英語の助動詞「shall」の基礎イメージと覚え方・使い方

英語の助動詞は総じて多義的です。shall もまたしかり。意味ニュアンスを正しく理解して使いこなすには、言葉の根本にあるイメージ(コアイメージ)を捉える姿勢が重要です。

学びはじめの段階では、辞書や教科書によって体系的に整理された意味・用法を学ぶ方法が効果的でしょう。やや慣れてきたら言葉の根源的なニュアンスを模索してみましょう。

英語の「助動詞」を本当に理解する学習のコツ(急がば回れ)

英語の助動詞 shall の中心イメージを「負うている」と捉えてみる

言葉の「いわゆるコアイメージ」は、それ自体を言い表すことのできない抽象的なものです。どのように受け取るかは人それぞれですし、イメージ自体を共有することもできません。

そういう前提で、あえて shall を「何か(達成すべきこと)を背負っている」という感じのイメージで想定してみましょう。

shall を宗教的イメージと絡めて把握してみる

shall は多分に、西洋キリスト教的な思想と密接に関連した表現といえます。聖書にも shall はよく登場します。

負っているものは「西洋的な神(圧倒的な存在)から下されたもの」であると捉えてみましょう。キリスト教的な神、もしくは天運・天命・自然の摂理のようなものを想定してみます。

そういう観点から捉えてみると、shall の語が含む毅然としたイメージ、有無を言わさぬ雰囲気、格調高い印象なども、自然と納得がいきます。

宗教がらみのニュアンスはあくまでも根本イメージの把握の手がかりです。必ずしも、今日の shall の語に宗教的イメージが付随するわけではありません。


助動詞 shall の意味ごとの捉え方と用例集

shall を「宗教的ニュアンスで」「何かを負っているということ」と捉えてみると、shall の語義が教科書的な区分とはまた違った脈絡で俯瞰できるようになります。

命令

shall の語義のうち特に「命令」の用法は、「負う」的コアイメージを見出しやすい語義といえます。

聖書では、神が人々に「〜すべし」と語る形の記述に shall を用いた例が多く見出せます。これは神から直々に命ぜられて務めを負うニュアンスの典型といえるでしょう。

You shall not commit adultery.
汝、姦淫するなかれ 【聖書】
Nation shall not lift up sword against nation.
国は国に向かって剣を上げるなかれ【聖書】

予言・約束・決まり事

予言・約束・決まりごとを表現する意味合いも、「神から背負っている」というイメージと結びつけやすい語義です。

聖書では予言(預言)や訓戒を人々に説くくだりが多く見られます。その中で shall が用いられている例も多く見いだせます。

Man shall not live by bread alone.
人はパンのみにて生くるにあらず【聖書】
The lip of truth shall be established forever.
真実を語る唇はいつまでも確かなものとなる【聖書】
A man’s pride shall bring him low.
驕る者は卑しまれる【聖書】

こうした「命令」や「約束事」といった意味合いの用法は、今日ではかなり稀な部類です。使用例があるとしても、ほぼ契約書や職務上の文書などのような硬い表現に限られます。

All students shall attend the meeting.
学生は皆ミーティングに参加すること

話者の意志

shall の「話者の意志」を表現する用法は、「神から背負っている」というニュアンスを「神から授かった(天命・使命)というべき意志を持っている」という風に主体的に捉えると納得しやすくなります。

その意志は単なる個人的な考えではなく、使命であり全うすべき義務である、責務を負っている、というニュアンスを伴う意志です。強く揺るぎない遂行意志を伴うイメージがあります。

一人称の文(きっと〜しよう)

自分の意志を表現する際に shall を用いて述べる言い方は、現代の日常会話で接する機会はめったにありませんが、古典文学作品を思わせる荘厳なドラマティックな響きがあります。

I shall never forget your passion,
貴方の情熱を私はきっと忘れまい
I shall cry every time I remember you.
貴方を思い出す時にはきっと涙してしまうだろう

二人称・三人称の文(〜させてやろう)

shall が「意志」の意味合いで用いられる場合は、主語が話者(一人称)の場合の他に、話者以外の他者(二人称や三人称)を主語におく場合があります。

主語が二人称や三人称の場合は、話者自身がその相手(主語)に対して話者自身の意志を言い渡すような意味合いを伴います。

You shall have this reward.
褒美を取らす

言うなれば「これは揺るがない決定事項であり異論は認められない」というニュアンスのある言い方です。かなり居丈高な印象もあります。日常会話では使う機会はまずないと考えてよいでしょう。

二人称・三人称を主語に置く文の shall の用法は、shall の特徴的イメージを理解する上では重要な手がかりです。蔑ろにはせず、知識として得てきましょう。

相手の意志を尋ねる

意志の shall を疑問文で用いると、相手の意志を尋ねる表現として使えます。話者の意志のニュアンスを土台に「あなたにはそういう(天命使命のごとき)意志はありますか」と尋ねる、意思確認の表現です。

相手の意志や意向を伺う表現は shall の他にも沢山あります。日常会話では would 等の表現がよく用いられます。shall は古めかしくて雅びな響きを伴います。アメリカ英語よりはイギリス英語の方に用例が多く見いだせます。

Shall we go to the party?
そのパーティへ参りましょうか
What shall we do for this weekend?
この週末に何をしようか
Shall we go cycling?
サイクリングなんてどうでしょう
Let’s go to see a movie, shall we?
映画を見に行きましょうよ、ね

反語

shall を含む疑問文は、意志確認の他に反語の表現として用いられる場合もあり得ます。

「天命を負っているとでもいうのだろうか、否、そんなはずはない」というようなニュアンスで考えるとよいでしょう。

Who shall get an eternal life?

誰が永遠の生を得るというのか。否。

shall を理解すると should もよく理解できる

shall の過去形は should です。should は shall とは切り離され、別個の助動詞として扱われています。日常会話では should の方がよく見聞きします。

英語の助動詞「should」の意味・使い方・用例
英語の助動詞「should」の基礎イメージと具体的な使い方・覚え方

間接話法で時制を変える場合には shall の語義のまま should に語形変化させて用いられますが、それ以外の文脈では、should の意味の手がかりとして shall を引き合いに出すことも少ないでしょう。

とはいえ元々 should は shall の派生表現です。shall の根本的な意味合いを理解した上で should を捉え直すと、より有機的に語意が理解できるようになります。

言葉の表面には出てこない、秘められたニュアンス、これを探る試みが楽しめるようになると、言語感覚は飛躍的に向上します。言葉に対する興味や愛着も湧きます。ぜひ、深掘りして詮索してみてください。


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