会話や議論の場では、私見や推測について述べたつもりが断定・断言と受け取られてしまって、あらぬ誤解を招くことがあります。断言を避ける表現を上手に加えてコミュニケーションを円滑に進めましょう。
断言を避けて表現する言い方は、否定的・批判的な見解の語気を和らげる効果もあります。言質を取られないように予防線を張る、という効果もあります。
断定的でない表現は日本人的な(ちょっと優柔不断気味の)発言スタイルにも馴染むものがあります。多用・乱用は禁物ですが、覚えておくと何かと便利に使えます。
不確かな情報について述べる言い方
提示できる情報があるけれど、その情報が確実とは言い切れない、そういった状況では断定を避ける言い方が効果的に機能します。
情報が真実かどうかは不明、まだ推定の段階に過ぎない、自分の認識が誤っているかもしれない、という含みを持たせることで、慎重さを維持しつつ多少大胆な事も発言できます。
「間違っているかもしれないけど、」
自分の考えや知っていることを話したいがそこまで確証が持てない場合、その旨を話し始めに軽く述べておく方法があります。
だいぶ確度の高い情報でも、ほとんど確信している情報であっても、少し曖昧にしておくことで「主張が強すぎる」という印象を避けられます。
上から自信がない順の表現です。
- if I’m not mistaken, …(私の思い違いでなければ)
- I might be wrong, but …(私が間違っているのかもしれないけど)
- I’m not positive, but …(確かではないけど)
- I’m not entirely sure, but …(絶対的に確信があるわけではないけど)
ぼくの間違いでなければ,インドの首都はデリーです
? I’m not entirely sure either, but I’m pretty sure it’s New Delhi.
私だって絶対とは言い切れないけれど、確かニューデリーだったと思いますよ
「~かもしれないよ」
自分が自信を持っているかどうかに関わらず、情報そのものが不確定な要素を含んでいる、という場合もあります。まだ結果が出ていない問題や、現状から推測している段階の話し合いなどにおいては、断定的な表現は避けておいたほうが無難です。
推測・推定の意味合いを示す表現は色々あり、どれも一般的に使われています。「It is ~」型の表現と置き換えるだけで使えるので、組み合わせてシチュエーションに応じて使い分けましょう。
- It might be ~(~かもしれない)
- It could be ~(~もありうる)
- We could say that it’s ~(~とも言える)
- It could be said that it’s ~(~とも言える)
- It is possible that it’s ~(~という可能性もある)
推定・推測の意味を加えている語(「might」や「could」)の言い方で、確信の度合いをより細かく伝えられます。「might」や「could」にアクセントを置いて話すと、不確実なニュアンスを強調できます。逆にアクセントを弱めて話すと、確信の度合いが高い主張として伝わります。
この辺の表現は、会話の中だけではなく、エッセイや論文といったまともな書き言葉でも使えます。
自分の見解を遠慮がちに述べる言い方
確実性が高いかどうかという問題ではなく、あまり自己主張の激しい発言にしたくない、とりあえず控えめな調子で発言したい、という思いに駆られる場面もままあります。
自分の見解について「特定の立場を前提している」と前置きすると、これが普遍的な事実だというような雰囲気を出さず、控えめなニュアンスが醸せます。
「個人的には、」
自分の意見が絶対的ではなく、あくまで一個人の見解であると表明する表現として、 In my opinion(私の意見としては)や from my perspective(私の見解からすると)のような前置き表現が使えます。
少しフォーマルな表現としては、文頭に Personally speaking と前置きしたり、あるいは文中に personally の語を挿んだりすることで、「個人的に」という意味合いを付与できます。
こうした(「私見である」という)フレーズは、私見にすぎないと断るだけでなく、異論を認めるという姿勢を示す意味合いもあります。感想から提案まで幅広い場面で使える汎用性のある表現です。
私の意見としては、我々はもっと調査に時間を割くべきだと思います
個人的に、このスライドは必要ないと思います
主張の偏りを前置きする表現
personally speaking のように、「この主張があるテーマの一面のみに基づいて話されている」ということを前置きする表現は他にもいくつかあります。
- generally speaking(一般論的には)
- statistically speaking(統計的には)
- theoretically speaking(理論的には)
- idealistically speaking(理想主義的には)
かしこまったニュアンスではありますが、日常会話の中でも十分に使えます。ただし連発するとクドい物言いになるので、ほどほどに留めるようにしましょう。
「one」を使った表現
自分の意見が断定的になりすぎないように、「one」という単語を効果的に用いる方法があります。新しい案を提案しつつ、その提案が唯一無二の正解というわけではない(他にも案があってしかるべき)と示唆できます。
・one (possible) way is that(一つの方法としては)
・one of the ~(~のひとつだ)
門を通るための一つの方法として、これならできなくはないよ
注目を集めるための効果的な方法の一つだと思います
「、だと思うよ。」
あらかじめ前置きする言い方の他に、語尾にひとこと付け加える表現もあります。 I suppose や I guess などの表現を文章の後に加えることで「~だと私は思う」という意味を添えることができます。
前置きする表現と比べると「断り書き」「予防線」といった調子がいくぶん弱まり、私見というニュアンスを付け加えるような感じになります。
すぐにでも始めた方がよいと思いますよ
これは偽物じゃないかなあ