英語を独学で学ぶコツが知りたい!という方はロンブ・カトー(Kató Lomb)の英語学習法から多くの学びが得られるかもしれません。
カトーの自伝的著書「Polyglot: How I Learn Languages」では、自身がどのように言語を学んできたかを詳細に語り、それを通じて大小さまざまなレベルの心構えを説いてくれています。
ロンブ・カトーの概要
カトーは1900年代ハンガリー生まれの翻訳者で、十数もの言語を独学で習得し、流暢に話せるだけでなく同時通訳までこなした人物です。西欧の言語だけでなく中国語、日本語、ヘブライ語なども習得していました。
著書の概要
カトーの著書「Polyglot: How I Learn Languages」は 1970年に刊行され、以来ずっと言語学習者の指針として読み継がれています。
Polyglot は「多言語を操れる」といった意味の言葉です。多言語話者(マルチリンガル)あるいは多言語対応の書物などを指します。
日本語では「わたしの外国語学習法」というタイトルでちくま学芸文庫から訳書が刊行されています。
カトーの英語学習の主な考え方
話し言葉と書き言葉を分けて考える
ロンブ・カトーは、ひとつの言語を学ぶことは、「話し言葉」と「書き言葉」という2つの言語を学ぶに等しい、という考え方を持っていました。
耳で聞いて口で発する「話し言葉」と、目で読んで手で綴る「書き言葉」は、同じ言語を扱うとはいえ、まったく別種の感覚が必要です。
スピーキングとリスニングを勉強する時間と、ライティングとリーディングを勉強する時間。これを区別して学習時間を振り分けることで、語学力が総合的にバランス良く向上するというわけです。
単語は文章を通じて(文章の中で)覚える
ロンブ・カトーは、単語は文脈の中で覚えることで記憶に残りやすくなると言っています。
単語を単独で暗記しても、すぐに忘れてしまいます。単語を前後の表現と一緒に覚えていれば、他のことばを聞いたときに、つられて当の単語を思い出せるようになります。
カトーは、時代に左右されずに使えるような、文法的に正しい文を覚えることが必要とも述べています。
方言や慣用表現を覚えてもしょうがない。そんなものは甘えん坊な子どもの言語のようなもので、すぐに変化してしまう。
時代に流されてて変化してしまわないような「質の高い文」を使って単語を学ぶ具体的方法として、ロンブ・カトー自身は「辞書の例文をまるごと覚える」という勉強法を実践していました。
単語の意味を敢えて調べない
ロンブ・カトーは、外国語の本を読む際、辞書に頼らずに単語の意味を想像しながら読むよう意識していたといいます。
その場で辞書を引いて納得してしまうよりは、知らない単語の意味を想像しながら読み進めた方が、最終的には記憶に残りやすくなるもの。そんな効果もありますが、カトーはむしろ「読書を楽しみ」「モチベーションを維持する」ことを主な目的として辞書を遠ざけていたようです。
勉強の目的をはっきりさせる
ロンブ・カトーは、「目的を達成するために外国語を学ぶ」ことが大切と考えています。自著の対象については次のように言っています。
ここでの対象は、言語好きな人、つまり実際に言語を使うことを目的として言語習得を望む人だ。
明確な目的を持たずに「英語をうまく話せるようになりたい」と漠然と考えるのではなく、何のために英語を学ぶのかをはっきり見据えて学習に取り組む。目的や目標の有無は、やる気や集中力の程度に大きく影響します。
高邁な目標でなくても、目前の学力試験が目標でも、漠然と学習に取り組むよりは学習の進み方が違ってきます。何より達成の感慨が大きく違ってきます。
ほんの少しずつでも毎日欠かさず続ける
勉強時間やペースについては、少しずつでも勉強を続けることが重要といいます。
1日がどんなに忙しくても、10分くらいなら時間は取れるでしょうし、語学学習に意識を傾けることはどこにいてもできます。たとえば例文を思い出したり、独り言で会話の練習をしたり。
ロンブ・カトーは十数カ国語を習得するまでに25年に及ぶ歳月をかけています。四半世紀も語学の勉強を続けたというと尋常でない事のように聞こえますが、これは地道にコツコツと学習に取り組み続けてきたことの証ともいえるでしょう。
外国語学習がただ単に「必要なもの」「やらなくてはいけないこと」だと考えてしまうと、語学そのものに興味を持つことを忘れ、がむしゃらに勉強しがちです。何よりもモチベーションを大切にし、目的をはっきりさせ、少しずつでも効率的に学習を続けることが、語学力アップへの近道になります。
才能よりも努力
ロンブ・カトーは次のようにも述べています。
知識を追い求め、知的な冒険に繰り出せる人なら、誰でも私のやり方を実現できる。私はそう信じている。
カトー先生は天才だからマルチリンガルになれたんです、という指摘は、きっと妥当ではないでしょう。語学力は頭の良し悪しにかかわらず誰でも身につけられるものです。ネイティブスピーカーなんて全員その言葉を話しているわけです。
学習を楽しみ、挫けることなく取り組み続ければ、言葉はきっとマスターできます。「Polyglot: How I Learn Languages」は、英語学習への意欲を沸き立たせてくれる、何度も繰り返し読む価値のある一冊といえるでしょう。