英語の助動詞 with の根本的イメージは「~と共に」というもので、 ほぼ with の一般的な理解そのままです。ただし、その具体的な用法は「手段」や「原因」のように多岐にわたる意味り、必ずしも根本イメージとは直結しません。
根本的なイメージ(コアイメージ)をあくまで念頭に置き、そこからどういう脈絡で「手段」や「原因」といった具体的な意味合いに結びつくのかを理解しましょう。これがつかめれば前置詞 with の使い方では迷わなくなるでしょう。
ということで、PEN英語教師塾の動画レッスン講義シリーズより、今回は「前置詞 with」 に関するレッスンをご紹介します。
→前置詞 with
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with のコアイメージは「〜と共に」
英語の前置詞 with のあらゆる意味・用法・用例に通底する根本的なイメージ(コアイメージ)を、あえて言葉で表現するなら、それは「〜と共に」という表現になるでしょう。
「~と共に」というイメージそのものは、前置詞 with の最も基本的な理解であり初歩的な訳語でもあります。改めて教わるまでもない、という感すらあります。
具体的な意味・用法は広範すぎて手に余る
前置詞 with を理解するに当たって厄介なのは、コアイメージの理解ではなく、この「~と共に」というイメージの使いどころがきわめて多種多様であり、文脈と with の語が容易に結びつかない、という部分です。
辞書的な意味合いの区分をザッと挙げるだけでも、優に十数種類には区分できてしまいます。
- 同伴・随伴
- 所有・属性
- 手段・道具
- 供給
- 関係・関連
- 様態
- 原因・理由
- 付帯状況
- 方向
- 比例・対応
- 同時・直後
- 管理・世話
- 所属・勤務
- 登録・出演
- 条件
- 対立
こうした意味合いを、いかに「~と共に」というコアイメージと結びつけて捉えられるかが、前置詞 with を本質的に理解するためのコツといえるでしょう。
まずは with の意味・用例を大きく2つに区分しよう
with のコアイメージと具体的な意味・用法との間に、大きな中間的区分を設けましょう。すなわち、具体的な意味・用法を、「〜を伴って」「〜と共に」というニュアンスの群と、「〜でもって」とでも訳すべきニュアンスの群との2つに大別してしまいましょう。
with の意味合いをあらかじめ大別してから個々の具体的な用法を捉えると、中間的なニュアンスがコアイメージと具体的な意味合いとを仲立ちし、繋がりを把握しやすくなります。
「〜を伴って」的ニュアンスの with の具体的用法・用例
「〜を伴って(〜とともに)」に分類することのできるwithの用例を見ていきましょう。
〜と一緒にある・いる
「〜を伴って(〜とともに)」のコアほぼそのままの、「〜と一緒に」を示すwithの用例があります。
彼女は毎朝犬と公園を散歩する【犬とともに、犬を伴って】
<対談の司会で>ジョンソン博士に来ていただきました【ジョンソン博士とともに、ジョンソン博士を伴って】
〜を相手にして
「〜を伴って(〜とともに)」から展開して、「〜を相手にして」という意味を持つwithの用例もあります。
動詞が衝突や戦いなどの意味を持つものの場合、辞書では「対立」の用例として分類されますが、fight with などの用例をコアからすっきりとらえきるには「〜を相手にして」の仲間のひとつとして考えたほうがよいでしょう。
我々は敵と戦った【the enemy を相手にしてfight】
fight with と同じような使い方のwithの表現としては、fight with〜(〜と戦う)、struggle with〜(〜と闘争する)、quarrel with〜(〜と口論する)、conflict with〜(〜と衝突する)などを挙げることがで
きます。
「〜を相手にして」の感覚でとらえやすいものとしては、deal with、talk with などを見出すことができます。
あの会社と取引をしたくない【that companyを相手にしてdeal】
彼とは話したくない【heを相手にしてtalk】
〜とくっつけて(連結の対象)
2つのものを1つにするような動詞と共にwithが使われた場合、「連結の対象を示すwith」として分類することができます。コアからのつながりとしては、「〜とともに」→「〜とくっつけて」という流れでとらえることができます。
油は水と混ざらない
彼の考えと彼女の考えを組み合わせることができればすばらしいのに
〜に対して…な状態である(状態の帰属先)
