いわゆる生チョコ(生チョコレート)は、しっとり食感・口溶けと濃厚な味わいが魅力のスイーツです。この生チョコ、英語の固定的な訳語が特に見つからない、英語で表現しにくい代物です。
生=raw、という脈絡から「 raw chocolate でイイんじゃないの?」と考えたくもなりますが、raw chocolate は別物を指します。生チョコを正しく表現するには、説明的に述べたり言い方を工夫したりする必要がありそうです。
「生チョコ」に直接に対応する英語表現はない
生チョコレートは、チョコレート(chocolate)に生クリーム(fresh cream)を練り込んで作るお菓子です。洋酒を練り込んだり、仕上げにココアパウダー(cacao powder)をまぶしたりもします。
日本で「生チョコ」として認識されているあのお菓子は、日本で独自に発展して幅広くアレンジされ続けている、いわば日本発のお菓子です。日本発スイーツとして世界を席巻しているわけでもないので、定着した英語名があるという状況でもありません。
あえて言えば「ガナッシュ」が近い
生チョコと同様にチョコレートと生クリームで作るお菓子としては、西洋菓子のガナッシュ(ganache)があります。文脈次第ですが、生チョコを単に ganache と表現しても大丈夫な場面は少なくなさそうです。
ただしガナッシュは単品で食べるお菓子ではない
ただし、ganache はもっぱらトリュフやケーキの中に入れるチョコレートクリームとして用いられます。単品で食べるものではなく、むしろお菓子の材料の扱いです。
生チョコは、ガナッシュを単品でそのまま食べられるように硬さを最適化したお菓子。ガナッシュを生チョコの原型と見なし、生チョコをガナッシュの系譜に連なるお菓子と捉えることは、十分に可能でしょう。
食感や味わいが生チョコに通じる洋菓子としてはトリュフもありますが、トリュフはまた結構な別物です。トリュフの材料にガナッシュが含まれます。
「日本風ガナッシュ」のような表現はアリかも
生チョコは厳密にいえば ganache と同じお菓子ではありません。生チョコを単にガナッシュと表現すると語弊がありそうな場合には、「日本のガナッシュ」のように表現してもよいかもしれません。
たとえば、Japanese ganache called Nama-Chocolate(生チョコレートと呼ばれている日本のガナッシュ)のように述べれば、やや説明くさくなりますが、語弊なく伝えられそうです。
その流れで Nama-Chocolate の呼称を使い続ける
一度 Japanese ganache called Nama-Chocolate のように説明してしまえば、Nama-Chocolate =Japanese ganache という趣旨が伝達できますから、その後の会話では単に Nama-Chocolate とだけ言っても十分に通じます。
対応する英語表現が見つからない日本語の名詞は、はじめに補足的説明を加えた上で、日本語の固有名を使ってしまう。この方法は大抵の場面で無難に通用する方法です。
通が相手ならイキナリ Nama-Chocolate だけで通じるかも
日本の生チョコレートも、海外の一部では知られており、そのまま Nama Chocolate の呼び名で扱われています。
たとえば、ハフィントンポストにも寄稿しているお菓子メディア「Food Fanatic」も生チョコレートを紹介するエントリーでNama Chocolate の語をそのまま使用しています。
英語の raw chocolate は生チョコとは別モノ
英語における raw chocolate は、いわゆるカカオ豆を炒らずに作ったチョコレートを指します。raw の語義どおり、「調理しない」「そのままの」チョコレートという意味合いです。
普通チョコレートを作る過程ではカカオを高温で炒りますが、ここでカカオ豆に含まれる栄養素が熱で破壊されてしまいます。raw chocolate はカカオ豆を炒らずに栄養素を維持します。
また、食品添加物などは最小限に留め、カカオ豆・バター・砂糖といった必要最小限の材料だけで作ります。栄養に富み、健康にろくな影響をもたらさない余分な成分を排除したチョコレート。raw chocolate は一種のスーパーフードとして注目されています。