英語の前置詞「in」は、「中」「内部」といったイメージで、比較的わかりやすい言葉です。しかしながら in の意味を「使い切る」(全ての意味・用法を正しく捉えて使いこなす)のは至難のわざです。
PEN英語教師塾の動画レッスンを通じて、in の基本となるイメージから応用的なとらえ方まで一通り学びましょう。辞書やテキストを読むだけでは汲み取りにくい「こういう感じ」という理解がきっと得られます。
→前置詞inの世界
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講師は日本における英語の「コア理論」の第一人者としてお馴染み、田中茂範先生です。動画は15分程度。以下(↓)の記事は動画レッスンの例文を抜き出したものです。
in のコアイメージは「空間内」と捕らえられる
前置詞 in の根本の意味、コアイメージをあえて言葉で表現するなら、「空間内」のイメージと言えるかもしれません。何かが空間の中にある、というイメージです。
inで扱われる《空間》には、3次元空間も含めば、2次元空間(平面)も含まれます。時間の流れを空間的にとらえる比喩的なとらえ方もあります。
in the box という表現は、 in のコアイメージが最もよく分かる例といえるでしょう。box(箱)は、内部に空間のある3次元的な広がりです。
箱の中にサッカーボールがある
- the cheese in the can 缶の中のチーズ
- the milk in the glass グラスの中のミルク
- personal computers in the office オフィスの中のPC
- stamps in the top drawer 一番上の引き出しの中の切手・スタンプ
- the frog in the pond 池の中のカエル
- a big hole in the lake 湖の中の大きな穴 (ダム穴)
空間の境目が曖昧でももちろん in で表現できる
box(箱)のように空間の内外の境がハッキリしているわけではない、という場合も、「内部」を示すイメージなら in が使えます。
- trees in the forest 森の中の木々
- a straw in one’s hair 誰かの髪の中の麦わら
- grasshoppers in the grass 草の中のバッタ
- muscles in one’s legs 誰かの脚の中の筋肉
in の「空間的内部」のイメージは、内外を隔てるというよりは「それに包まれている」というイメージで用いられることもあります。
たとえば、kids in the rain (雨の中の子どもたち)という表現は、「雨降りの空間に包まれて」→「雨の中で」というイメージで捉えられます。
The lady in red is dancing. (赤い服の女性が踊っている)というような表現も、in the rain と同様「包まれている」イメージで捉えるとよいでしょう。「赤色に包まれている」と表現して「赤い服を身に着けている」様子を表現するわけです。
対象が2次元(平面)的でも空間と捉えるなら in で表現する
in は空間的内部を捉えるイメージが基本ですが、必ずしも box のような3次元空間の内部を指すとは限りません。平面的なイメージとも思われるような対象について in を使って表現する場合も多々あります。
対象が平面的であっても空間的に捉えて「中に」という意味合いを示す点は変わりありません。
- the girl in the corner 角のところにいる女の子
- swings in the park 公園の中のブランコ
- the old man in the picture 絵の中の年老いた男性
- taxies in the street 通りの中のタクシー群
- the sun in the east 東にある太陽
- the spot in the circle 円の中の点
- the mountains in the north 北にある山々
- the bull in the field 草原の中の雄牛
- the lady in the shadow of a tree 木の影の中の女性
- the curve in the road 道路のカーブ
平面に乗っかっているというイメージではなく、範囲の中に在るイメージ、と捉えるとよいかもしれません。
抽象的な「状態」について「状況の中にある」と表現する
前置詞 in は、抽象的な概念を指して「状態・状況の中」を指す意味合いでも用いられます。
状態・状況を空間的に捉える、というと却って分かりにくい感もありますが、要は「そういう状態の中にある」ということです。
- flowers in full bloom 満開の花々
- the girl in love 恋をしている女の子
- butterflies in one’s stomach 落ち着かない
butterflies in one’s stomach は「蝶がおなかの中にいる(ような感じ)」と表現してザワザワしているさまを形容する比喩的な言い方です。
in reality (現実に)、in conclusion (結論としては)、in one’s opinion (私の意見では)といった表現も、かなり抽象的ではありますが、それぞれ「内部にある」というニュアンスで対象を捉える表現といえます。
時間の流れを空間的に捉えて「時間の中」を指す
抽象的なものごとを指して in で表現する言い方といえば、時間に関する表現もあります。
時間について述べる場合も、対象(つまり時間)を「空間的に捉える」感覚を持ちましょう。in で捉えられる時間は、特定の「時点」ではなく、「流れる時間」「時間の流れ」です。一定の広がりを持った時間・期間・時間帯の「中に」在るイメージがあるわけです。
- in the beginning 最初に
- in the end おわりに
- in the morning 午前中に
- in three minutes 3分間で
- in an hour 1時間で
- in spring 春に
- in 2016 2016年に
- in the past 過去に
- in the future 将来
混同しがちな基本前置詞との比較
in と on の比較
前置詞の in と on は、場所を指す際に混同しがちな表現です。
指し示す対象が「空間」として捉えられるかどうか、空間的内部にあるさまを述べるのか(それとも平面的に接しているさまをのべるのか)という点が、in と on を使い分けるポイントとなります。
birds in the tree と birds on the tree の例
たとえば「木にとまっている鳥」と述べる場合、birds in the tree とも表現できますし、 birds on the tree とも表現できます。どちらも正しい英語表現ですが、2つの表現はニュアンスが少し違います。
birds in the tree というと、「木の中にいる鳥」、つまり、樹木の枝葉の茂みの中という空間に鳥がいるイメージです。鳥の姿は目視できないような状況が想定されます。
birds on the tree というと、「木の上の鳥」、それほど茂っていない枝葉の上に鳥がとまっているようなイメージです。鳥の姿はおそらく目視できるでしょう。
鳥が木にとまっているという状況なら in と on のどちらで伝えても大した問題にはならないでしょうが、「果物に虫が付いている」と伝えるような場合は、ちょっと問題が生じかねません。the worm in the apple のように in で表現してしまうと、りんごの中(内部)に虫が巣食ってしまっているイメージで伝わってしまいます。
in とat の比較
in と at も、どちらを使うべきか悩みやすい前置詞といえます。
端的に言えば、in は「空間の中にいる」イメージ、at は「外部からその場所に意識を向ける」ようなイメージで使い分けられます。
- a man at the door ドアのところにいる男性
- a man in the door hall ドアホールの中にいる男性
in と at の使い分け方は、in よりもむしろ at のイメージを理解しておく方が重要です。
時間を指す場合の使い分け方
時間表現としての in と at も、やはり in が空間内部のイメージ、at が「外部から意識を向ける」イメージ、と対比できます。
in は「時間の流れ」が意識される表現であり、at は「時点」に近いイメージがあります。「午前中に」「午後に」と述べる場合は、時間の広がりを念頭に in the morning 、 in the afternoon のように表現できますが、「正午に」と述べる場合は at noon と述べることになります。