.
彼は私に状況を説明した
Explain to me the situation.
状況を説明なさい
propose は目的語の「内容」部分を省いて表現できますが、「内容」の代わりに「人」を目的語に置けるわけではありません。それは自動詞です。「人」への言及には前置詞 to が必要です。
He proposed to me.
彼にプロポーズされた
「人」を示す際には基本的には前置詞 to を用いますが、例外的に of を用いる場合もあります。inquire (尋ねる)などは of+人の形で記述されます。
I inquired of my boss.
私は上司に尋ねた
「相手」を目的語に取って「内容」は前置詞つきで示す動詞
explain や express とは逆に、remind や inform といった動詞は、目的語に「人」を取り、内容に触れる場合は前置詞を添えて述べる必要があります。
- remind (~に思い出させる)
- inform (~に知らせる)
- assure (~に保証する)
- convince (~を納得させる)
- persuade (~を説得する)
- warn (~に警告する)
This song reminds me of my youth.
この曲を聞くと若いころを思い出す
これらの動詞も基本敵意にSVOOの第4文型では表現できません。ただし、that節を含む文ではSVOO型で記述できるようになります。
Please remind me that I need to call him later.
後で彼に電話かけるってリマインドして
動詞はイメージを思い描いて把握しよう
「人」と「内容」のどちらか一方を目的語に取って、他方は前置詞を添えて表現しなくてはならない、というような違いは、いかにも理不尽に思えます。(英語圏でも誤用は見られます)
このへんの情報は、言葉ではなかなか把握しきれませんが、図像(視覚的)イメージとして覚えると、意外と把握が容易です。
たとえば remind や inform は、知らせる対象(相手)の像まで思い描いてセットで把握する。explain や express ならフキダシや図形を添えたイメージで把握する。そんな風に自分なりのルールを設けてイメージを作ってみましょう。