直訳したときに「〜に対して…な状態である」という形でとらえられるwithの用例もあります。「〜に対して」という言葉がありますが、これはwithのコアから解釈すると「〜を伴っているときに」という形で理解することができます。
どういうことなんだ?【あなたとともにある問題は何ですか】
私のコンピュータは何かがおかしい【何かがおかしい状態が私のコンピュータとともにある】
【私を伴っているときに恋の状態にある】彼女は私に恋している
他人には辛抱強くあれ【ほかの人を伴っているときは辛抱強い状態であれ】
最近子どもたちに優しいんだね【子どもを伴っているときに優しい状態である】
〜に合う(同調)
go with〜 で、「〜に合う」という意味を持つwithの用例があります。コアからの流れは、「〜とともに行く」→「同調する」→「〜に合う」という形でたどることができます。
その青いシャツがあなたのズボンに合う
〜な状況なので、〜な状況で(状況設定)
withには「〜な状況なので、〜な状況で」という形で状況設定をするものがあります。「〜な状況を伴って」→「〜な状況なので、〜な状況で」というコアからの流れを見出すことができます。
子どもが手を離れたのだから、自由な時間がたくさんあるでしょう【子どもが離れたという状況を伴って】
このことを心に残して、日本を去ります【このことを心の中に伴って】
〜の…(特性・包含・付属)
「〜の…」と訳され、「特性・包含・付属」を示すwithもあります。用語としては難しいですが、使い方はコアからとらえてみれば簡単です。「〜を伴っている…」→「〜の…」という流れで考えてみましょう。
ブロンドの髪の毛の少年【ブロンドの髪の毛を伴っている少年】
よい性格の人たち【よい性格を伴っている人たち】
四輪駆動の車【四輪駆動を伴っている車】
〜に関連して
「〜のことで」という訳となり、「関連」を示すwithの用例もあります。「〜を伴って」→「〜に関連して」→「〜のことで」という形でコアからの流れを理解することができます。
彼はお金のことで問題を抱えている【お金を伴った問題】
〜に任せて、〜のもとに(預けて)
leave、stayなどの動詞とともに用いて、「〜に任せて、〜のもとに(預けて)」という意味を持つwithがあります。コアからのつながりは「〜を伴って」→「〜と一緒にいる(ある)状態を残して/保持して」→「〜に任せて、〜のもとに(預けて)」という形でとらえることができます。
イヌは友だちのところに預けるよ【イヌが友だちとともにいる状態にして去る】
break、partなど(分離)
break、partなどと共に用いられるwithは辞書で「分離」として分類されていますが、コア理論的にとらえるならばbreak with は「ともにある状態をbreakする」という形で読み解くことができるでしょう。
古い伝統とは決別すべし【古い伝統とともにある状態をbreakする】
「~でもって」的ニュアンスの with の具体的用法・用例
「〜とともに」→「〜でもって」という形で展開していったと考えられるwith用例を見てみましょう。「でもって」に分類されるwithの用例では、 「何かを手にして」あるいは「何かでもって」という部分が強調されます。
道具でもって
「でもって」に分類できるwithには「道具」を示すものがあります。コアからの流れは「道具とともに」→「道具を手にして」→「道具でもって」という流れで考えることができます。
鉛筆で書類に記入しないでください
※補足
a pencilは手にすることのできる道具で、手にすることのできる道具のpencilには冠詞がつきます。「鉛筆で」はin pencilと も言いますが、in pencilの場合は「文字の素材としての鉛筆(鉛筆文字)」という意味が強くなります。
原因・理由でもって
原因・理由を示すwithの用例もあります。コアからの筋道は「原因・理由とともに」→「原因・理由でもって」という形でとらえることができます。
そのネコは見つけたとき寒さで震えていた【寒さでもって(理由)】
素材・材料・要素でもって
withには素材・材料・要素の意味を示すものもあります。「素材・材料・要素とともに」→「素材・材料・要素を手にして」→「素材・材料・要素でもって」という形でコアからの流れを理解することができます。
いろいろな野菜を使ってこのシチューを作った
様子・仕方でもって
「様子・仕方で」を示すwithがあります。「様子・仕方を(比喩的に)手にして」→「様子・仕方でもって」という形で意味の流れをとらえることができます。
彼は尊厳死を遂げた【尊厳を手にして】
彼女は会社の古い規則を勇気をもって批判した【果敢なる勇気でもって(様子・仕方)】