英語の前置詞は「イメージ」で理解しましょう。そしてイメージの「捉えかた」のコツがつかめれば、ほぼカンペキな理解が得られます。
「PEN英語教師塾」の動画レッスンを紹介するコラボレーション企画、今回は「Route Prepositions」(経路前置詞)のレッスンをご覧に入れます。across、along、around、through、over の5単語について解説されています。
→英語の経路前置詞
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講師は日本における英語のコア理論の第一人者・田中茂範先生です。
動画は20分。以下は動画レッスンの例文だけおおざっぱに抜き出したものです。画像はレッスンの付帯資料をお借りしています。(本編ではもっと沢山の画像を使っています)
「経路の前置詞」を理解するコツ
レッスン内で解説されている前置詞は across、along、around、through、over の5つです。
この5つの前置詞が「経路前置詞」と総称されています。それぞれの経路(route)の視覚的イメージはこんな感じ。
移動・状態・視点の3要素に分けて捉える
across をはじめとする経路前置詞は、意味・用法を《移動》《状態》《視点》という3要素に分けて捉えると、体系的に理解できるようになります。
下記はレッスン動画で直接言及されているわけではありませんが、あえて3要素を「経路」の語に結びつけるとしたら、こんな風に把握できるかもしれません。
- 「移動」は、物体が動作(移動)する際の経路。
- 「状態」は、移動経路になぞらえて表現される状態・状況。
- 「視点」は、自分と対象との位置関係、いわば視線の経路。
「移動」のイメージは比較的シンプル。理解も容易でしょう。「状態」のイメージの理解には、少しコツが要りそう。「視点」のイメージは、まずそういう捉え方があるということを知っておくだけで新しい世界がひらけます。
各前置詞の基礎イメージと用法・用例
across
across のコアイメージは「平面を横切って」と捉えられます。
このイメージを基礎に、《移動》《状態》《視点》という観点を加えて、具体的な文例を見ていきましょう。
移動
《移動》のイメージはシンプルに「横切って移動する」「横断する」といった意味合いで捉えられます。
人々が道を横切って歩いている
彼は川を横切って泳いでいる
状態
across の《状態》のイメージは、「横切るようにして」「横切るような状態で」という風に捉えられます。
彼の顔には横切るような切り傷がある
彼は胸の前で腕を組んでいる
視点
《視点》のイメージは「視点が(経路にそって)移動している」と考えましょう。across の場合は「視線が横切って移動する」ような感じ。その視線の先にある何か、へ言及するわけです。
店は道路の反対側にある
「状態」と「視点」の比較と区別
状況によっては、同一の文面だけど前置詞を複数通りに解釈する余地があり、解釈によって内容が微妙に違ってくる、という場合もあり得ます。
たとえば There’s a tree across the road. という一文。この across は、「木が道路を横切って倒れている」とも解釈できますし、「道路の反対側に木がある」とも解釈できます。
木が道路を横切って倒れている(《状態》のイメージ)
道の反対側に木がある(《視点》のイメージ)
複数通りに解釈できる内容が、実際どちらの意味で述べられているかは、文脈を手掛かりに判断することになりそうです。
along
前置詞 along のコアイメージは「~に沿って」あるいは「~の道なりに」と捉えられます。
移動
《移動》のイメージは「~に沿って移動する」と捉えられます。
along に限らず、「経路前置詞」の《移動》のイメージは全部コアイメージの示す経路にそって動くと解釈してしまえます。
車は山道に沿って走っている
彼らは海岸に沿って歩いている
状態
along の《状態》のイメージは「~に沿って(並んで)いる状態」です。
道の両側に沿って木々が立っている
視点
along の《視点》のイメージは、どちらかというとイギリス英語寄りの用法らしいのですが、「話者の視点が道や何かに沿って移動していく」ようなイメージで用いられます。
この道をずっと進んでいけばガソリンスタンドがある
前置詞が《視点》のイメージで用いられている叙述を《動作》のイメージで受け取ってしまうと「建物が移動している(?)」というような微妙な文意で捉えることになってしまいかねません。
around
前置詞 around は「周囲をぐるっと回るように」というコアイメージで捉えられます。
移動
around の《移動》のニュアンスは、トラック競技などで走者がコーナー沿いをぐるりと走るようなイメージで捉えてもよいでしょう。
走者たちがコーナーを(ぐるっと回るように)走っている
状態
around を《状態》のイメージで用いる場合は「ぐるりと」「囲むように」といった意味・ニュアンスになります。aroundに関しては《動作》よりも《状態》の方がなじみの用法といった感があります。
人々が角をぐるっと囲むように並んで待っている
彼らはテーブルを囲んで座った
視点
around の《視点》の用法は、ちょっとイメージしにくいものの、「(視点が)~を回った先に」という意味で用いられる場合があります。
角を曲がったところにガソリンスタンドがある
「状態」と「視点」の比較と区別
around も、同一の文章が文脈によって複数のニュアンスで解釈し得るような場合があり得ます。
たとえば There is a line around the corner. と述べた場合、「角を曲がったその先に」という趣旨の場合と、「角をぐるりと囲うように」という趣旨の場合があり得ます。実例に遭遇する機会は少ないかもしれませんが。
角を曲がった先に線が引いてある(《視点》のイメージ)
角を囲むように線が引いてある(《状態》のイメージ)
through
前置詞 through のコアイメージは「空間を通り抜ける」と捉えられます。
移動
《移動》のニュアンスでは through は「空間を通り抜ける」(通過する)ような動作が表現されます。
車がトンネルを走り抜けている
鳥が窓を通り抜けて部屋に入ろうとしている
状態
《状態》を示す用法の場合、「~を通り抜けるような形で」「~を貫く」という風に捉えると理解しやすいでしょう。
森を抜けるデコボコ道がある
川が街を流れている
through は必ずしもトンネルのような3次元空間を通り抜けるという状況に限らず、2次元的・平面的な範囲を通り抜けるという状況でも使えます。
視点
《視点》の意味で through が用いられる場合、「~を抜けたところに」とでも言うべき意味・ニュアンスがあります。
トンネルを抜けた先に男の姿が見える
over
前置詞 over のコアイメージは、「~を飛び越えて」という経路のイメージと捉えられます。
上方を飛び越えるさまが「覆うように」というイメージにも通じます。
移動
over の《移動》の用法は、「~を飛び越えて」という経路のイメージで捉えられます。
気球は山の上を飛び越えるように飛んでいる
彼女はバーを飛び越えようとしている
状態
over の《状態》のイメージは、「~を覆うように」と捉えた方が理解しやすいでしょう。
テーブルを覆うように布がかかっている
虹が山の上を覆うようにかかっている
視点
over を《視点》のイメージで用いる場合、「~を越えたところに」とでも表現すべき意味合いになります。
視点が「飛び越える」というニュアンスの用法がある、ということをあらかじめ知っておかないと、上方に覆うように位置しているという風に誤解してしまいがちです。
山を越えたところに城がある
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